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第四十五話 滲む字
ルミシャ
字がもう若くなかった。
線がふるえて、ところどころ滲んでいた。
へたな魔法でしくじって、んふふって笑ってた。 あの子の手が、こんなに。
それでも、毎年あった。
おめでとう。 おめでとう。
ティユラはもう何も言わなかった。 すぐ下でただ聞いていた。
ある高さで、その一枚を読んだ。
『ルミシャ、誕生日おめでとう。 あなたが来るころ、わたしはもういない。 それでも、会いたい。』
あなたが来るころ。
――今だ。
あたしは来た。
あの子はもういない。
書いてあるとおりに。
知っていたんだ。
会えないまま死ぬと、知っていて。
それでも、会いたいって。
枝を握っていられなかった。
幹に背をあずけて、ずるずると座りこんだ。
声は出なかった。
涙だけが勝手に落ちた。
ティユラが登ってきた。
何も言わずにとなりに座って、あたしの頭を肩に引き寄せた。
ちいさく咳をしながら。
風が吹いた。
あの子の字がいっせいに鳴った。
ぜんぶの年が、いちどに。




