夏と担任
ある日のこと、担任に呼ばれた俺は個室へ向かった。
「よう、来たか夏」
先生にそう言われ、俺は椅子に腰を下ろす。
「どうしました? 先生が俺を呼ぶなんて珍しいですね」
すると先生は少し真面目な顔になった。
「最近さ、何かあったん?」
「へ? どうしたんです? 俺は普通ですけど?」
そう答えると、先生は苦笑する。
「最近明るくなったよな。俺に理由聞かせてくれないか?」
「まあ、別に良いですけど」
俺は響と再会した日のことから、今までの出来事を先生に話した。
話を聞き終えた先生は大きく頷く。
「そっかそっか。それって彼女さんか?」
「幼なじみですよ? 何言ってんすか?」
そう言うと先生は頭を抱えた。
「マジか、お前……鈍感過ぎない?」
「どこがですかね?」
俺がきょとんとしていると、先生は呆れたように笑う。
「流石にその幼なじみに同情するわ。そんなによくしてくれる幼なじみなんてそうそう居ねーよ」
「そうなんすか?」
「そうだよ。俺なんて女の幼なじみ居なかったのに」
「まあ、確かに優しくて明るくて良い子ですけど、俺に恋愛感情を向ける人なんて居ないですよ」
そう言うと先生は深いため息を吐いた。
「お前そういうところだぞ?」
そして少し表情を引き締める。
「下手したら面倒くさい女にまとわり付かれてないよな? もし何かあったら言えよ。俺はどこへでも駆け付けてやるから」
先生は優しく笑った。
俺は少し考えてから聞いてみる。
「先生は人との関わりが無くなったことあります?」
すると先生は少し懐かしそうな顔をした。
「一回あるよ」
そう言って笑う。
「昔友達と喧嘩してさ。そこから悪い噂流されて、みんな離れていったんだよ」
俺は黙って聞く。
「けどな、俺は諦めなかった」
先生は真っ直ぐ前を見ながら続ける。
「俺は俺だし、自分自身を信じてるからな。失敗も怖くない。もし失敗したら、その時また考えれば良いだけだし」
その笑顔が、何となく格好良く見えた。
だから俺は聞いた。
「先生。じゃあ、もし俺が助けてって言ったら来てくれます?」
先生は即答した。
「勿論! 俺は夏の担任だしな!!」
「またそれですか」
思わず笑ってしまう。
先生も笑った。
少しだけ心が軽くなった気がした。
◇◇◇
その頃――。
「やっと終わった! 早くなーちゃんの所に行って甘やかそ!」
響は上機嫌で駅へ向かっていた。
だが、その瞬間。
ゴッ――。
後頭部に強い衝撃が走る。
何が起きたのか理解する前に視界が揺れ、そのまま地面へ倒れ込んだ。
意識が途切れる寸前。
誰かの声が聞こえた。
「ひーちゃん、少し眠っててね」
その人物は微笑みながら、気を失った響を抱え上げる。
そして誰も居ない廃墟へと運んでいった。
第12話 終




