6日 午前に
団地にあるアパートの一室。だいぶ前に公園でミヤビに手ぇがじがじされた女の子の家。
お母さんらしき人がゴロゴロ(スーツケースの事)開けて中身確認してるけど、旅行にでも行くんやろか。
テレビでは、毎年この日に流れる景色が。
「……ああー、今日原爆記念日かぁ」
「広島ってことは今日、八月六日かー」
「なあ、あんたいつまで鹿のまんまなん」
「意外と気に入っちゃってさぁ。このままでもいいかなとか思ってる」
何悟ってんのこの人。何を悟ったの。悟り世代やん。意味わからんとか言わんといて。
「まあ、幽霊飛べるんだから、戻ろうと思えば戻れるさ」
「アンタ、えらい性格変わったな」
「そーお? 僕演技も得意だからね」
「へー」
「着ぐるみの鹿大人気だったんだよ、我ながら」
「へー」
「後、別に君見た目や口調ほど怖くないなと思って」
「怖がりか」
って、誰が見た目と口調怖いねん。
「ははー、不良にあったらとりあえず怖がって距離を取れ!」
「どこの教訓?」
「僕の持論」
「なんでなん?」
「逃げやすいように」
「効くん?」
「知らない。会ったことないから」
「アンタなんやかんやで逃げんかったやん」
「女なら大丈夫かという気持ちが働いた」
「お、おお……」
アレ、これ舐められたん? ちゃんと女に見えるって褒められたん? どっちなん? っていうか、中々騙されへん男の人多いな。声か。声のせいか?
「ほらレイちゃ、そろそろ八時十五分だって。黙祷しなきゃ」
うち等も幽霊やけどな。原爆で死んだわけやないとはいえ。
合掌。
「……アンタどうやって黙祷すんの?」
「……レイちゃ、黙祷はね、無言で祈ることを言うんだよ。手を合わせなくちゃいけないわけじゃないんだよ」
マジで? でも、鐘の音と一緒に映された広島の人たちは手ぇ合わせてるから合掌しとく。
隣では、若いお母さんも荷物の確認の手を止めて黙祷中。
「あれ……? ママ、なんで寝てるの? お祖母ちゃん家は?」
……違う違う、寝てるん違う。
鐘の音聞いてると、案外一分って短いなぁ……。この鐘の音好きやねんけどな。高すぎんし、かといって重くもないし、何か透き通ってる感じする。……あ、原爆ドーム。あの道通ったことあるような気がする。
「レイちゃ?」
「んぉっ。何や?」
「いや、どうかしたのかと思ってさー」
「……どうかしてるの自分ちゃう? なんで鹿やねんな」
「乗ってみる?」
「マジで⁉ いいの⁉」
おぉ、角持ち手みたいやん。おもろ。あ、いや、やっぱ持つには遠かった。手綱欲しいなー。馬違うけど。
「鹿は神様の使いなんだぞー。神使って言うんだけど知ってる?」
「変態という名の紳士だよ! って誰か言ってたなぁ」
「どこの人だよ。そういう意味じゃなくてさぁ」
「大丈夫、うち神道やから!」
そういう問題なんか? いや、言うたんうちやけども。
「へー。じゃあ神社行こうか」
……流された。『へー』だけで流された。
「お、えぇやん。爺ちゃんところか。行こ行こ!」
「え? ダイのところ?」
「あー、違う違う。ダイ爺やなくて、神様の事。爺ちゃんって呼んでんねん」
「わーお」
「神主さんも爺さまって呼んでるしえぇやろっ!」
「神主さん軽いなぁ」
そうか? あんま軽そうなイメージ無いけどな、アケヤマさん。
「よし、じゃ、行くよー」
お、早っ。危ない危ない。でも楽しいわ、きゃほー。




