六月中旬 その職から、町
「さびしいの」
「そうかい」
「くらいの」
「ふんふん」
「しめっぽいの」
「急に季節感はじけたねぇ。梅雨ってのはそんなもんだよ。あたしもこの時期髪が大変でさー。短いともっと爆発してたかも。いやーゴムってすごいよね。これ一本で爆発頭もすっきりよ。ま、あたしはピン止めで下しとくのが好きなんだけど。まぁ、仕事中くらいはね。えー、そんで、君どこに居るの? 何してんの?」
「わからないの」
「声からするとこの辺だよねぇ。でもおかしいね、ゴミの山しかありませーん。ありゃ、誰だこんなところにスマホ捨てたやつ。ん? 違うか。落としたんだね、あっははドンマイ。財布は警察に届けない派なのあたし。君は?」
「…………わからないの」
「あぁ、早口でごめんねー? でもこうしないとさ、あたし結構喋るから飽きられちゃうのよ。ふっふふ、話がつまらないって地味に言ってくれてるよねコレ。凹むー」
「……よしよししてあげるの」
「あはは、へー、優しいじゃん。どうやって?」
「あぅ」
「コレかしら、っと。ねぇ、今、ロッカー立ててみたんだけど、どーお? 何か変化あったー?」
「痛いの」
「ああ、じゃあこれね。この中ね。鍵かかってないかな大丈夫かな――あ、大丈夫だ。開けるよー。心の準備しといてねー。梅雨のくせに今日はお空真っ青だからねー」
「わかったの」
「ハァイ、どうも。こんにちはー。あらっ、可愛いじゃん。でもやっぱ髪はぼさぼさよねー」
「おい、サボってんなよ」
「サボってないもーん、人形救出作戦だもーん」
「んだぁ? そら」
「ほら、可愛いでしょ」
「おめが言っても説得力ねーわ」
「ありがと、こんどデートする? おごってね」
「性格は顔に出るって言うのになぁ」
「出てるじゃーん、この、純真無垢な明るさがしぃっかりと! ねぇ、人形ちゃん?」
「うわ自分で言った。っかしいな、このずうずうしさがどこにも出てねーべ?」
「ふふん、DNA、このすばらしさ! そしてこの霊体にも影響する謎!」
「やっぱお前分からんわ」
「分からなくて結構! ……あれ?」
「どした」
「人形ちゃんの中身がどっか行っちゃった」
「また不気味な人形だな。どっから拾ってきたよ」
「そこ」
「拾い食いやめろよ。腹下すぞぇ」
「いや食べないよ、さすがに人形は食べないよ?」
「あぁ……そんだら良かった」
「何さ。何の安心さ」
「いやぁ、見たもん全部食うんでねぇかと思うて。いつか俺もオイラも食われたらどうしようとか」
「それは無い。幽霊は無い。第一君まずそう」
「………………今のは来た。こう、ぐっさり来た」
「それはよかった!」
「嬉しそうに言うんじゃねー! 何だその満面の笑顔、殺す気か……っ」
「あら消えるの? ちょっと寂しくなっちゃうなー。でも穴埋めはきっとすぐにできるから大丈夫だよ。安心してお逝き」
「俺の心は氷河期を迎えた」
「氷おいしいよね」
「わかんねぇ……‼」
「で、あたしらそろそろ仕事戻らなきゃまずいんじゃない? 死ぬんじゃない?」
「そ、そんなに短気なのか上は⁉」
「んー……、んーや、すっげー軽い。でもすっげー気分屋。そして誰が見てもめちゃめちゃ怖い。うーん、ちょっとあの日々には戻りたくないですはい」
「……流石だなぁ」
「というわけで、戻りましょー。ま、上が来るわけ無いんだけどねー」
「んだよ、脅すな!」
「いや、上が~とか言い出したの君じゃん。あっはは馬鹿だねー、あの方来るのは月末と数日だよ」
「へー! 知らねかった」
「知っとこうよ。ほんじゃ、またね。穴掘りガンバレ。ここ掘れわんわん」
「穴掘りじゃねーし、建設だし! ……最後なんつった?」
「ここ掘れわんわん」
「んだそりゃ」
「あら、知らない? 昔話読んで出直しといで。花咲か爺さんがお勧めよ」
「は、花咲かない爺さんだな⁉」
「何それ。うん、まあ、うん、そう、それがお勧めー」
「わかった!」
「……がんばれぃ。ま、放っとこ」




