幕間 神々の様子
神々が住まう場所のとある一角。
酒精の神であるアルが営む酒場には、今日も多くの神が集まり酒を飲み交わし、話に花を咲かせていた。
「ブライ君、君が加護を与えたゴブリンがいるダンジョン、そこのDDMが面白いことをしたいみたいじゃないか」
「そこのダンジョンなら私も見ましたよ。
戦闘を繰り返して経験を積んで進化する魔獣は見た事ありましたけど、まさか人為的に進化させようなんて、今までにない面白い発想よね」
「確かにな、まだ一部が魔獣のままで中途半端な進化と言えるがあの調子だ、すぐに本格的に進化するだろうよ」
酒を交えながらそう言ってくる友である神たちの言葉に、ブライは口につけていたお猪口を離し、わずかに口角を上げた不敵な笑みを浮かべる。
「あぁ、本当に退屈させないよ。あそこのDDMは。
それに久しぶりに熱い青春も見れたしな」
拳での思いの語りあい場面、あれはいい酒の肴になる。
「昔はよくブライも戦闘系の神様と殴り合っていたわよね」
「懐かしいな。
あの頃は毎日ボロボロになってたよなブライ。
しかも意地を張って痛いそぶりを見せないようにして、それでも時々痛みで顔をしかめながらヤケ酒を浴びるように飲んでたっけ」
「口の中も切れていたから酒もかなり沁みただろうに、本当に意地張って強がってたね~」
昔の事を思い出した神々が次々にブライをからかいの言葉を掛けてくる。
そんな言葉に顔をしかめつつ、再びお猪口に口を付け酒を味わいつつブライも昔の事を思い出す。
あの頃は本当に無茶をしていた。
任侠とは何か?
まだ神として生まれたばかりの頃ブライは自分が司る神性というのを理解できておらず、ただ本能に近い形で任侠の真髄の一つ、強きを挫く気性だけが先走りしひたすら自分より強い神に戦いを挑んでいた。
ただがむしゃらに戦いを挑む日々。
戦いを挑まれた多くの神は、生まれて間もないブライがなぜこんな行動をしているのかわかっていたのだろう。
行動を温かく見守りつつ、戦いを挑んだのが戦闘系の神が中心だったので、口で直接言うよりも拳で多くを語り教えてくれた。
おかげでたくさん傷つくことになったが、その傷を上回るほどたくさんのことを学ぶこともできた。
「…………本当にいい思い出だな」
願わくば俺と同じように自分が加護を与えたゴブリンも拳を通して多くの事を学んで欲しい、そう思いながらブライは空になったお猪口に新しい酒を注ぎ、今後の成長に思いを馳せる。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
性交の神セクスは現在、一つのモニターを見て感激に身を震わせていた。
「な、なんということでしょう。
性交の神である私が知らない性の世界があるなんて!!」
モニターには、ダンジョンに入った侵入者である女性の体を体内に取り込み、その体に種を植え付けている植物型魔獣の姿が映っていた。
女性は懸命に逃げようとしているが逃げることはできず、顔を涙でグジャグジャにして悲鳴を上げる。
だがそんな女性の体に種を植え付けられた瞬間、植物の体内に充満している粘液や体に侵入した種の影響で、今まで感じた事のないような快楽を体験することになる。
脳が解けるような快楽のせいで、上げていた悲鳴は悦の入ったよがり声となり、逃げようとしていた体はさらなる快楽を求めるかのように、さらに体内へと自ら進みだす。
「あぁ~、人間と獣人、獣人と妖精、人間と龍族、異世界人とライフの住人。
私は種族が違っても体の混じり合り、性交大いに結構と謳ってきました。
ですがまさか私の知らない新たな関係がここに築かれていたとは思いもよりませんでした。
植物とも私達は性交ができるのですね!!
これは実に素敵で見事で有意義な発見です。
ぜひともライフの住人に新たな性交の道があると教えて差し上げなければ!!」
「「「「「「 それは止めろ!!!!!! 」」」」」」
感激に身を震わすセクスの宣言に、酒場にいた神全員が止める。
間違っても自分が加護を与えている種族に、そんな変態な道を進ませる訳にはいかない。
他の神の制止によりセクスの暴走はこの時は止める事ができた。
だがこの後、なぜかセクスを狂信的に信仰する信者達にこの変態的な道の事が知られてしまい、「最高のマニアプレイです!」「新たな道が見えた!!」「植物性交最高!!」などと言った声がセクスの元に届き、新たな性交の道が開かれたとセクスは大いに喜んだそうだ。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「そろそろ動くな」
今までモニターを見ながら大騒ぎし、それを肴に酒を飲んでいたウォーが急に真面目な顔になるとそうつぶやく。
その表情は先程までのどこにでもいる飲んだくれのオヤジの表情では無く、まさに戦神と言われるにふさわしい表情そのものであった。
「父上、何が動くのですか?」
横で大騒ぎする父を適度にいさめながら、一緒に酒を飲んでいた娘のヴェルが表情が変わった父にそう尋ねる。
「わからんか?
もうすぐ人間達に大きな動きがあるぞ」
「大きな動き……」
ヴェルは父が見ていたモニターに目をやる、だがそこにはいつも通りさまざまな戦う場面が映るだけで、特に変わった様子などは見受けられない。
一体父はこれのどこを見てそんな事を思ったのだろう?
「わからんか?
お前も戦場に出た事があるなら感じた事があるだろう、戦には流れと言う物がある。
どんなに勝っていても、流れに逆らうとあっという間に負けることもあり、また逆に流れに乗る事で劣勢から一気に勝利を掴むこともある。
今人間たちのダンジョン攻略には一切の流れの無い、凪の状態と言えよう。
だがつい先ほど龍族の小生意気な小僧どもや、獣人族の勇敢な者たちがダンジョン攻略に本格的に挑み始めた。
彼らの実力から言って、きっといくつかダンジョンを攻略することになるだろう。
そうなったときにそれまで凪の状態から、一気に流れが出てくる。
人間達は弱いくせに変な所でプライドが高いからな、自分達だけダンジョン攻略が進まないことに黙っていられないだろう。
数を集めるか、武具に頼るか、一人一人の実力を上げるかどれにせよ、急激にダンジョン攻略に力を入れてくるはずだ」
「それが動きですか」
「そうだ。
おそらくその流れに対応できるかどうかで、人間にしても他の種族にしても、そしてDDMにしても価値がわかるというものよ」
そう言って大樽に入っていた酒を一気に飲み干す。
「これから動きは実に楽しみじゃわい。がーはっはっはっ」
再び酒を飲み笑いだしたウォーには、もう先程までのような戦神の面影は無くいつも通りの酔っぱらったオヤジになっている。
だがウォーが告げた言葉だけは、それを聞いていた神々の心に深く残る。
戦神が戦いを予想した。
それは決して外れることなど無い。
ならば必ず大きな動きが近いうちに必ず起こる。
神々はそう理解した。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
魔神ネスは我が子同然である魔族達の様子を見ていた。
「よし、そこだ!ナイスアタック!!」
「うわ~危ない。避けて避けて」
「まさかそんな成長を遂げるなんて、感動だ!!」
「もっと頑張れよ!君ならできる!俺は信じてるよ」
「痛そう、でもあと一息だ。
そこだ止めだ!!」
「くそ~、でもよく頑張った。
ゆっくりお休み」
モニターを見ながら声を上げて応援し、励まし、声援を送り、傷ついたものを悲しみ、勝利を喜ぶ。
ネスは一人、モニターの前で一喜一憂の大騒ぎしていた。
「本当なら、ダンジョンにいるみんなに加護を上げたいんだけどね」
それはプロジェクトを危うくさせるとクラウンに言われので、ネスは公平をきすために魔族の誰一人にも加護を与えていない。
「見ているだけしかできないって辛いね」
だからせめて声が届かないと知りつつも声援を送りたくて、こうしてモニターの前で魔族の様子を見届ける。
今日も魔神ネスは、人知れず我が子達を応援し続けるのだ。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「いい所見つけちゃった!」
モニターを見ていたラブは一つのダンジョンに目をつける。
「ここならいい愛の試練ができそうね」
そう言い、ラブは地上にいる自分に祈りを捧げるものに加護を授ける。
加護を受けた瞬間、祈りを捧げていた男の体に電気が走ったかのような衝撃が走る。
そして衝撃が治まると同時に、男は自分がやらなければいけない事を唐突に理解し行動に移す。
祈りを捧げる間、邪魔にならないように横に置いておいた剣を掴み取り、男は歩き出す。
その表情は、何かに縋りつくような病的に悪かった先程までの表情とは全く違い、酷く晴ればれとした悟りを開いたかのような表情になっていた。
だがこの時違う誰かが男の目を見ればわかっただろう。
その目は、晴れ晴れとした表情とは裏腹に泥が滲むこむような酷い淀みが浮かんでいた事に。
「ウフフ、本当に楽しみね。
さあ見せて、あなたの愛の力を」
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
それぞれの神が、それぞれのやり方でプロジェクトを楽しむ。
まだまだ神々の興味が尽きることは無い。
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