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8日 ぶらぶらと

 ……怖いて。怖いって。

 キーヴァと、めっちゃ怖い顔した爺ちゃんが対峙してんねん。爺ちゃんが滅茶苦茶怖いねん。白髪が、いつもは柔らかそうに見えるのに(あくまで見えるだけで、触ったらそうでもない)それが今はなんというか、ハリネズミの針みたいに硬そう。……いや、この言い方は極端かもしれんけど。

 鹿なんかもう、とっくに逃げてもたしな。『さわらぬ神に祟りなし』とか叫んでた。アイツホンマにいつまで鹿のまんまで居るんやろ。

 ……で、この二人、対峙はしてはるものの動く気配は全く無し。喋るわけでもなく、何か行動起こすわけでもなく。ただ爺ちゃんはキーヴァを睨み付けてて、キーヴァは眠たそうに爺ちゃんの顔を見上げてるだけ。夜行性なんか自分は。

 ………………動けや‼

 動けや! ほんでなんか喋れや! 何向かい会うたまま微動だにせぇへんねん! 寝てるんか⁉ 目ぇ開けて立ったまま寝てるんか、お前ら!

 ふー、もうえぇわ。もーえぇわ。観察やめ。別のところ行こ。どこ行こう。

 ……んぉ、参拝客が帰ってく。えぇやん、あのお爺ちゃんに付いてってみよ。……なんか見覚えあるお爺ちゃんやけど、だれやったかな。あ、ミヤビに手ぇ噛まれてた子のお爺ちゃん? 公園に孫連れてきてた? ……気がする、だけな。

 鳥居をくぐって、狛犬ちゃん等の間を通って、道路に出た。どこ行くんかなー。こっち高校の方やな。トーカとか色々は今日学校居るやろか。

 ……あ、素通りっすか。そらな、お爺ちゃん突然学校入ってきたらアレ鳴るもんな。セコン鳴るもんな。

 って、思ったそばからジリリリリリリって大音量で鳴りだした⁉ 何、何が入ってきたん⁉ 泥棒⁉ サンタさん⁉

『えー、ただいまー、非常ベルの点検作業中です』

 ややこし事すんな。もうちょっと大人しくやれ。無理か。いざって時に大人しく鳴られたら困るわな。

 ……あ、お爺ちゃんそっち行っちゃう? 町の外行っちゃう? うちもうそっから先出れへんで、出ようとしたら引き戻される、引き戻された、で。なんや、トーカ学校ちゃうんかったんか。それであれより先行けんかったんな。

 何してんの、コレ。めっちゃ布きれ散らかってるやん。裁縫? あ、型紙あった。えっと……『腕』? ……ぬいぐるみか。え、まさかの?

 あ、こっちには本で置いたある。『誰でもテディ』か。

 ……誰もがテディになってしまいそうな名前やな。あれ、そう思うたんうちだけ?

 カーエーはー、お絵かき中か。失礼しましたー。

 エイトは一足先にお母さん方の実家行くとか言ってたっけか? じゃあ居らんよな。……この家の子供らは皆見たのに『ぴこーん』っていうゲームの音聞こえてくるのなんでや。

「あ、レイちゃ来てたの?」

「何してんの」

 なんか、鹿が人間に戻ってた。エイトの部屋の机に座って、ゲームやってた。赤い帽子のおっちゃんと緑の帽子のおっちゃんが跳んだり走ったりキノコ食うたりするアレ。

「懐かしいなー。買ったばかりの時は毎日のようにやってたよ」

「へー」

「レイちゃはゲームしなかったの?」

「たぶんしてたでー」

 たぶん……あれ、思い出せんわ。

「やる?」

「いやいやいやいや……やるわ」

「あ、やるんだ」

 これがBボタンが確かダッシュ? で、Aが何やったっけ。お、跳んだ。愉しいなコレ。

「……ねぇレイちゃ、ひょっとして君ゲーマーだったんじゃない?」

「いやー、ソレは無いと思うわ」

「……こんなスコア見たことないんだけどなー」

 おっ、なんやねん、ラスボスのくせに弱いなコイツ。

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