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第五十話 背中の熱
ルミシャ
場所は、短冊に書いてあった。
あの子は庭の底へのいき方を遺した。 その始まりに、入口の場所も。
二千年前、あたしが落ちたあたり。 裂け目はとうに閉じていた。 それでも、そこだけ時層が薄いと、あの子は突き止めていた。
だから道に迷わなかった。
ネルフィが、また道を遺していた。
ティユラを連れて、そこへ向かった。
道中で、容体が落ちた。
はじめは、歩けていた。
途中から、肩を貸した。
しまいには、背負った。
背中で、ティユラが咳をした。
熱い。
首筋に、あたたかいものがかかった。
ふりむかなくても、わかった。
血だ。
「……ごめん」
細い声だった。
「よごした」
「いいから、しゃべらないで」
背中の重さが、すこしずつ軽くなっていく気がした。
それが、いちばん怖かった。
急がないと。
間に合わない。
二千年、時間なんて気にしたことがなかった。
庭では、止まっていたから。
今は、一秒が惜しい。
ティユラの息が、耳のうしろで、浅く鳴っていた。
まだ、ある。
まだ、間に合う。
そう言い聞かせて、足を速めた。




