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29日 レッツ、彼の暇つぶし

 あ、あの雲、爺ちゃんの尻尾に似てるー。

 髪の毛の尻尾やで。別に爺ちゃんに尻尾生えてる訳ちゃうからな。

 ……雲が尻尾に似てるってどういうことやねん。今更ながら、我ながら謎いわ。ただ細長いだけやん。

「レイ」

「んぉ? あー……えー、キーヴァ?」

「うん」

「どしたん」

「暇」

「知らんがな」

 何でそんな親しい訳でもない奴のところに来て『暇』やねん。どないせーっちゅーねん。

「あ、わかった。お前友達居らんのやろ」

「今寝てる。……やろって何?」

「あん? 方言や方言、関西弁とか、聞かん?」

「そっちがこの国の標準語?」

「んや、標準語は自分使ってる奴やで」

 ……あ、頭上にはてなが見える。

「うちの言うた自分、はアンタの事な?」

「ああ、ややこしい」

「日本語ってむずい言うしなー」

「うん、略しすぎ。方言は国違うレベル。その方言の所まだ見てない」

「マジでか? えぇでー、京都。怖いけどえぇで。一応宣伝しとくわ。でもいじめには気を付けてね」

「ふーん」

 わぁ興味なさそっ。

「っていうか、自分そこまで日本語できるって結構頑張ったんちゃうん。いつ日本来たん?」

「30日くらい前」

「嘘やん。めっちゃペラペラやん。日本語学校とか行ってたん?」

「ううん。父がたまに教えてくれた」

「へー、お父さん日本人?」

「知らない」

 知らない⁉

「自分何人?」

「知らない」

 マジで? え、国籍無いの? どうやって日本来たん?

 ……あ、この子人間違うんか。そっか。忘れてた。うん、そら国籍無いわ。

「ニィ」

「おー、チーニルやん! 抱っこさせて! 抱かせて!」

「チーニルに聞いて」

「抱っこさせてー!」

「二」

 ぽふっと顔面に小さな圧力。きゃぁああああ肉球! もふもふ! 猫最高! あれ、でもこれって拒絶の意味?

「嫌だって」

 ガーン。レイはそのまま倒れ伏しました。チーン。いやいや死んでへんからな。

「仏説魔可般若波羅蜜多心行ー」

「ガチの奴唱えんなや!」

 ほんで、うち仏教ちゃうし。神道やし。

「まだ題名しか言ってない」

「何? 全部覚えてるん?」

「うん」

 なんで⁉ なんでそんなん覚えてんの? ってか、どこにそんな脳の要領あんの?

「やーい」

「突然何⁉」

 うち何も言うてへんで⁉

「なんか、表情かおみたら勝った気がした」

「酷っ」

「褒め言葉だよね?」

「どんな風に日本語教えたんやお父さん」

「突然日本語で喋り出す、とか」

 それ教えてるって言わんやろ。

「俺胡坐の中に座らせて、日本語で他人と会話するとか」

 めっちゃ子供暇な奴やん。お前寝てたか茶菓子食うてたかどっちかやろ。少なくともうちはそうする。茶菓子喰う。角砂糖も食う。

「青汁ってのは不味かった」

「そやろな、ってやっぱお前何も聞いてへんかったんやないか!」

「ニィ」

「いや、不味かった。チーニル飲んでないからそんなこと言えるんだって」

「ニー、ニー」

「俺、青汁飲んだの二つの時だもん」

 うち差し置いて仲良さ気に喋るな。嫉妬の炎燃え上がるわ。すでにすごい事なってるわ、主にうちの中が。

「……レイ、俺と遊ぶ?」

「あん?」

「殺気出てるから」

「マジで?」

「うん。遊ぼう。殺し合い……楽しいよね」

 ……ホンマどういう教育してきたんや、お父さん。お母さん殺されてへんやろか。

「ニッ」

「……ちぇ。わかってるって、殺しはしないから」

 チーニル、うちの事殺したらアカン言うてくれたん⁉ うちもうそれだけで幸せやねんけど! 舞い上がるんやけど! 舞い上がってんねんけど!

「じゃあ、参ったした方が負けってことで」

「へ?」

 舞い上がったところから、地面に殴り落とされました。

 ………………やめてー。ちょ、参ったってどうやるん?

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