10日 パス回し
レイちゃん今立て込んでいるので後でもいいですか?
……ダメですか。そうやろな。喋らんかったら話進まんもんな。一問一答形式で現状説明すんで?
いつ? 夜。
どこ? 中学校の体育館。
何してる? バスケ。
誰と? ダイ爺。
なんで? え、な、なんで? えー、理由は無い! っちゅーか忘れた。ダム、ダム、ダム。
……ってか、それだけ長い間バスケ続けてんねん。一回もダイ爺からボール取れへんってどういうこと⁉ しかもな、ダイ爺逃げてるだけやなくてシュートもバンバン入れて来よんねん。もう100点くらい取られてんねん。どーゆーことなのー。月に向かって叫びたいハヤシレイ14歳です。
後ほんのちょっとで触れるはずやねん‼ 幽霊の体にうっすらふわーってまとわりついてる、細かい光の粒みたいなんに触れてんねん! それやのにとれへんねん! むかつくわぁ……
「レイくん、諦めたら?」
二階の手すりに座って見学していたリノが、欠伸混じりに言ってきた。諦め……うー、
「いやや! 何やむかつくもん!」
「やーいやーい」
「ほら! むかつくやろ!」
「……まぁねぇ……」
なんやねん、なんやねん。何やリノ歯切れ悪いやん。いつの間に仲直りしてん自分らー。レイちゃんいじけんぞ。
「よしゃリノ、二人でダイ爺倒そ‼」
「倒すって何だよ。軽く物騒な響きに聞こえたぞおい。おいレイ構えんじゃねぇよ。本格的だな何の格闘技?」
「ボクシングと空手とテコンドーと柔道を足して2で割った感じ?」
「すげーなおい!」
「4で割らないと大変なことになるけど……?」
「あ。よ、4で割った感じな」
リノ、ほっといてあげといてぇやー。
「それはもうえぇねん! リノ、ダイ爺倒そ‼」
「え……私眠いー……」
「マジかー」
眠いって。
…………アレ、眠い?
リノが?
幽霊が?
……ヤバいやん。
「ちょぉおおおお⁉ 寝たらアカン! 死ぬで!」
「俺らもう死んでんじゃん」
「あ。……いやいやそういう意味やのーて‼ 寝たら消えんねん! 幽霊!」
「え」
「……自分、知らんかったん?」
「……初耳」
ちょっとの沈黙。リノののんきな欠伸。
「アカンって‼ 消えるなー! リノー‼」
「マジかよ! 寝るなリノ! 寝たら死ぬぞ! っつーか知的突っ込みが消えるとかやべーじゃん、俺らの会話がただのバカのやり取りになんじゃねぇか‼」
「誰が馬鹿やねん馬鹿‼」
「おめーだよ馬鹿!」
「うるさい……」
『すいませんでした』
眠そうなリノのジト目めっちゃ怖かった。軽く心臓バクバク言うレベル。鳥肌立つレベル。
「って、静かにしたら寝てまうやん!」
「いいじゃない。寝させてよ……」
あわわわわわわわ、リノの体にまとわりついてる光の粒みたいなんが増え始めた! ってかこれ、まとわりついてるん違うんやな。体から出て来てるんや!
「まぁ……ご縁があったら、また来世?」
「来世ってあんのかわかったもんじゃねぇのに……」
「あるんじゃない、かな……。消えるだけじゃ怖いもの……。希望くらい持たせてよ、ね」
あかん、もうまぶた落ちそうやん。てかもう落ちてるも同然やん。声もめっちゃヒソヒソ声やし。あぁあああ何か光めっちゃ増えてきた!
「リノ、お前結局最後までバスケやんなかったな……。次あったら絶対やらせるから、覚悟しとけよ」
「なんで最期の最期に脅しやねん‼」
「なんで最期の最期まで突っ込んでんだよ!」
「……ふふ。私の最期にしては、随分騒がしいけど……じゃ、また、ね?」
「ああ、またな」
「来世でなー」
……リノが消えていく光にデジャヴ。なんでやろ。
ダイ爺が寂しそうにしてたから、とりあえずそのボールを奪って逃げたった。




