11日 聞こえなーい
「……はぁー」
やっぱ、この神社落ち着くわぁ。
木々に囲まれて空も見えるし。セミも見えないところで地味に鳴いてるし、泣いてるし? 寺にはよくオバケ出てくるけど、神社ってどうなんやろなぁ。……あ、うちオバケやん。出てるわ。ちょくちょく出てるわこの寺。
昼下がりの本殿の屋根。爺ちゃんはー……あー、知らん。たぶん中居はるんちゃう?
「ニィー」
「あー? ……おー、猫。可愛ぇなぁ相変わらず」
顔のそばまで寄ってきてくれた黒猫ちゃんをなでなで。こんな可愛いのが妖怪とか。価値観変わるでー。アカンでー、妖怪は怖がられてなんぼやろー。
……と、必死に怖いの押さえながら呟いています。
あの、ちょい、黒猫ちゃん? 口からなんやしっぽ生えてません? まだビチビチ動いてるくないですか? あ、ちょ、口開かんといて、中身見せんといて。良かった、目ぇ逸らすん間に合った。見んですんだ。あぁ、あの動いてたしっぽ無くなってる。アレか。踊り食いか。ヤモリだかイモリだかトカゲだかの踊り食いか。美味いか? おぉ美味そやな、満足そうやな、よかったなぁ。
そう思っとく。
「ニィ」
「あ……」
行ってもーた。あー、あの野性的な猫の筋肉カッコいいです。あ、猫ちゃうんやった。もうどっちでもえぇわ。
空の色は絶好調で青。青、っていうか、薄青。ほんでさらに薄い雲。
そんな空の色と、昨日のリノの色は似てるような、やっぱ違うかも。リノの色は空っていうか水やった。ほんでな、ちょっと緑入っててん。青緑? 何か、賢そな色してた気がするような。
……うちにまとわりついてる奴の色、だいぶ白っぽいねんけど。ダイ爺の色もそんなもんやった。いつ色なんか変わるんやろ。
んぉ? 猫また戻ってきた。何かくわえてるけど何や……ろ…………セミぃ‼ あ、いや、正しくはセミの抜け殻やけど。
え、うちのそばに置いたってことは何? うちに食べろって? え? 励ましてくれてるのん? 別に落ち込んでるわけちゃうで、考え事してただけで。……それとも何? うちが考え事してるのを病気やとでも思たんか⁉
「ニィ」
「いやー、ちょーっとこれはー……食べれへんかなー、悪いけどー」
「・・、・・・・・・。・・・・・・・・・・」
喋った⁉
何て言うたんかぜんっぜん分かれへんかったけど。いやでも何か、言葉的な物喋ったで今‼
「自分喋れるん⁉」
「ニィ」
……あ、あれ? 喋らんこなった。
「なぁなぁ、日本語できる?」
まぁ、猫やったら無理か。いや、この子は猫ちゃうし。妖怪やし。何や首かしげてるで。考えてる感じやで。
「死」
「なんでそんなん喋るん⁉」
あれ? それとも期待するあまり何かの音聞き間違えた? 『シ』やモンな。一音やもんな。
「ほ、ほかは?」
「魂」
コンって何や? 色か?
「輪廻」
リンネって何? 女の子の名前?
「死神様」
シニガミサマ……あれ⁉ やっぱ最初の『シ』って『死』やったんちゃうん⁉
「変な言葉ばっか知ってんなー自分。うぉぅ、ごめんやって。悪かった」
手ぇ引っかかれた……。あれ、何か白い光の粒に一瞬色が付いたような。つかなかったような。
「じゃ、じゃあ、自分の名前! 名前は? あるん?」
「チーニル」
…………変わった名前やなぁ。
「チーニン? 人参の仲間か?」
「チーニル!」
「チーネル?」
「チーニル!」
「チーニユ?」
「殺す!」
ちょぉおおおい‼ めっちゃ流暢な口調で何言ってくれちゃってんの⁉ ごめんやん! ちょっと聞き間違えただけやん? ちょ、爪を瓦で研ぐな‼ 音が嫌や‼
とりあえずレイちゃん逃げます。……あんま落ち着けへんやったな。
足の下でシャクって音がしたのは、セミの抜け殻のせいではないと思わせて。




