16日 知らんがな
「どーよレイ、居た?」
「そんなホイホイ見つかるわけ無いやろー。もうそろそろ何探してたかも忘れて来てんけど」
爺ちゃんの神社がある山の中。ダイ爺と一緒に学校を出て、何やったか忘れたけど誰かを探してる。
「うぉい。ろくろ首だろ! ろくろ首! お前、探しながら何探してるか忘れるって、うちの祖母ちゃんだぞそれ」
「え、ダイ爺結婚してたん?」
「なんでそうなる!」
「いやだって、婆さんやーって」
「言ってねぇ! 俺の、父さんの、母さんだ、馬鹿!」
「何やねん、そんな賢さ変わらんやろ!」
キッと睨み合ったうちとダイ爺の間を、小さな子供がふわふわと歩いて行った。勇気あるな自分。ふいとその女の子を見たら、あれ、ちょー待って、体無くない? ほんで、髪型が古臭ない?
「……だ、ダイ爺。ろくろ首って、何やっけ?」
「あん? そりゃアレだろ。首が伸びる妖怪」
「アレは?」
「……首が抜けるタイプの奴も、居るんだってさ」
沈黙が続くこと、かっきり三拍。
『居たぁあああああ‼』
びっくりして振返ったその子の顔はオバサンやった。あ、子ども違うんやな。
「え、何だい何だい?」
『待てぇえええええ‼』
因みに、先にろくろ首と友達になった方が勝ち。
……あれ、どっちも負けるくない、コレ。
「あんたぁーっ!」
ろくろ首が逃げて行った先、木の上にはお坊さん。え、なんで? この辺寺あったっけ?
「何だ何だ、小僧共」
……ってか、でかっ! ちょーまって、このお坊さんでかすぎるって! 見上げたら見上げただけデカくなってってるような……
「見こした」
あ、消えた。ろくろ首も居らんよなってる。
「ホントだ。おもしれっ!」
「ニィ」
で、背後からうちでもダイ爺でも無い声と、うちの知ってる猫の声。
「誰だお前?」
「俺? こいつ?」
わぉ、このフードかぶった子勇気ある。神主さんが『飼うとか恐れ多い』とか何とか言ってた猫を『こいつ』呼ばわりか。知らぬが仏って奴やな! なむなむ。
「うちこの子知ってんで。チーニルやろ?」
「うん。そう。こいつチーニル。ピッタリな名前だろ?」
いや、正直わかりません。
「お前は?」
「俺、キーヴァ」
「牙?」
「キーヴァ」
「騎馬?」
「キーヴァ」
「喜馬……?」
「殺す!」
ちょぉおおおおい‼ そんな、小学生くらいの子がそんなガチな声出すなって! ビックリするやん!
「今のはレイが悪い」
同音異義語っておもろいよなって、違いますわざとじゃないんですぅ! ちょ、めっちゃ目ぇ光らせてはりますやん。瞳孔めっちゃ開いてはりますやん。これ、ガチやんな? 小学生がようやるゴッコ遊び的なサムシングちゃうよな?
「キヴ……」
おぉ、またチーニル喋った! いや、全然意味わかれへんかったけど。とりあえず、舌打ちしてフードかぶり直したってことはうち殺されんですむねんな? 無事に帰れるんやんな? いや、帰る場所無いけども。
「観察が終わったら真っ先に冥界送ってやるからな!」
「キヴ!」
「チーニル、今日に限って真面目すぎ」
くぅっ、チーニルが何か喋ってんのに! 可愛い猫ちゃんが喋ってんのに! なんでこの子にはわかってうちにはわかれへんねんこの言葉!
「なぁレイ、知り合い」
「いや、違う。こんな物騒な知り合いは流石に居らんわ」
……たぶん。
「見越入道、どこ行ったかな」
……たぶん。今更ながら声は聞き覚えが。いや、でも、やっぱ知らんわ。
「なぁレイ、ろくろ首、どこ行ったかな」
もっと知らんがな。




