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21日 何か居るんだって。

「自分、何してんのん」

「ひっ!」

「ちょー待て、なんで逃げんねん!」

「見逃して!」

 見逃す!? え、どゆこと?

「一生のお願い!」

「お前もう一生終わってるやろが!」

「あ…………」

 何で泣くねん! 泣き虫か! 自覚しとけや死んでることくらい!

「お願い……見逃して……」

 ……あの、どうしたらええのん。うち別に追いかけてた訳違うしな。草むらに寝そべって隠れてた女の人に声かけただけやしな。この人いったい何から逃げてんねん。っていうか、まさかこの人泣いたん、うちが怖いからって言うんちゃうやろな。うちが怖がられるのは子供相手の時だけやで、絶対。絶対!

「おや、レイちゃん」

 ……自信は無かったから、うちが知ってる中で一番穏やかな人のところに連れて来てみた。

「そちらは……?」

「えっ、えっと、エンドウです」

「神主のアケヤマです。どうぞよろしく」

「よ、よろしくお願いします」

 正解やったっぽい。アケヤマさん見たら安心したっぽい顔になったし。うん。大丈夫やろ。ずっとうつむいたままやったけど、顔も上げられたし。

「えーっと……レイちゃん、説明、ありますよね?」

「うちもよくわかってないんやけど。めっちゃビビってはった」

「大丈夫ですよ、エンドウさん。レイちゃんは服装はともかく、いい子ですから」

 服装はともかく、て。っていうか酷ない⁉ 『ビビってはった』って言っただけで原因うちやって判断せんといてくれる⁉

「あ、はい。それより……あの人達に見つかっちゃったら……」

「あの人達て?」

「なんかよくわからないけど……その………」

 おい、地味に距離取るな。アケヤマさんのフォローまったく役に立ってへんやん。

「急に襲ってくるの……」

「幽霊を?」

「うん」

 ……何それこっわ。うちそんなん会うた事無いんやけど? …………た、たぶん。

「物騒ですねぇ」

「ほ、本当ですよ!」

「ええ、わかっています。でも、この町にいれば大丈夫ですよ。これまで、そんな話はありませんでしたから」

「…………そうですか?」

 にっこり頷くアケヤマさんって、それだけですごい説得力あんねん。『大丈夫』って感じする。

 ……神主さんやもんな。いや、関係あるんかは知らんけど。

「それに、いざとなったら天保霊大御神が守ってくださいます」

「神様、ですか」

「ええ。頼りになる爺様です。後でご紹介しましょう」

 守ってくれるとか言っといて爺様って言っちゃった。大丈夫なんかって気になるんうちだけ?

「まあ、立ち話もなんですから中へどうぞ」

「トシユキさん、お客さんなの? マリーさん、お茶汲んでくるの」

「ありがとう」

 ……マリーちゃんの服が、最近質素になってる気がする。いや、質素て言うか、普通になってきてる気がする。ロリータやなくて、ふつーのワンピースやねん。

 あれか。暑いからか。もうただの女の子やな、マリーちゃん。こんど髪いじったろか。絶対楽しいわ。あの子髪長いし、綺麗やし。

「娘さんですか? 可愛いですね」

「いいえ、あの子は妖怪ですよ。ほら、ご存じでしょう? メリーさんって。電話を掛けながら近づいてくる……」

「ええ、知ってますけど……あの子が?」

「名前はマリーなのですけれどね。本人曰く。ちなみに、僕は結婚はおろか彼女も居ませんよ」

 マジかアケヤマさん。その顔で、その性格でか。

「そうなんですか? モテそうなのに……」

 おねーさんもモテそうやけどな。化粧がどれくらい厚いかー、とかは知らんけど。

「えっ? いえ、とんでもない! ……ありがとうございます」

 照れた……。アケヤマさんが取り乱すの初めて見た気ぃするわ。……弱点は綺麗な女の人、と。そういうことでえぇんかな? 顔赤くすんなし。口元押さえんなし。

「氷持ってきたろーかー」

「いえ、結構です……」

 まあ、どこにあるんか知らんねんけど。

「ほんで、幽霊襲ってくるってどんな奴なん?」

「どんな奴って言われても……男の人と、なんか大きい黒い動物」 

 何それ。黒い動物? 黒い動物……黒猫? 黒ヒョウ?

「外国語みたいなのを喋ってたけど……」

 え、まさかの外国人!?

「あ、それから、男の人は軍服みたいな変な服着てたわ。動物の方は、首輪というよりペンダントみたいなのを首から下げてた」

 なんのこっちゃわけわからんわ。今度探してみたろかなそいつら。野次馬や野次馬!

「ふーん。ほんじゃ、うちこの辺で!」

「え?」

「またなー」

「はい、また今度」

「ば、ばいばい?」

 ごゆっくりーとか、一瞬考えてしまったうちはお見合いのオバサンっぽいかもしれへん気がする。

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