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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第二章

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23 面白そうだったから、お手伝いしてみました

 食後に自室に戻った俺は、そのままベッドに倒れ込む。

 デリカシーの無い女子三人組に精神的に打ちのめされてしまったのだ。


「ピアリは、いつもあんなのを相手にしているのか?」


 ベッドに突っ伏したまま、顔だけピアリの方へ向ける。


「あんなのって言ったら、怒られるよ? 彼女達もリョウヤ君とお話ししたくて、テンションが上がっていたんだよ。みんな普段はもっと静かだからね」


 マジですかー。

 そんなのまったく想像もつかないんだけど。


 げんなりしていると、リリナさんが部屋を訪ねて来てくれた。

 文字通り一服の清涼剤でございます。



「寝る前にリョウ君の顔を見ておこうかなって……」


 俺は瞬時に復活すると、来客用のテーブルセットを引っ張り出す。

 何故かピアリが呆れ顔で俺を見ている。


「わざわざ足を運んでもらわなくても、俺から会いに行きますのに」


「うーん、それはちょっと無理かな……。女性職員の寮に男性が立ち入るのは制約があるから」


 確かにそれは色々問題がありそうですな。

 強行して変な噂が立ったら、リリナさんに迷惑を掛けるだろうし。


 リリナさんは用意した椅子ではなく、俺のベッドに腰掛けている。

 なんだかいけない事をしているみたいで、ドキドキしてしまうな……。


 そんで、何を当たり前みたいにピアリまで俺のベッドに座ってるんだよ。



「ところで、冒険者予備校の初日の感想はどう?」


「とても初日とは思えない、濃すぎる一日でしたよ……」


 落書きしていたら校長に呼び出されるわ、エリオ先生達と新しい制服を作る事になったり、大浴場では変態イケメンにとんでもない物を見せられたり、夕飯では女子三人組から精神攻撃をされるし……。



「そういえば、さっき被服学科のエリオ先生と一緒にいたよね?」


「ボク、あの先生はちょっと苦手なんだよね。圧が強いというか……」


 リリナさんの問いにピアリが口を挟む。

 その上、何故か俺のベッドに潜り込み始めてるし。

 そのまま俺のベッドで寝ないでくれよ。


「あの先生って見た目がアレだけど、仕事に対してはかなり真剣な人だと俺は思うな。被服学科の子達からも慕われていたし」


「なんでキミがそんなことまで知っているのさ?」


 ピアリが胡乱(うろん)な目を向けてくる。


「校長からの依頼でエリオ先生と打ち合わせをしてたんだよ。何をするかは、お楽しみって事で」


 新しい制服の事はまだ公表されていないので、適当に誤魔化すことにした。


「リョウヤ君は初日から変な事をやってるね……。ところで、今度の休みって二人はどうするの? せっかくだからデートでもしてきたら?」


 掛け布団から顔を半分だけ出してるピアリが急に話を変える。

 デートか……。なんて懐かしい響きなのだろう。


 って、リリナさんとデートですとな!?



「そうそう! その事でリョウ君をお誘いしようと思って来たのだけど、王都でどこか行ってみたい場所とかあるかな?」


 しかも彼女からのお誘いじゃないか!

 これは神の思し召しか!? 神と言っても、あのチャラいのじゃないはずだ。


 今までバタバタしていたお陰で、ろくに校外に出た事が無かったんだよな。

 日用品とかは購買で入手可能なので、日常生活に関しては正直あまり困らなかった。

 だけど、飲食店の他に趣味や嗜好品の店とかは見てみたいな。



「田舎から出てきて王都は全く知らないので、名所案内とかお願いできますか?」


「それならお姉ちゃんに任せて……って、もうこんな時間! そろそろ戻らないと」


 リリナさんが時計を見て立ち上がった。

 職員でも普通に門限があるのかな。そう考えると、俺の部屋は自由過ぎて門限が厳しい人達に申し訳ないな。


「リリナさんもこの部屋に住んじゃえばいいのに」


 ピアリが無責任な事を言い出した。

 俺としてもそうなったら素敵だなとは思うけど、流石にそれは無理だろ。


「できる事なら私もそうしたいけど、男子生徒の部屋に私が一緒に住むのはちょっと難しいよね」


「それなら他の部屋でもいいんじゃない? この建物は部屋が余ってるみたいだし。リリナさんが一緒に住んでくれたら、ボクも嬉しいな」


 まるで自分の所有物みたいに言うなよ。ベルゲル先生に怒られるぞ。

 後半部分は俺も激しく同意するが。


「……そっか。だったらベルゲル先輩にお願いしてみようかしら?」


 リリナさんは、そう言いながら部屋を出て行ってしまった。

 お願いしてどうにかなるものなのか?



「ピアリ、あんまり適当な事を言うなよ。リリナさんに迷惑掛けちゃうだろ」


「別にいいじゃん。好き同士で近くにいられるのって、幸せな事だよ?」


 ……ド正論過ぎて反論できないや。




 そんな話をしていると、リリナさんがベルゲル先生を伴って戻ってきた。



「先輩の許可がもらえました~!」


 ……マジかよ。

 ベルゲル先生は思いっきり不機嫌顔だ。


「お前ら、一体ここをなんだと思ってるんだよ……。まったく、今回だけ大目に見てやるから感謝しろよ!」


 苦虫を噛み潰したような顔で頭をかいてる先生に対して、感謝の念を禁じ得ない。

 なんだかんだ言って、物凄く面倒見のいい人だよな。


「まあ生徒と職員が同室ってのは駄目だが、空き部屋なら問題ないだろう。引っ越しや部屋の清掃と片付けは自分らでやれよ。それと最終的な判断は、校長がするからそのつもりでな」


「ありがとうございます。先輩」


 リリナさんがベルゲル先生に頭を下げた。

 それを先生は面倒くさそうに手をヒラヒラ振って遮る。


「お前に頭を下げられたら、居心地が悪いっての」


 先生曰く、この建物の管理者としてリリナさんが住み込むって事にしてしまうらしい。

 先生もなんだかんだで、リリナさんに負い目があったから無理を聞いてくれてるんだろうな。



「そうだ。忘れるところだったが、また魔力の充填を頼むぞリョウヤ」


 先生から蓄魔(ちくま)石の入ったリュックを手渡された。


 いちいち充填するのが面倒だし、一気に魔力を流し込んだらどうなるんだろうな。

 早速試してみる。急速充填だ!


 案の定、一気に魔力が充填していく。



『リョウ君~充填が終わったよ~♪』


 唐突にリュックからのんびりしたリリナさんの声が聞こえた。

 まさか、これが終了のチャイムなのか?


「……なんですかこれ? これ、人前で流れたら洒落にならないんですけど」


 これはあまりに悪趣味だ。リリナさんの声は素晴らしいけど。


「なんだよ、前にお前が終了のチャイム音を変えてくれって言ったから変えてやったのに。そもそも、なんでいきなり充填完了させてるんだよ! いきなり終わらせたら、お前が人前でどう反応するかの楽しみが無くなっただろ!!」


 先生が逆ギレしてきた。

 流石に理不尽だろ。まったく、俺をなんだと思ってるんですかね。


「そんなの知らないですよ! 魔力を流し込んだらできたんですよ! それにリリナさんも何をやってるんですか!!」


「面白そうだったから、お手伝いしてみました」


 笑顔でそんな事言われたら、怒るに怒れないじゃないか……。


 そんな俺達をピアリが楽しそうに見ていた。

 なにをそんなに嬉しそうにしてるんだか。



  ◆◆◆



「じゃあ、そろそろ俺は帰るぞ。お前らも節度を守って生活するんだぞ。俺がここに住んでるのを忘れるなよ」


 先生は疲れた顔で自分の部屋に戻って行った。

 なんか色々と迷惑かけちゃってるなー。



「じゃあ、私も部屋に戻るわね」


「あ、部屋の近くまで送りますよ」


 俺はリリナさんを送る事にした。

 ピアリに見送られ、二人並んで夜の道を歩く。

 冒険者予備校の敷地内だけど、夜は人の気配が無くて不気味だ。



「なんだか、こういうのって新鮮ですね」


「そうね。昼は私の立場だと、こんな風に一緒に歩けないから……」


 エリオ先生と歩いていた際にすれ違った時のリリナさんを思い出した。

 確かに公(おおやけ)の場で、お姉ちゃんぶりを発揮されても俺も困る。


「夜の密会って感じですかね?」


「ふふふ。なんだかいけない事をしてるみたい」


 それからどちらからともなく手を繋いだ。

 指を絡める恋人繋ぎだとなんとなく恥ずかしいので、普通に手を繋ぐ。


 次第に会話が無くなってしまったが、ただ手を繋いで歩いてるだけで心が躍る。

 そうしてあっという間に職員寮が見えてきた。


 離れ難いけど、繋いだ手を放して『おやすみなさい。またね』と別れる。


 リリナさんの手の感触と温もりを思い出しながら部屋に戻ると、出迎えたピアリがニヤニヤしている。


「ねぇねぇ。別れ際にキスした?」


「しねぇよ! しても言わねぇよ!」


 まったく! なんて事を聞きやがるんだ。

 照れ隠しでピアリのほっぺたを両手で引っ張って伸ばしてやったのだった。

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