蒼炎の騎士 ◆メリー視点◆
水の玉の中で怒り狂う水妖妃。身体中に血管のような筋がビキビキと浮き上がり、長い髪は纏まりなく、水流に逆らうように広がったまま漂う。被り物(大型魚類の頭蓋)をしていても想像がつく……どれだけ恐ろしい表情をしているのか。
「ハハッ……おじいさんの言ってた通り、確かに美人ほど怒ると怖い……にしてもキレ過ぎだろ、あれ」
「はっ!当然よっ!格下だと侮った相手に、お得意の【水魔法】で傷を負わされたのよ。【気位の高い】あの女を怒らせるには充分だったみたいね……」(純粋な水魔法じゃなくて〈氷魔法で細工〉したんだけど……たぶんそれも気に食わなかったのかも……)
『…………ムシケラ……ドモ……マズハ……ウデヲ、モイデ…………アシヲ、モイデ……ジワジワト…………ナブッテヤルワ……』
水の玉の中の水妖妃は水流に漂う姿勢をやめ、アタシのいる方へしっかり顔を向ける。ついでに殺意のようなもの向いているような気がする。なんとなく。
……直後、左手をアタシに向かって軽くかざす素振りを見せる。
「……来るっ」
《ーーゴポポッッ!!
ーージュッ!ーーッッバァァアアアアアアーーーーッッッッ!!ーーーー》
水の玉の表面から重水線が真っすぐアタシに向かって飛んでくる。
「無駄よ!ーー多段結界っーー」
(……重水線を……一発だけ?……どうゆうつもり……?)
アタシは魔法の壁を前方に貼って備える。間もなくその重水線は魔法の壁に当たって落ち、その場に〈水たまり〉を作る。
「………………?」(……何?この違和感……)
水妖妃の様子を見ると、左手をこちらの方向にかざしたまま……。まるで、何かを手掌で〈操る〉ような仕草に見える。
……〈操る〉……、……まさかっ……。
《ーージュバァッッジュパァァァァアアアアーーッッ!!!ーー》
ーー音がする。
だが、その音は……
足元の【水たまり】からした。
「ーーーーしまっ!!ーー」
(ーーまずい!反応が遅れたっっ!!)
遠隔で放たれた重水線は魔法の壁を下からくぐって難なくアタシを狙い撃ちにくる。もう間に合わない……。
(ーーダメッッ!死……んーー)
「ーーっっ!うっっらぁぁああああっっ!!ーー」
重水線がアタシの身体を貫く寸前で、その間に入ってベルフリーデンが大型の剣でそれを防いでくれた。
「なんだこれ!重っ!」
防いだ重水線は飛散せずに、ベルフリーデンの剣に圧をかけ続ける。遠隔でここまで自在に水を操る水妖妃の魔力量はアタシを遥かに凌駕している、その上まだ余力があるように見える。
「……ああっ!クソ!押し……きられる……」
とんでもない水圧で押され、ベルフリーデンの背中が段々近くなる。
「……くっ!はぁぁ……出来れば【使いたくなかったんだけどなぁ】……」
ベルフリーデンが何かを諦めたように呟く。
「【ーー霊装騎纏・白っーー】」
何かを唱えたベルフリーデンが白く光り出す。
「【ーー灼砲剣・開っーー】」
ーー続けて唱える。その直後……
《ーージュッッ!!……シュゥゥゥゥ……》
ベルフリーデンの持つ大型の剣に圧を与えて留まっていた水重線が一瞬にして……〈蒸発〉した。
恐ろしい程の熱を帯びたその大型の剣の刀身は蒼白く光る。
少し前に本人が名乗っていた……
【蒼炎騎士ベルフリーデン】
……その二つ名に違わぬ勇姿がアタシの瞳に映った。




