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重水線 ◆メリー視点◆





「…………さ、刺さってるんですけどっ……?」



 目をカッと見開いたベルフリーデンの真顔が振り向き、アタシに訴える。小さいが鋭いその氷塊はベルフリーデンの騎士装備の隙間、右内腿にガッツリ刺さっている。でも、おかげで正気を取り戻したように見える。



「ア、アンタがあんな女にうつつを抜かしてるからでしょ!」(魔法のせいだけどね……)

「だからって普通刺すか!?って……え?俺……何してたんだっ?俺……一体何を?」



 無防備に水妖妃メロウリーナの方へ近づいていた自身にハッとするベルフリーデン。



『……モウヨイ……モウ……イラヌ……』



 堕ちる魅了テンプテーションが失敗したと見るや、重水線ブロッシャーはアタシだけでなくベルフリーデンも攻撃対象にして数を増やして飛んで来る。



《……コポポ……ジュパァッジュッバァァァァアアーーーーッッ!!ーー……》



 しばし困惑するベルフリーデンはそれに気づくのが少し遅れる。



「ーーッッ!!しまっ!!」

「ぁあっ!もう!手間のかかるっ!


 多段結界シールウォルっっ!!ーー」

「ーーぅおっ!危ねっーー」



 ベルフリーデンに迫る槍のような水撃を魔法の壁で防ぐ。その間、自分にも飛んで来るそれを同時進行で防いでいく。横殴りの雨のような水撃の中、しばらく2人は防戦一方に徹する。



 すると、突然に……それが止んだ。



 水妖妃メロウリーナはある方向へ視線を向ける仕草と共に水の玉の中でうねるように動きを見せる。少し……動揺しているようにも見てとれる。



「…………?」

(何?水妖妃メロウリーナの様子がおかしい……)





『…………シンダノカ……ツカエナイ……ヤツメ……』



「…………まさか……」



 アタシは水妖妃メロウリーナの視線の先へ、崖の際まで移動した。そこから遠くに見えるのはベルフリーデンのお姉さんとシュタイナーさん、そして……


 無惨な姿で横たわる黒豹蛇ダハークは首と黒尾がそれぞれ別の場所に落ちていた。



「……は、はぁ?……倒しちゃってるじゃん……」

(……信じられない……あんなに苦戦した特級モンスターを……)



 脱帽を余儀なくされる。


 巨岩のように硬いあの鱗を纏う黒豹蛇ダハークの外皮を切断した……?。一体どうやって……?いや、〈誰〉が……?そんな思考がぐるぐる巡る。



「〈姉さん〉だ……あれ」



 気を取られて気づかなかったけど、すぐ隣に来ていたベルフリーデンは、まるでアタシの心を読んだかのように解を口にする。



「何者なの?アンタのお姉さん……」

王妃直属騎士ジュリアンナイツの副団長だよ」

「……ジュリ……え?何?」

「別に知らなくていいよ……そんなことよりやる事あるでしょ?」



 黒豹蛇ダハークを先に倒してしまうと水妖妃メロウリーナは逃げてしまう。そうなれば、また別の村や街、人里へ被害が及ぶかも知れない、とシュタイナーさんは言っていた。

 アタシはハッとして水妖妃メロウリーナの方へ視線を向ける。





《……シマイジャ…………キョウガ……ソガレタ……》





 水妖妃メロウリーナを包む水の玉は少し後退するようにゆっくり動いたように見えた。



「……ヤバッ!」(逃げる!)

「おい!あれ逃げるんじゃないかっ!?」

「分かってるわよっ!うっさいわね!」

(どうする!?どうしたらいい!?……考えろ!考えろっ!……)



 ふと、ある言葉が頭によぎる。



 魔法に長け……知能が高く……



 …………【気位が高い】。





 アタシは魔導杖を構えた。



「……やってやるわ!」



 圧縮した水撃、重水線ブロッシャー水妖妃メロウリーナに向けて放ってみせる。



《ーーブシャァァァァアアッッ!!ーー》

《ーーァァァァ……トプンッ!!ーー》



 だが、その水撃は水妖妃メロウリーナに届くことなく水の玉にただただ吸収される。それを見た水妖妃メロウリーナは嘲笑するような表情を浮かべた後、アタシ達2人に背を向ける。まるで、警戒すら取るに足らぬ格下を扱うように。



「ちょ!なんでアイツ相手に【水の魔法】なんだよ!効くわけないだろ!?」

「………………」



 ベルフリーデンは文句を言う。いつもなら、ムカつくから言い返してやるところだけど今は無視する。意図があってそうした。

 アタシはもう一度重水線ブロッシャーを撃つ気で魔力を込める。先程より威力を上げ……そして、密かに【氷の魔法】を混ぜ、上げた威力に更に【過剰詠唱】を重ね掛けする。



「〈……浸透する生命の根源……自在に……

残酷に形を変えて……槍の如く刺し貫く水流……〉」





 水妖妃メロウリーナはこちらを舐めきっている。悠々と、この場を離脱する気だ。


 だからこそ、その鼻っ柱をぶち折ってやる。



「いくわよっ!!



 【混成魔法 重水線ブロッシャー氷槍ピアシャ】ッッ!!ーー」



《ーーピキピキ……ビヒュゥゥゥゥゥゥゥゥウウンッッ!!ーーーー》



 先程とは比べものにならない速度で飛んで行く氷を含む水圧の槍。それは水妖妃メロウリーナ目掛けて飛んでいき、ヤツの纏う水の玉に入っても速度を落とさず、中で霧散せず反対側へ貫通した。



 残念ながら、水妖妃メロウリーナに直撃はしなかったものの……ヤツの腕にそれがかすめ、傷を負わせた。


 水の玉の一部が赤黒く血が滲んでいる。

 





 水妖妃メロウリーナは小刻みに身体を震わせながら振り向く。



『…………コノ……ワタシノハダニ……キズヲ……ツケタナ………………コロス………コロ……ス…………コノ…………





 …………ムシケラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!ーー』







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