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28日 流れるように流れ去ったよ。

「爺ちゃーん、あれ、爺ちゃーん?」

「後ろだ、後ろ」

「うぉわい! 背後に立つなや!」

「初めから居たぞ」

 泥まみれでか。お芋さんの側で何しててん。雑草やったらアケヤマさんやマーリちゃんや、いつの間にか住み込んで巫女やってたエンドウさんがやってるやろ?

「それで、どうした?」

「爺ちゃん、着物の裾茶色いで」

「川にでも行こうか……」

「おー、えぇなぁ川。うちも行こー」

 ……川行って洗う気か。ぜったいそうやろ。

「ああ、何か用があったのか?」

「んー、後でえぇよ。今その袴がめっちゃ気になってるから」

「そうか」

 神社の近所の川は、湧いてるところからそんなに遠くない(はず)から、結構綺麗。いや、かなり綺麗。サワガニとかいる。カニさんこっちら、手の鳴る……いや、波立つ方へ? あ、サワガニ流された。ごめんな。波きつすぎたか。

 爺ちゃんは、洗うのは袴だからって事なのか足袋を脱いだらそのまま川にザッパザッパ……ってざっつ! 雑すぎるやろおい、神やろ⁉ いや、関係あるんか知らんけれどもやなぁ……着物ってあんな風に洗ってえぇもんか? 少なくとも袴はアカン気すんねんけど。

「なぁなぁ爺ちゃん」

「何だ?」

「袴の折り目、取れへん?」

「後でクリーニングにでも出してもらうか」

「なぁなぁ爺ちゃん」

「何だ」

「ホンマに神か?」

 クリーニングて、おま。

「…………私が居なかったら、レイ坊は今ここに居ないだろうな。いい事か悪い事かは知らぬが」

 え、ちょー、それどういう意味? うち居らん方が良かったかもってこと⁉ 酷ない⁉ うち泣くで、泣いちゃうで。えーん。嘘くさい? 嘘泣きやもん。

「うーむ」

 ちょ、そんな真剣に考え込まんといて。本気で傷つくわ、うち。

 ふーんだ。えぇもん、えぇもん!

「どうしたレイ坊」

「爺ちゃんが酷いー」

「は?」

 すっ呆けられた⁉

 爺ちゃんはしばらく考えてから、ポンと手を打った。

「安心しろレイ坊。そう言う意味ではない」

「ホンマ?」

「ああ」

「そう言う意味って、どいう言う意味のつもりで言ったん今」

「レイ坊は死んでいた方がいい、と、いう意味で言ったのではない」

「考えてへんわ!」

「アレ?」

 その顔で『アレ?』とか言わんといて。イメージ崩れるわ。

「なら、どういう意味にとった?」

「うち居らん方が良かったかもっていうことかと思ってんけど」

「はっは。違う違う。レイ坊は居ても居なくても変わらんよ」

「それ一番傷つくねんけど⁉」

 トドメですか⁉ トドメ差してきたんですか!

「……ふむ。ただ、居ないと少々寂しいな」

 だいぶ救われたわ、今の一言で。爺ちゃんありがとう、でもうちの事傷つけたんも爺ちゃんやからな。

「神様ー……」

 お、この子見覚えあるわ。水の中にでも潜ってたんかな? ひょっこり川の中から顔出してきた。……いや、一瞬びっくりしたとか、別に無いからな。無いからな。名前何やったっけ……。確か、アパートの姉ちゃんのところに居た、豆腐小僧じゃない方……

「おおジュジュ、また来たか」

 あ、そうそう、ジュジュや‼ 怖がりのちびっ子! お兄ちゃんの胡坐の中に居るのがメッチャ似合う。爺ちゃんの隣に居たら、孫通り越してひ孫にも見えなくはないかも。いや、流石に行きすぎか。

「うん」

「まだ怖いかい?」

 ……うちの事か! ちょ、ジュジュ迷わんといて。頷くでもなく首振るでもなく、うちの事ガン見すんのやめて。

「おお、そうかそうか」

 か、かすかに首振った? かすかに横に髪の毛振れた? っしゃ、子供に懐かれた! ……あ、懐かれては無いんか。くそう。

「ジュジュ、今度遊ぼうや」

 爺ちゃんの後ろに隠れられた。何か遠いわぁ……頑張れ、うち。



 ……ほんで、うち爺ちゃんに何か用あってんけど、何やったんやろ。

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