1日 何か、集まった
「もっしもっしかーめよー、かーめさーんよー」
「お兄ちゃん歌上手いな」
「…………褒め言葉だか皮肉だかわかんねぇなオイ」
「褒めたで?」
「あんがと」
「にぃにー、続き歌ってー」
「せっかいーのうっちでー、おっまえーほどー」
レイです。目の前に、パソコンカタカタしながら歌うたいながらそれに合わせてジュジュがけん玉するのをちゃんと見てやってるすごいお兄ちゃん居るんやけど。アパートのお兄ちゃんな。器用すぎるやろこの人。しかもなんか、パソコンカタカタやってんのワードやで? ってことは何か考えながら打ってんねんで? すごない? どうなってんのこの人の頭。それとも何か、大学生はこれが普通やとでも言うんか。
「どーっしってそーんなーにノーロいーのかー」
「できた!」
「おー、良かったな。すげぇじゃん」
「にぃにできる?」
「んーにゃ、無理」
何でもできるかと思ったら意外なところにできないものあった。
んぉ、ジュジュが、恐る恐るうちのコト見た‼
「うちも無理やわ……」
うん、残念ながら無理やった。
「にぃに、お外行こ?」
「は? なんでだ」
「ねぇねにも見せる!」
「ねぇね今バイトだからなぁ……帰ってくるまで待てよ」
「えー」
「仲間には?」
「見せたもん」
「神様には?」
「見せてない! 行こ、にぃに!」
「なんで俺もだ?」
「いいじゃんかー」
「レイ兄とでも行きゃ良くね?」
ふぉっ⁉ え、めっちゃ気まずくなること確定やん!
「お兄ちゃんも行こうや! 歌大事やで!」
「はぁあ⁉ くそテメ、裏切ったな」
どういうことやの。
「あー、もう、わぁったよ。せめてあと一行」
「いーち、はい終わり!」
「いや一秒じゃねぇ。この、文末の丸が出てくるまで」
さりげ増えたくない? 一行越えたくない?
「よし、行くか」
「わーい!」
おー、この家の玄関から出るの初めてかも。やっぱなんやかんやで狭いな。古いしな。関係あるんか知らんけど。そや、表札見よう見よう思って忘れてたんや。
…………読めん。
「お兄ちゃん、表札溶けてんで」
「あん? ……うっわー、引っ越した時貼ったのそのままにしてたっけか。忘れてた」
変なところ間抜けやな自分。
「また今度貼っとくか」
「にーにー、早くー!」
アパートから、神社までは徒歩五分。そういや、神社も表から入ること滅多にないなぁ。
「久々」
「久々」
「お久っす」
「おー、久しぶりやな、狛犬ちゃん」
「ちゃんって言うな」
「言うな」
相変わらずやな、うん。ほんで、お兄ちゃんも知り合いやったんやな。
「神様ー!」
「ああ、ジュジュくん。今は神様のコト、そっとしておいてあげてください」
「えー」
「何の御用で?」
「けん玉、見て!」
「あー、ジュジュがね、けん玉で『もし亀』に合わせられるようになったんで、見せたいっていうモンだから」
「へぇ、じゃあ僕に見せてもらえますか?」
「うん! いいよ! にぃに、歌ってー」
お兄ちゃん苦笑。でも歌ってあげるんやな。マリーちゃんとエンドウさんも寄って来た。よってらっしゃい見てらっしゃい! ……ではないけれども。
「すごいの! マリーさんにもやらせてほしいの」
「いいよ」
「お久しぶりです」
「あ、お久しぶりですー」
アケヤマさんとお兄ちゃんがぺこりぺこり。挨拶までめっちゃ長かったな。
「えっと、初めまして?」
「あっ、初めまして!」
エンドウさん、深々しすぎやろ。危うくアケヤマさんに頭突きかますところやったで。
「あうっ、難しいの……」
「こーやってねー、膝でね、リズム取ったらやりやすいよ」
マリーちゃん、皿に一回玉乗るだけでもすごいで、うちからしたら。
「神様、どうかされたんですか?」
「月の初めはああなんですよ。というか、月末のお客様が来られた後というか……」
「ふぅん……?」
すごいな、爺ちゃんの体力そこまで消耗させる客って。見てみたいわ。




