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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第二章

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22 物理的って……大きさの事だよね?

※下ネタ描写あります。苦手な方ご注意ください

「遅いよ! 今までどこに行ってたの!?」


 自室に戻るなり、ピアリに文句を言われてしまった。

 どうやら、早く俺と一緒に風呂に行きたかったらしい。


 別に遊んでいた訳じゃないんだけどなぁ……。

 でも、自分の事を待ってくれてる人がいるのは、なんだか嬉しい。


 そうして向かった先の大浴場は、残念ながら貸し切り状態ではなかった。

 混雑とまではいかないが、それなりの人数が利用していたのだったのだ。



「新学期が始まって人も増えたのだから、仕方がないよな」


「こんなに人がいると落ち着かないよ……」


 早々に体を洗い終えたピアリが、俺の陰に隠れる様にして湯舟の隅の方で縮こまっていた。

 突然ピアリが一点を凝視して硬直する。一体何事だ?


「おや? そこにいるのは、麗しのピアリではないかーーーーー!!」


 広い大浴場の端から、大声を上げてこちらへ走ってくる男がいた。

 こんな場所で走ったら危ないだろうに……。


「うわおぅ!!」


 ほら、言わんこっちゃない。

 走ってきた男が濡れた床タイルで足を滑らせて思いっ切りすっ転んだ。


 だが、後頭部を打ち付けるかと思った瞬間、男がバク転をして体勢を整えると、今度は前方宙返りをしながら近づいてきた。


 なんなんだよ、こいつは!?


 最後に大きく跳んで、唖然としている俺達の目の前で三点着地した。

 どこぞのヒーローみたいに無駄に格好いい登場なのだが、彼の腰に巻いていたタオルは、とうの昔に行方不明だ。


 ……そんでもって、俺の面前にご立派なモノがある。


 ピアリは心底嫌そうな顔をしていた。

 こんな顔をしているピアリは初めて見たかもしれない。

 こいつは、ろくでもない奴なのだろうか。

 事実、俺達はワイセツ物を間近で見せ付けられているのだからな。



「……なあ、こいつ知り合いか?」


「ううん! 全然知らない人だよ!!」


 ピアリが全力で首を横に振る。

 知り合いでも他人の振りをしたくなるよな。



「ピアリ、君はまったくつれないなぁ」


 仁王立ちしている男は、そんな反応を気にも留めずに爽やかに髪をかき上げる。

 無駄にイケメンで体も鍛えているようだし、切れ長の目で白い歯がまぶしい。

 女子から人気のありそうな王子様系男子である。


 ……思いっ切り下半身を露出しているけど。


 そんな俺の冷たい視線に気付いたのか、イケメン男子の視線が俺に向けられる。


「君はピアリとどんな関係なのかい?」


 男は俺に訊ねるが、腰の物がぶらんぶらんと揺れているので嫌でも気になってしまう。


「ん? これかい? これが気になるのかい?」


 そう言いながら、器用な腰使いをしてぶるんぶるんと回転させだした。


 いきなりなんて物を見せやがるんだ!

 ピアリは真っ青な顔でドン引きしているし、俺もドン引きだ。

 当たり前だが、周囲も同じ反応だ。



「そうれ、人間風車ー!! ぶるるるるるるるるる――」


 もう正気度が限界である。

 ピアリは本気で怯えて涙目になっていた。

 俺も泣きたい。どんな地獄絵図だよ!!


 俺達がドン引きしてる一方、厳つい大柄な男と優男の二人が腕を組みながら訳知り顔で頷いている。


「うむ。いつ見てもキレのある腰使いだ」


「そうですね。我々も見習わないといけません」


 ……世の中には物好きがいるもんだな。



「はっはっはっは! どうだい? 僕の一発芸……こほん。高尚な芸術表現は」


 いま一発芸って言ったよな。



「またいつでも披露するから、今度は感想をくれると嬉しいな! はっはっはっは!」


 一通りやって満足したのか、変態イケメンは尻をぷりぷりさせながら去っていった。

 結局、あいつはなんだったんだ?



「……もう出ような」


「うん……」


 湯船に浸かっている気も消え失せ、上がることにした。




「そうらチョンマゲだー!」


「うわ、何しやがる!? そんなモノ俺の頭に乗せるなー!!」


 俺達が浴室を出ようとすると、背後からそんなバカ騒ぎが聞こえてきた。

 想像しただけで恐ろしい絵面だ。


 俺が泣きそうな顔のピアリの手を引いて浴室から脱衣所に戻ると、他の男子がギョッとしていた。



「……おい、アイツ風呂で何やってんだよ。あの子泣いてるぞ」


「女子を男子風呂に連れ込むなんて、鬼畜にも程があるな」


「奴隷ごっこか! うらやまけしからん! 通報だ!」


 慌てて誤解を解いたが、今後こういう事が重なると面倒になるなぁ。


「これだから、人が多い時間帯には入りたくないんだよ……」


 ピアリも苦労してたんだな。

 だが、俺がお前に風呂でされた事は忘れてないぞ。


「……風呂で俺達が初めて会った時の事は覚えてるよな?」


「あっ、あれはキミの反応が可愛くてつい! 一緒にしないでよ、もう!」


 ピアリの顔が真っ赤になっていた。

 泣き顔を見せられるより、こっちの方がいいよな。




 食堂も混雑するので、少し時間をずらしてから行こうと一旦自室に戻る事にした。

 自室のある特別棟に入ると、妙にサッパリした感じで部屋着姿のベルゲル先生が廊下を歩いていた。


「おう、お前らも風呂上りか?」


 俺達に気付いた先生が声を掛けてくる。


「あれ? 風呂に先生いましたっけ? それとも職員専用のがあるんですかね?」


 さっきの男子風呂では見掛けなかったはずだ。


「俺はホラ、そこのを使ってるんだよ」


 先生が指した場所には浴室があった。

 なんて事だ、今まで全く気付かなかったよ。

 灯台下暗しとはこの事か。


 でもこれって使わせてもらえたら、ピアリの負担も減るよな……。


「あの、そこのお風呂をボクにも使わせてもらえませんか?」


「先生、俺からも頼みます。ピアリは見た目がこうだから、男湯でいじられて可哀想なんですよ」


「あ~、確かにそうだな……。使ってもいいが、その代わり普段の清掃を頼めるか? 俺一人だと適当になってしまってなぁ」


 先生はそう言うと頭をかいた。


「ありがとうございます。ちゃんと綺麗にしておきますからね」


 ピアリが嬉しそうにお礼を言った。


「じゃあ頼んだからな」


 俺達は先生を見送ると、早速浴室を確認する。

 これ結構広いんじゃないか。数人は普通に入れそうな湯舟だった。

 しかも源泉かけ流しっぽい。そもそもこれは温泉なのかは知らないけど。

 お湯の温度も調節可能みたいだし、便利そうだ。


「良かったなピアリ」


「うん!」


 掃除は大変そうだけど、二人でやればいいだけだ。

 俺も普通に使いたいし。

 知らない人がいると、やっぱり落ち着かないのだ。




 その後、頃合いを見て夕飯を食べに食堂へ向かった。



「普段、あの三人と一緒に食べないのか?」


 ピアリの同期のロワりん、ミっちゃん、メルさまの三人の事だ。


「彼女達とは、食堂で会えば一緒に食べてるって感じかな」


 ちなみにだが、職員と生徒は食堂が区分けされているので、リリナさんとは一緒に食事ができないのが悲しい。


 そんな話をしつつ、ピークが過ぎてそこそこ空いてきた食堂で日替わり定食を注文。 カウンターで食券を渡して定食の受取りを待つ間、気になっている事をピアリに聞いてみた。


「そういや、あのおばちゃんを見ないんだよなぁ。知らないか? 小柄なおばちゃん」


「知らないなぁ。ボクは去年からここにいるけど、そんなおばちゃんを見た事がないんだけど」


「そうなのか? 俺は何度か会ってるんだけどな」


 リリナさんの事で後押ししてくれたお礼が言いたかったんだけど。


 定食を渡してくれた厨房のお姉さんにも聞いてみた。



「そんな人、ここにいたかなぁ?」


「え? そうなんですか? この間も夜中に食堂で会いましたよ」


「……深夜帯の営業って、女性職員はいないはずよ」


 あれ? そっち系の話なの?


 なんだか急に鳥肌が立ってきてピアリと二人して青ざめていると、俺達の話を聞いていたのか、奥から別のおばちゃんが出てきた。



「それはもしかしたら、ヨシエさんじゃないかい?」


「知ってるんですか?」


「彼女は珍しい料理を作る人でね。ある日、ふらっとここに現れたと思ったら、いつの間にかいなくなってしまったんだよ。ここの変わった料理もヨシエさんが教えてくれた物でねぇ」


 そうだったのか。もしかしたら、あのおばちゃんもこの世界に転生か転移でもしてきたのだろうか。


「時々聞くんだよね。ヨシエさんらしい人に会ったという生徒の話を。ねぇアンタ、またヨシエさんに会えたら新しいレシピを聞いておいてくれないかい?」


「分かりました。今度会ったら聞いておきますね」


 まだ顔色の悪いピアリを連れて空いてる席を探していたら、丁度例の三人組を発見して一緒に食べる事にした。




「ピアっち、なんだか顔色悪いけど、どしたん? もしかして、セッキーに襲われたの?」


 ロワりんさんよう。いきなりでそれは俺に失礼じゃないですかね。


「えっとね。さっき、お風呂で変なモノを見せられてさ――」


 そっちの話かい。

 食事中にしかも女子相手にする話じゃないと思うが、ここは黙っておこう。


「そんな事があったのか……。それは許せないな。切り落としてしまおう」


 物騒な事を仰いますな。ミっちゃん。


「二度と再生できないように傷口を薬品で焼いて差し上げますの」


 見た目は上品なメルさまも、えげつないよ……。


 可愛らしい彼女達がこんな下品な会話をしてるなんて、誰も思わないだろうなぁ。



「ねえねえ、セッキーはできるの?」


 そんな事を考えていたら、いきなりロワりんに話を振られた。


「え? 何をです?」


「ほら、お風呂で見たという人間風車だよ。できるの?」


 とんでもねえ事を聞いてくるな……。


「そんなのできませんよ……」


「あら、そうなのですか? わたくし的には技術的に不可能なのか、物理的に不可能なのかを知りたいところですの」


「確かにそこは気になるところではあるな」


 メルさまとミっちゃんも、一体何を言い出すのですかね。

 そもそも、彼女達にはデリカシーってものが無いのか?



「ねぇ、リョウヤ君。物理的って……大きさの事だよね?」


 ピアリも赤面しながら聞くんじゃありませんよ。


 というか、なんで食事中にそんな話になるんだよ。

 それ以前に大きさの話なんて女子の前でしたくないわ! 察してくれよ!


「個人情報なので回答を控えさせて頂きます!!」


 俺は三人娘のブーイングを浴びながら、おかずのソーセージをほお張るのであった。

旧版よりは抑えたはず……

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