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16日 寒いょ

 はぁー……。平和やわぁ。めっちゃ平和やわぁ。一昨日の恐怖はまだ抜け切ってないけど、全然問題ないくらいには回復。今はコウチ家の屋根の上でごろんと寝転がって、空眺めてます。旨そな綿飴流れてるわ。いや、綿飴にしちゃちぃとでかいな。ほんで硬そう。

 ……いつまで寝てんねん、うち。太陽昇り始めた頃に寝転がって、今は太陽の周り真っ赤に燃えてんで。夕暮れやでおい。丸一日空眺めて過ごしてたやん‼ どんだけやる事ないねん、どんだけ安心しきっとんねん!

 ふー、突っ込んでてもしゃーないわ。そろそろどっか遊びに行こっ。どこに? どこやろ。まあふらふら歩いてたら何かあるやろ。

 とりあえず……せやなぁ。てくてく山の方まで来て、てくてく山沿いに歩いて、町と隣街の間くらいまで来てみた。町沿い歩くとかどうやろ。うん、やってみよう。一歩間違えたらコウチ家まで逆戻りや!

「痛っつっ⁉」

 ……何や今の。激しい静電気みたいな、すごい痛そうな音と悲鳴。何が起こったし。

 先を急いで見てみたら、町のギリギリ外に手を押さえた学者さんっぽい人が。白衣や……白衣着てはる……。

「・・・、・・・」

「・? ・・・・・・」

 ……何を言い合ってんねんな。てか、もう一人どこ⁉ 家のせいで全然見当たらへん。

「・・・・、・・・・・・・」

「・! ・・・・……・・・・・・ー!」

 おっ? どうしたどうした? 急に叫びはった。……視線的に、これは相手の人どっか行ったな。どいつやろー。

 ……ん。……んん?

 あれ? めっちゃ軽々と屋根の上跳んではる奴? 今、キーヴァっぽい小さな影が襲いかかって、逆にいなされてる? あ、キーヴァ追っかけて見えなくなった。白衣の学者さんは頭抱えてため息。

「あのー、どうしはったんですか?」

「・……? 君は……?」

「あ、ども。ハヤシレイって言います。幽霊やってます」

「ご丁寧にどうもありがとう。私はアトです」

 ……訛りがなかなか強いなこの人。さては不慣れか。

「どうしたんですか?」

 ここは、日本語しかできないレイちゃんが極力頑張って標準語使ったろやないか! あくまで極力やけど!

「私はこの町に入れない」

「どうしてですか?」

 あ、めっちゃ不安やー。不安しか無いわー。誰か助けて。さっきの人早よ戻ってきて。

「わからない」

 しーん……あ、あかん、会話続かへん。めっちゃ気まずい。学者さんも何か……あ、全然気まずそう違うかったわ。鞄の中からノートパソコンなんか取り出しよった。何その、置くとこ無くても使えるぜ顔のミニパソコン。開いてカタカタ、イヤホンマイク付けて謎言語でお喋り。

「はーいどーも。呼ばれてしゃーなくじゃじゃじゃじゃん。シルことシヴィルの到着でーす。と、ちょっとハイテンションに登場してただいま後悔中。ま、教授にゃよくわかってなさそうだから良しとしよう。あ、レイ、昨日ぶり」

 相変わらずつかめんなこの人。美人やのに! てか、声平坦やのになんでこんなハイテンションに聞こえるんやろ。早口やからか?

 あ、酒の匂いした。

 教授っていうのはこの学者さんやろな。その人がシルに話しかけた。シルはうんうん、って頷いてる。

「教授もいかが? 本物の日本酒よー」

「・・・・・・⁉」

 ……たぶん、今のは『話聞いてたか⁉』って言ったんやと思う。そんな雰囲気やった。

「お、シルじゃねぇか。久しぶり」

「あ、ジン。久しぶりー」

 お、さっきの人帰ってきたんか。シル、知り合いやったんか。知り合いの知り合いは知り合いかー……

 振り返って、その人見たんよ、うち。なんか、な。身長的な問題で、その人の被ってるフードの中身が見えてんよ。

「あ」

「お……奇遇だな?」

 皆さん知ってた? 幽霊も腰抜けるんやて。いや、うちたぶん腰抜けたん初めてやけど。

「あり、知り合い?」

「まぁな。仕事の途中で会った」

「へぇー……へ? うそ、ジン、見逃したの?」

「……なんと言うか、猛烈な勢いで東の方に吹っ飛んでった」

 それで逃げれたと思ったのに!

「なんだ。結局獲物扱いか」

 獲物⁉ うち、獲物扱い⁉ 草食動物⁉ 弱肉強食の肉⁉

「この町でなきゃ潰すんだがなぁ」

 え、あれ? 助かった? ひょっとしてうち、助かった? 爺ちゃんのがこの町に居ったら大丈夫とかなんとか言ってたのはほんまやったんか……

「あ、アト、まだ入れそうに無い。長けりゃ二、三日かかるかも」

 アト? ……教授か。呼び方統一しようや。

 その人が何か言って、怖いお兄さんが何が言って、またその人が何か言って帰ってった。……あー、後ろ姿がめちゃさみしそう。斜線で影が入ってるように見える。

「あー、レイ。こっちあたしの兄のジャイズン。怖い思いさせたみたいだけど、ま、仕事だから許したげて。ジン、この子幽霊のレイ。女の子だってさ。懐かしいよねー、学ランとか」

「ん」

 返事シンプルやなジャイズンさん。逆に怖いで、何考えてんの、レイちゃん食べてもうまないでー!

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