4日 壁の内には
「あー、雨すごいなぁ」
文化祭やのになぁ、ドンマイ高校生。別に見に行かへんけど。
おーおー、山の向こうで雷鳴ってるわ。ホンマに大変やな。どうしよ。気持ちだけ雨宿りでもするか。あんまし意味無いけど。どっか無いかな。山の洞穴とか。
……無いか。
「うっわー、シルさんどうするよぉ。このままじゃ作業続けらんねーべ」
「んー? そんなに振込んでるの?」
……あったー。洞穴あったー。人工、いや、妖怪工やけど。
「っつーかシルさんどこよ」
「木の上ー。寝てた」
「……あっそ」
「なーなー、うちも入ーれて」
そのちょい浅い洞穴ん中。何か妙に居心地良さそやな。めっちゃ入ってみたい!
「あぁ? なんでだよ」
「入ってみたかったらに決まってるやん?」
「決まってるとか言われても知らねぇ! え、そうなんか、シル!」
「気分よ気分ー。人間には穴に入りたい気分ってのがあるの」
「いや、俺も元人間」
「それを日本では『穴があったら入りたい』という」
「いや、言わん言わん。何か意味違う」
『穴があったら入りたい』って言うたら、アレやん。何かめっちゃ恥ずかしい思いしたときに言うやつやろ? うちはだって、雨降って、雨宿り気分したいから入りたいねんもん! 別に恥ずかしい思いしてへんもん。
「へぇっ、これはわかったんだ」
「何か自分、うちのこと見下してる⁉」
「えぇー、だってぇ、木の上に居るからぁ、見下さざるを得ないって言うかぁ」
なんで声変えんねん。なんで可愛い声出すねん。ギャルやん。ほんでこの男の人、なんでうずくまっとんねん。あれ、ちょ、鼻血? 大丈夫か? っていうか自分幽霊ちゃうん。幽霊か妖怪か知らんけど。なんで鼻血でるん? どうやって出してるん?
「きゃはっ」
「ぐはぁああっ」
吐血したぁああああ‼ 何なんこの人⁉ え、アレか‼ シルの事見聞きして出血してたんか‼ ただの変態やん!
「ちゃんとその血掻き捨てといてね」
うわ、一気に声のトーン下がった。ついでに声の温度も下がった。氷点下。怖いって。
「へい」
あ、血ぃ止まってる。凄いな、早いな。自分シルに左右されすぎやろ。大好きか。シヴィル……やったっけ、本名。えぇと、あぁもうなんでもえぇわ。シル親衛隊! みたいやな! 親衛隊って言いたかってん!
「あんさぁ、シル」
「はぁいー?」
「コレ、何なん?」
壁の内側。壁画みたいなことになってる。何これ芸術? それとも魔法陣系のサムシング?
「んー? ふふん、それはこれからのお楽しみ。今言っちゃうのはちょっとつまんにゃいから、もーしばらく待っててね。しばらくがどれくらいになるかは未定! まぁでも、どんな反応するか楽しみなんだからさっ! そんなに引っ張りたか無いんだよねぇ」
「シルさんが言っててもな。上様しだいっしょ」
何その殿様的な人。
「まーねぇ。手紙書いたけど、返事まだなんだよね。うーん、スマホ持ってくれないかなぁあの人。あ、人じゃないんだった」
「……スマホって。イメージ崩壊どころの騒ぎじゃねぇー。ぜってぇ、あること無いこと広まるべ」
「あ、ちょっと見てみたいかも、その光景」
……なんのこっちゃわからんし。
とりあえず、シルは何かうちにサプライズ用意してるってことでえぇんか?




