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人との繋がりを信じた旅人  作者: ペンぎんさん


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過去と現在



目を覚ますと、そこは病室だった。




白い天井。身体には何本もの管が繋がれ、酸素マスクの音だけが静かに響いている。




身体は思うように動かず、ぼんやりとした意識の中で周囲を見渡した。




その様子に気づいた大人たちが慌ただしく動き出し、母は涙を流しながら俺のそばへ駆け寄った。




それから三日。




ようやく普通に話せるようになった俺は、病室のドアを見つめながら一人で過ごしていた。




そんな時、ドアが開いた。




そこに立っていたのは響だった。




「なーちゃんなの?」




不安そうな表情を浮かべる響に、俺は無理やり笑顔を作る。




「響、どうしたの?」




「心配だったの……。アカリもいなくなっちゃったし、私どうすればいいか分からなくて……」




響は涙を流しながらそう言った。




俺は胸を締め付けられるような罪悪感に襲われる。




「ごめんね、響……」




そう呟くと、響が心配そうに顔を覗き込んできた。




その瞬間。




「来ないで!!」




怯えた声が勝手に口から飛び出した。




響は驚いたように立ち尽くし、悲しそうな顔をする。




我に返った俺は慌てて謝った。




しかし響は「またね」とだけ言い、病室から出ていってしまう。




閉まるドアを見つめながら、俺は小さく呟いた。




「待って……行かないで……」




涙が止まらなかった。




怖かった。




苦しかった。




助けてほしかった。




それから一週間後、俺は退院した。




家に帰ると母から告げられる。




「お父さんとはもう一緒に住めないの」




そして来月には遠くへ引っ越すことも。




学校でも居場所はなかった。




教師からは責められ、クラスメイトからは冷たい言葉を浴びせられる。




誰も俺を理解してくれない。




誰も信じられない。




恐怖に耐えきれなくなった俺は、放課後、一本の紐を持って山へ向かった。




もう終わりにしようと思った。




木に紐をかけようとしたその時だった。




突然後ろから押され、木にぶつかる。




振り返ると、そこには息を切らした響が立っていた。




「なーちゃん、ごめんなさい!!」




涙を流しながら響は叫ぶ。




「私、どう接したらいいか分からなかったの!でも……でも、なーちゃん死なないで!!」




その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた何かが切れた。




「響……ごめん……!」




俺も泣きながら響を抱きしめ返した。




それから俺たちは日が暮れるまで泣き続けた。




やがて空が暗くなり始める。




「なーちゃん、暗くなったね」




照れたように笑う響。




そんな響が真っ直ぐ俺を見つめる。




「約束して。もう自殺みたいなことしないって」




俺は小さく笑った。




「うん、約束」




あの時、俺は気付いた。




俺は一人じゃなかった。




響がいてくれた。




それだけで救われたんだ。




――そして一か月後。




俺はその町を去った。







「聞いてる? なーちゃん!」




頬を膨らませた響の声で我に返る。




「ごめん、聞いてなかった」




そう言うと響は呆れたように笑った。




「もう、五年前の話だよ?」




そして少し照れながら言う。




「色々あったけどさ。僕、今なーちゃんと一緒にいられて嬉しいよ」




「はいはい。俺はそんなことないけどな」




そう冗談めかして返す。




今の俺には響がいる。




それだけが救いなのかもしれない。




だけど――




あの町を去る時、俺は一つだけ決めたことがあった。




もう二度と、人助けなんてしない。




そう、誓ったはずだった。




第9話 終

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