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副団長





「ーーな、なんでこんな所に姉さんが!?」

「なんでって……ただの休暇よ。で?あれは何?特級モンスター?ベル……あなた上級騎士なら難なく倒せるでしょう?何をしているの?」

「う、うるさいな!色々あるんだよ!姉さんには関係ないだろ!」



 【姉さん】と呼ばれた女性はベルフリーデンと同じ金の髪色していて、腰まで伸ばしたサラサラで光沢のある髪を風に靡かせる長身の美女だ。〈休暇〉と言っていたとおり……まるで海に入るかの様な軽装だが、腰にはサーベルホルダーに2本の細剣を下げている。



 ベルフリーデンにしては(身内とはいえ)女性を邪険に扱う様子が見て取れる。



「ベル……子供みたいな物言いはやめなさい。あなたはもう上級騎士なんだからいい加減……ーー

「ーーああもうっ!!行こうメリー!ここは大丈夫だから!この人に任せようっ!」



 ベルフリーデンは向けられた言葉を聞かずに無理矢理メリーの手を取ってその場を去ろうとする。



「ーーえ!?あっ!ちょっ!ちょっと!!ーー」



 予想だにしないベルフリーデンの反応と展開に困惑するメリーは抵抗はするが、体格差の違い過ぎるベルフリーデンの力に抗えるはずもなく強引にひっぱられてその場を離れる。



「ーーちょっと!!どうしたのよ!あ!ちょ!ちょ……力つよっ!……ちょ……っと!!……ーー……」



 あっという間にメリーの声が遠のいて、2人は水妖妃(メロウリーナ)がいる高台の方にへ向かっていった。



「……はぁ……全く……あの子は……。すいません、愚弟がご迷惑をおかけしたのではありませんか?」



 ベルフリーデンの態度にため息を落とし、詫びるお姉さん。



「あ、いやいや。そんなことはないんじゃが……。あの、ところで……えーーっと……」



 改めて対面してみれば、背筋が伸びるような超絶美女を相手に少し緊張する老体は上手く次の言葉が出ない。



「申し遅れました……(わたくし)



 アトワイズ王国、王妃直属騎士(ジュリアンナイツ)副団長の【ガウニィ】と申します。愚弟に代わりお力になれると思いますので状況を伺ってもよろしいでしょうか?」

「え……ええ、もちろんじゃ……」



 超絶美女の丁寧な物腰にまだまだ緊張しながらも手短かつ簡単に状況を説明する老体。







「……なるほど、いくつか疑問はありますが大体分かりました」



 そう言ってガウニーは両肘を内側へ巻き込むように腕を組み、視線を斜めに落とす。一瞬だけ考える素振りを見せた後に細剣を1本抜いて黒豹蛇ダハーク)に向かって歩き出す。



「……っっ!?副団長さん!何を……?」

わたくしがアレを片付けて参ります」



 ガウニーは振り向かぬまま、淡々と老体に告げ躊躇なく距離を縮め歩み進む。佇む黒豹蛇ダハーク)はガウニーをジッと見つめる……間合いに入る瞬間を見極めているように。



 が、黒豹蛇ダハーク)は本来の間合いよりずっと遠い位置からガウニーに仕掛けた。



「なにか妙じゃ……」(まるで……【黒尾】があった時のような間合いじゃのう……)



 老体は呟いたと同時に嫌な予感がした。治すには早すぎる……ありえないと思いつつも……。



「ふ、副団長さん!〈間合い〉に気をつけーー

『ーー霊装騎纏キアグリフセスターー』



 老体が注意を促す中、ガウニィは唱えた。その直後、ガウニィの身体を薄く白い光が包む。それを気にかけることもなく黒豹蛇ダハーク)は仕掛ける。鉤爪が届く間合いの少し手前で不可解な減速したと思いきや、背を向ける形であの【黒尾】を振り抜いて穿つようにガウニィに迫る。



「ーーやはり、治ってーー……」(様子を見るようにこちらを積極的に襲ってこなかったのは黒尾の再生過程を悟らせないためだったのか……)



 老体は驚き狼狽する。


 ガウニィはそれに一切反応を示さず真っすぐ歩む。



「あらあら……勇ましいのね」



 双方が接触する刹那……ーー



 音が……一瞬消える。









《ーーボトォッッ!!ーー》



 束の間の静寂を終わらせたのは老体のすぐ隣に落ちた〈飛来物〉の音だった。



『ーーギシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアアッッ!!!!ーー』



 黒豹蛇ダハーク)の断末魔が響く中、老体はその〈飛来物〉を横目に確認する。



「ーーこ、これは……」(まさか……あの細い剣で……あの細い腕で…………これを……)





 それは……再生したばかりの【黒尾】だった。



「……斬り飛ばしたというのか……?」



 頭の中で考えていたことが思わず口に出る老体。






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