48/55
第四十八話 手の届く枝
ネルフィ
今年も、誕生日が来た。
何回目だろう。 もう、かぞえていない。
丘が遠くなった。
足が言うことをきかなくて、何度も休んだ。
杖をついて、すこしずつ。
んふふ。 こんなに遠かったかな、この丘。
木は大きくなった。
見上げても、てっぺんが分からない。
あの日、指くらいだったのに。
いちばん高いところに結ぶ――とは、もういかない。
手の届くところで、せいいっぱい。
ふるえる手で、ゆっくり書いた。
『ルミシャ、誕生日おめでとう。 ちゃんと、おばあさんになったよ。 会いたかった。』
最後に、封印をかけた。
この紙が、朽ちないように。 雨にも、風にも、長い時間にも、負けないように。
世界を救えるくらいの魔法を。
友だちのメモが、消えないためだけに使う。
んふふ。 こんな使い方、だれもしないね。
でも、これがいちばん、だいじだから。
いつ来るのかは、わからない。
でも、あなたはきっと来る。
そのとき、ぜんぶ朽ちてたら、いやだったの。
ちゃんと、届くように。
ねえ、ルミシャ。
おばあさんになって、待ってたよ。
約束、まもったよ。
うん。
これで、いい。
これで、いいの。
……でも。
やっぱり、会いたいよぉ。




