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30日 パエリアー!

 おー、ギター持ってる子がいる。歩いてる。どこ行くんやろ。ついて行こ。

 ……いや、別に怪しいものじゃないです。レイちゃんです。なんとなくギターに興味あっただけです。それだけです。

 ギター持ってる女の子は、うちの今まで入った事の無い家の前で立ち止まってインターホンを押した。ピーンポーンってな、この音聞くとちょっと緊張しちゃうレイちゃんは別にコミュ障ってわけやありません。誰でもなるくない? ならん? あそ。

『はーい。あ、開けるねー』

 えぇよなぁ、カメラ付き。何も言わんでも自分の事分かってくれるもんなぁ。何も言わんでも中入れてくれるもんなぁ。

「やほー」

「やほー」

 出てきたのも知らん子やった。多分どっちも中学生くらいちゃう? 何、ダイ爺呼ぶべき? あ、あの人別に中学生ちゃうんか。そうやった。

「上がって上がって」

 玄関は狭いけど中々綺麗。何か洒落たもの飾ってあるわ。宙に浮く布団のフィギアとか。……いや、そう言う洒落じゃなくて……何であんねん、『布団がふっとんだ』フィギア。オヤジか。誰やねんこんな訳分からん物作ったの。

「上がって上がって」

 あれ、うちも呼ばれてる⁉

 ……違うか。さっきの『上がって』は玄関の事、今の『上がって』は階段の事。なんやねん、ちょっと嬉しかったやないか。ほんで滅茶苦茶虚しい気分になったわ。

「何弾くー?」

「これ合わせよ」

 来た方の子が持ってたのはベース、家主の子の手にあるのはえーっと、普通のギター。間にあるのは譜面やけど、生憎うちはさらさら読める人ではないです。数えな無理です。えっと、これがドやから……ド、レ、ミ、ファ、

「せーの」

 うぉ、めっちゃガチ目に引き出した。上手いし。何気上手いし。いや、うちギターの生演奏聴くの初めてやけどな。テンション上がる曲! 何の曲か知らんけども。

「歌が欲しいよね」

「あっ、わかる! っていうか歌えば?」

「あたし⁉ いやー、ギターに夢中ですよあたしは」

「誰だよ」

 仲えぇなぁこの子ら。楽しそうやわ。

 来た方の子が、同じ音をジャジャジャジャっとかき鳴らし始めた。何か……どっか外国の料理店的な場所で流れてそう。スタイルいい女の人が踊ってそう。女の子たちも同じ事を考えていたらしく、それについて盛り上がり中。

「イタリア料理のお店で流れてそう!」

「確かに! パエリア出てきそう!」

「パエリアー!」

「パエリアー!」

 あ、この子等には付いて行けへんわ。荒ぶり過ぎや自分等。ギターとベースでダブルジャカジャカすんなし。踊れってか。

『パエリアー!』

 怖いわ自分等!

 面白いけど怖いわこの二人! 何あの荒ぶり方! 女子中学生って感じちゃうやん! 頭振り過ぎな! 髪振り乱し過ぎな!

 という訳で、コウチ家まで猛ダッシュで帰って来た。

 ミヤビで落ち着こうとしたら、「にゃんっ」とか言って逃げられた。ちっ、どさくさに紛れて作戦失敗! ミヤビが行ったのは二階か? 追いかけて二階に来てみたら、カエが家庭科の教科書開いてた。なんで家庭科やねん。

『夏休みの宿題 家庭科』

 納得。

 あれか、家族のご飯を作りましょうって奴か。何作るんやろ。教科書覗いてみると――

『パエリア』

 何⁉ 流行ってんの⁉ 女子中学生の中でパエリア流行ってんの⁉ 何なん、この謎なシンクロ!

 ……あれ?

『パエリア スペイン料理』

 ……あれ。


 パエリアはスペイン東部バレンシア地方発祥だそうです。

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