9日 ゲームの世界は好き放題
「コレは誰の心臓か‼」
エイトー、ご飯中やでー。どっから出してん、そんな赤いボール。
コウチ家の食卓で、三姉弟とお母さんがご飯を食べてはります。そこにエイトが取り出しましたるは赤いボール。ひらがなで『こうち とうか』とか書いてある。いつからあんねんこのボール! 耳にリボン付けた猫ちゃんのキャラクター書かれてるでコレ。
結構空気も抜けてるみたいで、手のひらサイズのボールはエイトがぎゅって握りしめたら結構べこっと凹む。……確かに心臓みたいやけど。
「心臓って拳の大きさだよ」
カエ曰く。へー。ほんじゃうちの心臓これ位か。……幽霊に心臓ってあるんか? 少なくとも鼓動は微かに聞こえてるで。あれ、って事は心臓あるん? 動いてるん?
「そーじゃなくて。心臓ギュッてされてるけどコレは誰の心臓か‼」
何がしたいねん。お姉ちゃん達完璧スルーやで。何の反応もしてくれてへんで。
「エイのじゃない?」
「え。…………ぐぁあああああ‼」
めっちゃ間あったな‼ 最初にギュってされてから結構経ってんで! どういうシステムやねん‼
「エイトは170のダメージをうけた」
何その中途半端な数字。
「エイ」
トーカがちょいちょい、と手で『貸せ』と。ぽいって渡したら、リビングの方へぽいっと投げられてしまいましたとさ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‼ ぎゃぁああー」
「こら、ご飯中でしょ。ボールいらないでしょ」
お母さんに怒られた。南無南無。その隣で突然トーカが
「てーててーてててってってってってーててー」
とか、めっちゃ適当な音楽歌いだして。いつもは黙々と食べるトーカが。
「トーカちゃんダンジョンが現れた。入りますか?」
ホンマに何なん⁉ ダンジョン⁉ どこに⁉
「え、何て?」
カエに真顔で聞き返されとるし。
「トーカちゃんダンジョンが現れた。入りますか?」
…………、誰か返事したれや‼
「……パーティは全滅しました」
だってまで結成もしてへんもん! 何やエイト、急にポンって手の平打ったりして。
「その辺のスライムにやられてる奴だ!」
「いや、スライムに会う前に全滅してるから。まだ旅立ってすらないから」
草原にスライムがポツンと居るだけやろこれ。うわ、想像するとメッチャ虚しいわ……っちゅーか、それ以前にまだキャラクター設定画面やろこれ。
「旅立つ人ー」
「はーい」
エイトノリノリか。さっきはスルーしたくせに。
「名前を入力してください」
どこにどうやって?
「んー、じゃあー。エイ」
「冒険者エイトの旅が始まった」
言い切る前に始めたんなや。しかも始まり方地味か!
「スライムが現れた」
「早ッ‼」
エイトは何のために旅に出んねん! 自分探しの旅か? ぶらり旅か?
「スライムの攻撃! エイトは10のダメージを受けた。エイトは倒れた」
「早ぁっ⁉」
その辺どころか初っ端のスライムにやられとるやないか!
「宝箱が見つかった」
「どっから⁉」
エイトの死骸からちゃう? ……誰が見つけてん! 主人公誰や‼
「開けて見た」
あっさりすぎるやろ。
「エイトの死骸を手に入れました」
なんでついさっき倒れたばっかのエイトの死骸が宝箱に収められてんねん!
「エイトが復活した」
さっきから勝手に話進んでくな。選択肢とか無いん?
「スライムを復活させますか?」
どんな選択肢⁉ 何が悲しくて敵を復活させなあかんの⁉
「はい」
「スライムが復活した」
復活させた‼ 何がしたいねんトーカダンジョン! ……ってかこれダンジョンなん?
「エイトは2のダメージを受けた」
今度は何やねん!
「エイトは2のダメージを受けた。エイトは2のダメージを受けた。エイトは2のダメージを受けた」
「毒⁉」
「エイトは2のダメージを受けた。エイトは倒れた」
どんなエイト殺したいねん。
「エイトは復活した」
それただのゾンビちゃう?
「ご飯進んでないよ。食べ」
『はーい』
「雷が落ちた。エイトは5000のダメージを受けた……」
続くんかい!




