29日 暗くて歌われちゃぁ
『とーりゃんせぇ、とーりゃんせぇ……』
「アケヤマさん、外から声すんのってうちの気のせい?」
気のせいか、自分の知り合いかのどっちかにしてくれ。めっちゃ怖い。なんで通りゃんせチョイスしとんねん。なんで可愛い女の子の声やねん。なんで夜やねん。いや昼でもちょいと怖いけど。
「いえ、僕にも聞こえますね。少し出てみましょうか」
座布団枕に寝ちゃってるマリーちゃん置いて、社務所の外に。ぽつぽつ灯りは灯したあるけど、やっぱ山は暗いわ。うん。
「れーたいーさまの細道じゃー」
あれっ、声増えた、声増えた⁉
え、なに? 何様って? 天神様ちゃうかったよな、今の。
「ちーっととーしてくだしゃんせー」
「身体の在る者通しゃせぬー」
「めいどへゆくののみちくさにー」
「娯楽の世界を眺めて来ー」
「いきはよいよい」
「帰りは知らぬ」
「ぼやけのせかいへおーいーでませー、おいでませー」
……めっちゃ替え歌してるから何言うてるんか分からん。ちょっと歌詞紙に書いて。ほら、紙と鉛筆貸したげるから。アケヤマさんが。
えぇか、これが現実逃避や。とにかく変なところ突っ込め。テストに出るでぇー。
「レイちゃん、大丈夫ですか?」
「え? えぇえええなな何のことでしょー」
「震えてますよ」
「武者震いっちゅーんですー」
「……戻りましょうか?」
「いやいやいやいやここまで来て正体分からんとか不安すぎるんで」
「そうですか……」
やだー! 怖いー! さっきの歌めっちゃ綺麗にハモってた! めっちゃ不気味な雰囲気醸してた! 綺麗な音楽って暗いところで聞くと不気味よな! あれ、今のは歌のせいか? メロディーのせいか? どっちでもえぇねん。怖いものは怖いねん。
「本殿の裏でしょうか」
どんな声でかいねん! 社務所まで結構距離あるぞ! 五十メートルくらいあるぞ、……途中に拝殿とか挟むからイマイチわからんけど。多分もっと短いが。
「いいい、行こ。行こ、アケヤマさん」
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫やって! 行こ!」
「はぁ……」
拝殿のそば通って、お芋さん眺めつつ本殿の方に。本殿の裏に来たけど……何も居らん。
やーめーろーやぁああああ‼ 怖いやろーがぁ! 居とけや! 実はただの女の子でした的なオチにしようや! もうえぇやん、それで落ちよ? な? どこにかくれたーん、でておいでぇー。
「かーごーめ、かーごーめー」
「ひぅっ⁉」
なんっやねん! これ以上不気味童話歌うなし!
「かーごのなーかのれーいーはー」
「いーつーいーつー出やぁるー」
また替え歌して来よるし。れいってなんのれいや。うちか。それとも霊か。どっちにしてもうちやーん。……泣くで。
「よーあーけーのばーんにー」
「我らが仲間が追い立てるー」
「――の元帰るはだーぁれ」
「そっ、こっ、かぁあああああ‼」
本殿の裏の、ちょっと山入ったところにある崖や! 崖というか、くぼみやねんけど。
「ハァイレイちゃん。何かよく会うね。類なのかにゃあたし達」
るい……? 何それ。
「類は友を呼ぶ、の意味ねー。どしたの」
「自分何してんの?」
「お仕事でーす。ここから先立ち入り禁止ね、お帰りくださーい」
シヴィルの仕事って何なんさ。自分妖怪やん。仕事せんでもえぇやん。
「さっきの歌歌ってたんは……?」
「ああ、あたしー。あたしと、仲間ー。知りたかったのはこれだけ?」
「お、おん」
「じゃあ行った行った。鬼さんが帰ってくるぞぉー」
「アケヤマさん帰ろ」
「……へ? あ、はい」
鬼さん帰ってくる? 待って、鬼さんまだいるん?
「やー、扱いやすいね君ー」
聞こえない聞こえなーい。




