第三十九話 焦げたパン
ネルフィ
その日は、なんでもない日だった。
ルミシャとパンを買いに行った。 焼きたてのあまいやつ。
お店の前まで来ると、いいにおいがして、もうがまんできなくなる。
「ふたつ。……ううん、みっつ」
「食べすぎ」
ルミシャが横で呆れてた。
でも、ちゃんと自分のぶんも買ってる。
道ばたでふたりで食べた。
あまくて、ほかほかで、ほっぺたが落ちそう。
わたしのはすぐなくなっちゃった。
ルミシャのを見る。
じっと見る。
「……なに?」
「ううん。なんでもない」
じっと見る。
「……はい」
半分ちぎってくれた。
ね。 やさしいでしょ。
ねえルミシャ、あたためてあげる。
魔法で。
「やめときなよ」
すぐ言われた。
でも、わたしちょっと得意だったの。 きのう、火の魔法をおぼえたところだったから。
手のひらにちいさい火を出した。
うまくできた。
えへん。
つぎの瞬間、ぼっ、て。
おもったよりおおきくなって。
前髪がちりっと焦げた。
「……あっつ」
パンもまっくろ。
ルミシャがふきだした。
笑いながら、焦げた前髪を指でつまんでくる。
あんまり笑うから、わたしもおかしくなって。
んふふ。
ふたりでしばらく笑ってた。
「ほら、じっとして」
焦げたところをていねいに直してくれた。
口ではやいやい言うのに、手はいつもやさしい。
くすぐったかった。
こげたパンはすてた。
ルミシャがまた半分くれた。
「もう、魔法でなんかしないで」
「はぁい」
あまくて、あったかい。
となりでルミシャが笑ってた。




