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デビルズ・ダンジョン ~悪魔に頼まれダンジョン造り~  作者: 夢見長屋
動きだした世界、プロジェクト開始
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初めての侵入者・後始末編

 頭部が無くなった男をヤードは黙って見下ろしていた。

 体には握りつぶした際に飛び散った血や脳漿などがこびりついている。


 「また無茶をなさいましたなヤード殿」


 男の後方、密林エリアの入り口付近に隠れていたスーラが姿を現しながら言ってくる。


 「わざわざ素手で殺さなくても、愛刀なら簡単に殺せたのではないですか?」

 「殺せただろうな。

 だがどうしてもこいつは素手で、こうかいするように殺したかったからな」


 半分は調子に乗ったこいつへの制裁からだが、あとの半分は八つ当たりに近い。

 実力を見るつもりで受けたものの、予想外の威力にダメージを負ってしまった。

 まだこれが自分より弱い相手だから良かったものの、これがもし自分より強かったら?そう考え自分の油断に腹が立ったのだ。


 「は~、ヤード殿の気持ちも分かりますが、そのせいで余計な怪我を負うのはいかがなものかと思うでござるよ」

 「平気だ、たいしたことはない」

 「ウソ、ウソ。

 ヤーさんのウソツキ、こっちの手、動かせないほど痛いのに無理してるの」


 背後からいつの間にか近寄ってきたメーサが、ヤードの男の頭を握りつぶした方の腕をつつく。

 腕を触られた瞬間、そこから電気が流れるように全身に痛みが走る。


 「ほらほら、触られただけで痛がってる」

 「ヤード殿ここはやせ我慢しても仕方ないでござるよ」

 「へ、いきだ…」


 目じりに涙が溜まりながらも、何とかそう口にする。




 ヤードの加護【義の心】は、筋力を上げるものでは無い。

 それなのになぜ先ほど人の頭を砕くくらいの力が出せたのか、それは脳のリミットが外れ、火事場の馬鹿力と言われるものを発揮したからに他ならない。

 【義の心】は守るべき弱き者がいる場合、自由に脳のリミットを外せるようになるものなのだ。

 そしてこれにはリスクが付きまとう。

 普段脳がリミットを付けているのは、無駄に体を傷つけないようにするためだ。

 もしもリミットが無かった場合、拳を握る行為が自らの握力で拳を握りつぶして行為に繋がってしまうことになる。

 そうならないために脳は常に傷つかないようにリミットを付けているのだ。

 今回脳のリミットを外したヤードは人の頭を砕くほどの力を発揮した。

 だがそれと同時に握った手の骨にはヒビが入り、腕の筋肉は切れる寸前まで行使されていたのだ。



 「これくらいはいつものことだ。

 数日したら治る」

 「ヤーさんにとってはそれが日常だったのかもしれないけど、これからもそれじゃ駄目なの」

 「その通りでござるよ。

 もし次の侵入者がすぐにでも現れたらどうするのでござるか?」


 あくまで平気だと言おうとしたが、それを二人が正論で諌める。

 二人の言う通り、もし次の侵入者がすぐにでも現れたら今の状態ではまともに戦うことはできないだろう。


 「そうだな…、すまなかった」


 ヤードは二人の言葉を受け止め、素直に頭を下げる。

 スーラとメーサもそれを見てわかってくれたかと胸をなでおろす。




 ヤードが反省しこれで一件落着かと思われたが、そうはいかなかった。





 「まったく、これだからあなたは考えが足りないのです」

 「……嬢ちゃんか」


 苛立ち交じりの言葉を吐きながら密林エリアに姿を現したのはメイドのムースだ。

 初対面の出来事のせいでヤードはいまだにムースのことを嬢ちゃんと呼んでいる。


 普段ムースはどんなことがあろうとDDMである黒の傍から離れない、彼女が傍を離れるのは主のお願いがあった時ぐらいだ。

 そしてメーサは指示とはいえ主の傍を離れることになると、主の姿か見えなくなった途端に不機嫌になってしまう。


 「ムース機嫌悪そうなの」

 「当たり前です。

 本来ならばマスターの傍を離れる必要がありませんでしたのに、馬鹿の馬鹿な行動のせいでマスターと離れることになったのですよ」

 「悪かったな、馬鹿が馬鹿な行動をして。

 それで主はなんて?」

 「マスターからはこれを渡すように頼まれました」


 ムースが手をたしてきたのは、上級の回復薬。


 「これを使えば数時間ほどで万全の体調に戻るでしょう。

 まったくあなたのためにマスターは貴重なDPを無駄に使ったんですよ」

 「……すまねぇな」


 上級回復薬を買うためには、下手したら今倒した男達の分のDPが必要だったのかもしれない。


 「私に謝ってどうするんですか、謝罪するのならばマスターになさって下さい」

 「そうだな主に謝って……、いやここは行動で示した方がいいな」


 主に謝罪に行く事は別に問題ない。

 だが主は謝罪を求めているのだろうか?


 もし謝罪を求めているのならば、わざわざムースに頼まず自分で回復薬を渡せばいい。

 実際にそう言うことに関してはすぐに動く性格だ。

 だが実際にはそうしなかった。


 それはヤードの気持ちを思ってのことだろう。


 不様に怪我した姿を主に見られたくなかった。

 主は特に怪我など気にしないだろう。

 むしろ良く守ってくれたとほめてくれるかもしれない。


 だがヤードは納得できないのだ。


 主はそんな気持ちを酌んでくれた。

 そのため自分は姿を見せず、変わりに回復薬で気持ちを伝えてくる。


 守ってくれてありがとう。

 怪我早く治してね。

 これからも頼むよ。


 言葉にしない気持ちが、痛いほどこの回復薬から伝わってくる。


 だから自分も言葉で謝罪するのではなく、行動で示すことにするのだ。





 ムースもヤードの気持ちを察したのだろう。

 溜息を一つ吐き出す。


 「次はこのような馬鹿なことはしないで下さいね。

 もし次このようなことがあり、マスターとの甘い時間を奪われるようなことがありましたら、私があなた達を始末しますよ」


 無表情でそう宣言する。

 ヤードの背後ではスーラとメーサが小声で「甘い時間って、それムースの勘違いなの。まったくもってそんな甘い感覚マしゅターは持ってないの」「あなた達って……、今回馬鹿をやったのはヤード殿だけなのですが、いつの間にか私達も始末される対象になってるでござるよ」などと二人で話している。

 取り合えず俺もムースの発言にいろいろ思うことはあるが、溜息一つ吐き出して了解の返事を返す。


 「わかった、肝に銘じとくよ」


 俺の返事に満足したのか、ムースは足早に主のもとに戻っていった。




 色々あったが、肉体的なことより最後のムースとのやり取りが今日一番疲れたかもしれない。


 まぁとにかくこうして初めての侵入者の撃退は無事終わった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

評価やブックマーク、感想などいただけると嬉しいです。


日々呼んでいただける人が増えてきております。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。

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