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第三十四話 赤い実
ルミシャ
海のあとティユラはまた歩きだした。
「次は」
地図をたたみながら。
「赤くて、すっぱい実だっけ?」
あたしがいつか口にしたやつ。 枯れない樹の実。
覚えていたのか。 あの紙にあったから。
何日か山を分け入った。
昔、群生していたあたりへ。
なかった。
木は一本もなかった。
土も空気も変わっていた。 あの実が育つ場所はもうどこにもなかった。
「……前に、言ったでしょ」
ティユラがぽつりと。
「たぶん、もうないって」
うん。 知ってた。
二千年だ。 消えるものは、消える。
慣れている。
それでも、来てくれたんだ。 ないとわかっていたものを探しに。
叶わない約束のために何日も歩く女。
おかしな女だ。
切り株にふたりで腰かけた。
風が葉を鳴らした。 知らない木の葉を。
あの庭で数えた葉とは違う音。
でも、わるくなかった。
「……あと、ひとつだね」
リストのいちばん下。 甘味処のいちばん高いやつ。
あれがあったのは。 あたしが目を覚ました街だ。
帰ろうと思った。
二千年前に、置いてきた街へ。




