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デビルズ・ダンジョン ~悪魔に頼まれダンジョン造り~  作者: 夢見長屋
動きだした世界、プロジェクト開始
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攻略に挑む者・後編

 ビーフン視点


 「罠だな」

 「罠ですね」

 「罠っすね」


 俺のつぶやきに続いて二人も同じように同意する。

 奪われた俺の剣がああも堂々と置いてあるなど罠以外考えられない。


 「ポークスどんな罠が仕掛けられているかわかるか」

 「すみません、ここからじゃ木々が多くてよくわからないっす」


 入り口付近から剣までは20メートルほど、決して近いと言える距離では無い。

 しかも俺達と剣の間には木々が多くはえており視角となる場所も多い。


 「もう少しで約束の一刻だな」

 「そうですね。ですが時間が来たからと行って引き返すのですか?」


 それはできればしたくない。

 剣さえ見つからなければこのまま時間がくれば引き返しただろう。

 だが剣が目に入る所まで来て、すごすご帰ることはできない。

 しばらく考えた後に二人に尋ねる。


 「約束の時間を少し越すことになると思う」

 「構いませんよ。さすがにこうなっては越えるのも仕方ないですからね」

 「そうっすよ。

 罠は俺がしっかり確認するっすから剣を取り戻しましょう」


 二人も俺の考えに賛成くれたので、俺達はゆっくりと密林エリアへと進んでいく。




 「罠は無いっす」


 5メートルほど進んだ所で一度止まりポークスが身を屈めて罠の確認を行う。


 「わかった、進もう」


 罠が無いとわかりまた進もうとしたとき、近くの木々の枝が不意に動く。

 枝が動いた音を聞き、すぐさま俺達は武器を構えて音がした方に視線を向ける。

 風は無かった。

 だとすれば木々が動いたのはナニかがいたということだ。

 しばらくじっと音がした方を見ていると、木の上からスライムが落ちてきた。


 「スライムっすか……」


 落ちてきたのがスライムだとわかると力んでいた体から力が抜けてしまう。


「脅かすんじゃないっすよ」


 そう言ってポークスがスライムを倒そうと一歩近づこうとしたので、俺は慌ててその肩を掴み止める。


 「ポークス不用意に近づくな」

 「でもスライムっすよ」

 「それでもだ。

 ここのダンジョンはまだ分からないことだらけで、不用意に動くのは危険だ。

 あっちから近づいてこない限り、こちらからは動くな」


 俺はそう言って一度スライムを見る。

 何の変哲もない普通のスライムだ。

 だが、俺の勘が危険を発している。

 スライムにでは無く、そのスライムの背後から危険が漂ってきているのだ。

 おそらくこのスライム自体が罠の一環なのだろう。


 いまだに少し納得できていないようなポークスに、チーキンも注意をしてくれる。


 「ポークス、私達は剣を取り戻すために時間を過ぎるのを了承したんですよ。

 それ以外は無為に時間と危険を増やすことになります」

 「……わかったす」


 何とか納得してもらえ、スライムを無視して再び俺達は剣に向かって進み出す。

 俺達が進み出すとスライムも俺達から一定の距離を保ちながらついてくる。

 それを最後尾にいる俺は注意しながら構わず進む。


 また5メートルほど進んだ所で木の上から音がしてきた。

 再び武器を構えてそちらに注意を向ける。

 もちろんその間にも地面にいるスライムにも警戒を続けている。

 音がした木に注意していると、再びスライムが落ちてきた。


 「またスライムっすか」


 ポークスがそうつぶやく。

 そのつぶやきに少し苛立ちが交っている気持ちはよくわかる。

 もともと罠発見のため集中力がいるのに、罠とは別に敵かもと思いさらに警戒を増した所に出てきたのがスライムなら苛立ちもする。

 思わずまたスライムを倒そうとしたのだろうが、その視界に俺が映ったのだろう、出しかけた足を戻し再び剣の方の罠の確認を始める。




 それからさらに進み剣まであと5メートルまで近づいた頃には、俺達の周りには3匹のスライムがいた。


 「これがスライムだからまだ安心できますね」

 「そうだな、これがスライムではなく他の魔獣なら今頃戦っているか、戻っているだろうな」


 だからこそ逆にもどかしいのだ。

 たかがスライムのせいで判断が中途半端になってしまう。


 忌々しげにスライムの方を睨むと、スライム達はその視線に反応したのか、その場で一斉に弾み始める。


 ボヨン、ボヨン。


 ここでなければ可愛らしいと笑うことができたかもしれない。

 だがここはダンジョンなのだ。

 笑うことなどできない。


 「ビーフンさん、おちょくられてるっすよ。

 さっさと始末しちゃいましょうよ」


 スライムの弾む姿を見て、ポークスはついに我慢できなくなったのだろう。


 「まてまて、ただ弾んでるだけだ。

 剣まであと一息だ。気にせず進もう」

 「でも……」


 まだ納得いかないのか、さらに何か言おうとしたとき、今度は周りにある木々から一斉に音が聞こえた。


 「二人とも警戒しろ!」


 今の音からして周囲は囲まれている。

 これがさっきまでと同じスライムだったらまだいい。

 だが違う魔物だったら?

 木々がざわめく音とスライムが弾む音が周囲を満たす。


 だがそれらの音はスライムが弾むのを止めることで一斉に止まる。


 先程までのうるさいぐらい耳に聞こえていた音が一斉に止まり、逆に静かすぎて耳が痛い。

 そしてそれ以上に静かさに混じる緊張感が鼓動を早くする。

 思わず唾を飲み込んでしまう。

 ゴックン、その音が妙に辺りに響いたような気がする。


 そしてその音が合図だったようにスライム達は俺達に近づいてきた。


 「ビーフンさん」

 「わかっている。迎撃しろ!」


 向かってくるのなら仕留めるまでだ。

 ポークスは俺の声にうなずくと早速近づいてきたスライムに短剣を振るう。

 だがその短剣をスライムは軽い身のこなしで避ける。


 「ちっ、こいつ」

 「深追いはするな、近づいて来た時だけ狙え」


 避けたスライムを追おうとしたのを止める。

 あきらかに今までのスライムと違い動きが良い。

 これは意外に手こずるか、そう思ったときチーキンが声を上げる。


 「上から何か来ます!!」


 その言葉に上を見れば、木々の上から一斉に蛇達が飛び降りてくる。

 牙をむき出しにして襲ってきた蛇を短剣で斬り倒すが、数が多い。

 数匹が俺の腕や足に噛みつく。

 噛みつかれた場所に痛みが走るが、それを我慢して片方の手で何とか蛇達を引き離す。


 「痛って~」

 「やっかいな」


 ポークスもチーキンもどうやら数カ所噛まれたようだ。

 そこまで重症ではないが、このままだと危ない。

 それはチーキンもわかったのだろう。


 「ビーフン、剣はすぐそこです。

 すぐに取り返して引き返しましょう」


 その言葉にうなずくと剣に向かって走り出す。











 この時気付けばよかったんだ。

 剣などあきらめた方が良かったことに。

 仲間の方が大事だったということに。






 走り出した俺達の後ろを飛びかかってきた蛇達が追いかけてくる。

 剣まであと2メートル。

 そこまで来た時に、チーキンが止まり蛇達に向かって杖を構える。


 「少し時間を稼ぎます」


 それだけ言うと呪文と唱え出す。

 俺はチーキンが時間を稼ぐ間に何とか剣を取り戻そうと手を伸ばす。


 手が届く。


 そう思ったとき剣の影が膨らみそこから黒い狼が顔を見せる。


 (ちっ、これが罠か)


 黒い狼の顔を見せた瞬間俺は内心で盛大に舌打ちをしてしまう。

 だがまだ黒い狼は影から出てきていない。

 それよりも俺が剣を握る方が早い。

 影から出てくる前に剣を取り戻せばいくらでも反撃できる。

 そう考え、必死に手を伸ばす。


 そして俺は剣を手に取った。


 黒い狼はようやく影から出てきた、これなら倒せる。

 取り返した剣を早速振るおうとしたとき、小さな違和感を覚える。


 それは本当に小さな違和感。


 敵が目の前にいる時にそんな事感じている場合じゃないだろうと思うほどの違和感。

 だがそんな状況だからこそ、つい違和感が気になりそこに視線をやってしまった。


 取り返した剣、その剣の重さが前と微妙に違う。


 視線を剣に向けると、そこには今まで視角になっていた場所に小さなトカゲが一匹貼り付いていた。

 そして視線をやった瞬間そのトカゲは口から勢いよく液体を吐き出した。


 「グワァ」


 液体が目に入った瞬間激痛が襲う。

 目を開けていられない。


 視界を奪われ何も見えなった隙に黒い狼が俺の喉に噛みついてきた。

 肉を噛み切られる感触がわかる。

 目を襲っている以上の激痛が襲ってくる。


 目を開けず視界が悪い、それでも噛みついているのなら相手はそこにいる。

 俺は喉に噛みついている黒い狼に向かって剣を振るう。

 黒い狼は剣を振るわれたのを見て慌てて俺から離れる。その際に俺の喉肉を抉っていくのを忘れない。

 血管が斬られたのだろう、喉からは勢いよく血が噴き出す。


 このままではまずい。


 二人に助けを求めようとして口を開くが、喉をやられて上手く声が出ない。

 そうして声が出ない俺の耳にポークスの悲鳴が聞こえた。


 「い、ぐっ、がはっ」


 悲鳴の声と共にバキッ、ボキッという何かが折れる音が聞こえる。

 何がどうなっている。

 視界を奪われ何も見えないことが、一層周りの音に敏感に拾ってくる。

 魔法を放とうとしていたチーキンはどうなっている。

 そう思いチーキンがいる方に意識を向けてみると、そこでは何かが必死に土の上で暴れている音が聞こえる。

 ただそれだけだ、チーキンの悲鳴すら聞こえてこない。


 あぁ、二人ともやられたんだな。


 それだけははっきりわかってしまった。

 そして血を流し続け、視界も開かない俺の前に何かが近付いてくるのがはっきりと分かった。

 ここで抵抗してももう遅いだろう。


 俺達は失敗してしまったのだ。


 「チー…ン、……クス、すま……い」


 声が出ない喉からそれだけ何とかつぶやいき、俺はそこで人生を終えた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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