再会と幼なじみ
「響、何でお前が?!」
俺がそう言うと、響はニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。
「来ちゃった♡」
「何が来ちゃった♡だよ?! てか、よくここまで来たな」
俺が驚きながら聞くと、響は肩を軽く叩いた。
「親の都合でしばらくここに居ることになったから。またよろしくね、なーちゃん」
「なーちゃんやめろ、馬鹿!」
俺はそう言って帰ろうとする。
すると響は慌てて後を追いかけてきた。
「なーちゃん待ってよ~! 久々の幼なじみが会いに来たんだよ? もっと歓迎してよ~」
「付いて来んなよ……」
俺は面倒くさそうに歩くが、響は気にせず肩にしがみ付いてくる。
「酷いよ~。昔のなーちゃんは優しくて良い人だったのに~」
その言葉に、俺の表情が少し固まった。
「昔の話をすんな、響」
睨みながら言うと、響は少し申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね。なーちゃん、まだあの事引きずってるんだね」
「無理ないよ。あんな事をされて元気に生きろなんて、誰にも言えないんだから」
そう言って響は俺の手を握ってくれた。
「お前は変わんないな」
思わず苦笑する。
「けど、俺は何か安心したわ」
「てか、もしかして俺の家まで付いて来るんか?」
そう聞くと、響はきょとんとした顔をした。
「何当たり前の事を聞いてんの? なーちゃん馬鹿なの?」
「お前よりマシだよ。ほら、行くぞ」
そう言って家へ向かった。
家に入るなり、響は元気よく声を上げた。
「ただいま~! なーちゃんの今の家、初めて来たかも!」
「そうか? 別に普通だろ」
俺がそう言うと、響は頬を膨らませた。
「もー! なーちゃんは全然僕の事分かってくれない!」
そう言ってリビングへ走っていく。
「うわー……」
俺は面倒くさそうに後を追った。
リビングに入ると、響はすでにソファーでくつろいでいた。
「お前って一応女子だよな?」
そう聞くと、響はスマホをいじりながら笑う。
「何当たり前の事言ってんのさ」
「これだからなーちゃんは」
「いや、俺一応男な?」
疲れた声で言うと、響はニヤニヤしながら顔を近付けてきた。
「へー。なーちゃんってそんな事考えてたんだ~」
そう言って俺の腕に胸を押し付けてくる。
絶対困った顔を見たいんだろう。
だが、絶対見せない。
俺は心の中でそう誓った。
しばらくして時計を見る。
「てか、こんな時間じゃん。帰れよ」
すると響は不思議そうな顔をした。
「え? 僕帰らないよ?」
「てか、おばさんに聞いてないの?」
「は?」
俺の頭の中に大量の疑問符が浮かぶ。
「……マジ?」
「マジだよ」
「なーちゃん、聞かされてなかったの?」
「うん、聞いてなかった」
俺が即答すると、響は笑った。
「まあ、僕が言わないでって頼んだんだけどね」
「何だよそれ……」
思わずため息を吐く。
すると響はまた頬を膨らませた。
「何さ。なーちゃんだって僕が来て嬉しいくせに~」
「んな訳無いだろ」
「ツンデレなーちゃん」
「ツンデレじゃねーよ!」
響は楽しそうに笑った後、少しだけ真面目な顔になった。
「ごめんごめん」
「けど、なーちゃんがこの調子で良かったよ」
「僕、もしかしたらなーちゃんがもう――」
その言葉を遮るように、俺は口を開いた。
「だって約束したろ?」
「死なないって」
響は一瞬目を見開いた後、小さく笑った。
「なーちゃん……ありがとう」
「約束、覚えてくれて」
そう言って俺に抱き付いてくる。
「おう」
「俺こそ……まあ、うん。ありがとう」
目を逸らしながらそう言うと、響はクスッと笑った。
「なーちゃん、今も変わってないね」
「そうか? 結構変わったと思うけど」
俺がそう言うと、響は自信満々に言った。
「変わってないよ」
「誰かを信じきれなくなっても、僕の事は信じてるでしょ?」
「だから根っこは優しくて、誰かを助けてくれるなーちゃんのまんまだよ」
「うっせ」
「……けど、実際信じてるのは事実だし」
そう言って目を逸らす。
すると響は安心したように微笑んだ。
「そっか」
そして静かに呟く。
「てか、あれからもう五年経つんだね」
その言葉に、俺も小さく返した。
「そっか……もう、あれからか」
そう言いながら、俺は知らないふりをした。
だけど――
手の震えだけは、どうしても止まらなかった。
第四話 終




