6日 魔法の水切り
……今日は偉い静かやな。同じ河原やってのに。
ざっぱざっぱ入ってみた。いや、別にそんな水音してへんけども。気持ちな。気持ち。気持ちざっぱざっぱ。うーん、魚居らんな。メダカくらい居るかと思ててんけど。
水切りやってみよ。平らで円い石がえぇんやったっけ? そんなんあるかなこの辺。……こんなんでえぇか。
「ほっ」
ざぷん、とか。え。ちょっ、一回くらい跳ねようや。もっかい!
何やねん。だぽん、って。虚しい音立てるなし。魚跳ねたかと思てまうやろ。でっかい魚! とか、ちょっと身ぃ乗り出してもうたやんか!
「……はー」
「どうしたの?」
「水切り、上手いこといかんなぁ思て」
「水切り……?」
「ほら、こんなさぁ、平たくて円い石ってあるやん。これをこやって、手首使ってさ」
回転かけて投げたら、水の上ぴょんぴょん跳ねる奴。
「ああ、ストーンスキッピング? 日本語は石切じゃなかったっけ」
「別にどっちでもえぇんちゃう……って、誰や‼」
「え⁉ ご、ごめん、独り言だった?」
「いや、さすがに違うけども。さすがに独り言じゃないけども」
何なんやろ、この金髪のお、おじ……おにい……おじ、お兄さん? 外国人はよう分からんわ。えーっと、
「おじさん、できる?」
「うん、貸して」
あ、おじさんで良かったんや。ほんならおじさんって呼ぼ。
おわっ、しかも水切り上手い! 一回、二回、三回、四回……あ、ちょ待って、数えるの追っつかん。
「おじさん、もっとゆっくり出来ひん?」
「ゆっくり? うーん、やったこと無いなぁ……」
「やってみよ!」
お、やってくれはった。一、二、三、四の……沈んだ。何やな。
「あちゃ、無理だったや」
「何やな。何回行けるか数えたかったんにー」
「あ、じゃあ、こうしよう」
ん? 何? お、もう一回投げた! ……何やろ、石の飛び方がスローや。テレビとかで『スローでご覧ください』みたいな感じになってる。一回、二回、三回……
「十九回や!」
惜しいなぁ、あと一回で二十回やったのに。
「すごいな、どうやったん?」
「もう一回、ゆっくりやるね。俺説明下手なんだ」
お、おぉ。優しい声と口調やのに一人称は俺なんやな。よし、集中! 主にこの人の手!
……握り方から明らかに違ったわ。ショック。え、人差し指って石に沿わすの? うそん、全然知らんかった。そら跳ばんわ。
ってかさ、これ、めっちゃゆっくりやねんけど、なんで跳ぶのん? 跳ばへんやろ普通。超スロー回転やで。ってか、軽く重力無視してるレベルやでコレ。
「わかったかな」
「あんさ、それよかさ、なんでこんなゆっくりで跳ぶん?」
「あはは、魔法でそう見えるようにしてるんだよ。本当は普通に投げてるけど」
「魔法使い⁉」
「うん。俺はリオン・カラス。リオでいいよ。よろしく」
「お、おお……よろしく。うちはハヤシレイ。普通にレイでえぇよ」
……魔法て。魔法て。おじさん箒で空飛んだりできるんか。駅の壁すり抜けて学校行の列車乗ったりしたんか。
「ってか、魔法の使い方無駄すぎやろ‼」
水切りのやり方教えるためて‼
「あはは。大げさだなぁ。減るもんじゃないんだから」
あ、減らへんの? 何か減ったりせぇへんの? 魔力とか。……あ、自分で言っててちょっと恥ずいわ。ごめんなおじさん、本職の魔法使いさんやのに。




