3日 水場には集まるという
水場には幽霊が集まるって言うんやって。姉ちゃん情報。
それを確かめるべく、レイは川を上ってみることにした! ホンマに居るんやろか。……あ、これを確かめに行くんやった。
川にざっぷんと入って、いや、すり抜けてるから水は何も反応なかったけどな。てくてくと川の中を進んでみる。川の中入ってんのにてくてくって、擬音としてどうなんやろ。
コンクリは意外と苔むしてて歩きにくい。やっぱ川じゃなくて陸歩いてこ。何で川ん中歩こうとか思たんやうち。てくてく。山に入った。てくてく。鹿が居た。てくてく。背後で鹿の悲鳴っぽいの聞こえた。びくびく。鹿の声やんだ。どくどく。鹿の霊居た。
「ぎゃぁああああああ‼」
「あ、ども」
「ぎゃぁあああああ喋ったぁああああああ‼」
「えっ、ちょ待っ‼ 僕人間です人間! あ、違った。幽霊です幽霊!」
「出たぁあああああ‼」
「貴方幽霊でしょ⁉」
ひぃやぁあああ! あわあわあわあわ、落ち着けうち。落ち着くんやうち。流石に幽霊で悲鳴あげた事は無いやろが。
「ふー、ふー」
「落ち着きました?」
「なんっで鹿のコスプレしとんねんお前ぇ‼」
「グキキャッ‼」
殴ったらすっごい変な声出された。ってか歯ぎしりすんな。歯ぁ喰いしばんな。殴る前によく言う言葉やけど。『歯ぁ喰いしばれ』って。
「鹿コスしたまま死んだんかお前。可哀そすぎるやろ。ほんで、何で鹿やねん。っていうかよー着ぐるみの中で死ねたなおい。死因なんやねん」
「熱中症……バイト中に……」
「…………お、おぉ……なんかごめん」
っていうか、うちも男装してたな。うちもコスプレやってたな。うん、ホンマごめんな。まあ着ぐるみでそんなダメージ無かったやろけど。めっちゃ苦しんでるのは演技と見た。
「じゃなー」
「え、行っちゃうの?」
「うち、ちょっとした研究中やねん」
本当に水場には幽霊が集まるのかって言う。
「け、研究……手伝うよ!」
「別に手ぇ足りてるんやけど」
「暇なんだよ!」
知らんがな。
「勝手にし」
「わーい」
……何なんこの変なコンビ。シュールすぎるやろ。
山の上に向かっててくてく。木々すり抜けててくてく。うるさい鹿コス幽霊殴っててくてく。着ぐるみに肩車されてゆらゆら。
「わー……変なの」
「うん、うちも思うわぁ」
「なんで鹿?」
「知らん。なんでなん?」
「えとえと、えーっと。忘れた!」
えー。バイトって事は覚えてたのになぁ。
「水場には幽霊が集まるって言うけど、どっちかって言うと変なのが集まってるよね」
「ホンマそれな。他にも会うたん?」
「うん、体中に鱗がある魚とか、」
体中に鱗ある魚⁉ え、どんなん⁉ ……ん? あれ、いや、ソレただの魚やん。何も珍し無いやん。
「身体に鱗ある男の子とか、」
それただの化物やん。『ただの』ちゃうやん。めっちゃ珍しいやん。そっち先に言えや。
「真っ白いお爺さんとか、」
それただの神の爺ちゃん。
「浮いてる首とか、」
それただのろくろ首。
「小豆洗う小さいお爺とか、」
妖怪小豆洗いか。シャキシャキシャキか。
「鹿の着ぐるみとか、」
うちの下にいる奴か。
……半分が知り合いなのは流すべきなんか?
「ってか、そんなに居たん?」
「うん、これより上流に」
「普通の幽霊は?」
「居たよ」
「どんくらい?」
「両手で事足りるくらい? あ、でも水湧いてるところは見てないなぁ」
「ふーん。よしゃ、そこまで見てこ!」
「いってらっしゃーい」
ってか……そんなたくさん幽霊居たんやな。全然知らんかった。




