6日 潜ってきます。
ふわー……。程良い光と、光に透ける葉っぱ。細い枝に立派な幹。あー、やっぱ森えぇなぁ。
あ、急に視界が開けた。神社やな……。あ、木の天井や。本殿やな……。
「あっ、レイ兄様流れて来たの」
「おぉ。レイ坊か。久しぶりだな」
「んぁ? おー、久しぶりー」
マリーちゃんと爺ちゃん。本殿の出口の方に固まってんのはなんでや。
「じゃあ、マリーさん行ってくるの!」
「気をつけてな」
「はーいなの!」
「いってらー」
どこ行くんか知らんけど。そういや、お家って見つかったんかな。もうここがお家でえぇよなあの子。だって出て行くときの言葉が『行って来ます』やもん。
「そいやさ、爺ちゃん」
「何だ? ……漂うのを止めなさい」
「ほーい」
いや、何か楽しくてな。ほい、地に足付いた。
「こないだ来てはったんって、誰なん? お芋見せれへん人なん?」
「……ああ、知っていたのか?」
「あん時、外でアケヤマさんと駄弁っててん」
「トシユキと?」
「焼き芋パーティ、うちも呼んでなー」
「もちろんだ。連絡がつくのならな」
「嫌な言い方やなぁ。ほんなら、こうしよ。焼き芋する時は焚火しといて。煙見えたら来るし」
「原始的な連絡手段だな」
本格的に原始的。ビバ狼煙。特別な道具のいらない連絡手段!
「だが焼き芋する時でなくても火は焚くぞ」
「うそん⁉」
「秋冬は寒いだろう」
「……もーえぇわ。もう焚火の煙見えたら焼き芋してなくても飛んでくるわうち。通い詰めるわ」
「ほっほ。賑やかになるな」
何ちょっと楽しみにしてんねん。ホンマお祖父ちゃんやなこの人。
「ほんで話戻すけど、こないだ来てはった人は焼き芋パーティ来はらへんの?」
あれ、何か戻りきれてない感が、あれ? 何や爺ちゃんも苦笑気味やし。しくったな、これはしくったな、うち。
「食い意地の張った奴だな」
頭ぽんぽんやめい。
「質問答えてーや」
「さぁ、どうだろうなぁ」
「呼んだげへんの?」
「味覚の無い方だからな、呼ぶのは嫌がらせのような物だ」
「ちょー待って、味覚無いん⁉ そんな人居るん⁉」
幽霊でも味覚はあるぞ⁉ 妖怪も動物も皆あるぞ⁉
「ああ。舌が無いから」
あ……そっか、それやったら味分からんわな。成程な。
「可哀そやなぁ」
「まあ……な。そうだな」
あれ? 舌無かったら喋れへんくない? お客とどうやって会話してたんやろ爺ちゃん。筆談?
「おぉ、そうだ。茶を入れるのを忘れていた。ちょっと待ってなさい」
「ありがとぉ」
……そのお客に茶ぁ出したんやろか。出したらまた味わえへんしな。嫌がらせみたいなことなるよなぁ……。って事は茶菓子も無しやな。
何も無いちゃぶ台を挟んで? 爺ちゃんと……えー、姿解らんけど爺ちゃんの友達は爺ちゃんってことにしとこ。折り畳み式の、何も上に置いてないちゃぶ台を挟んで。二人の爺ちゃんが筆談? あ、ちゃぶ台の上、紙とペンがあったわ。いや、何にしても変な光景やなおい。
「そら」
お、お帰り爺ちゃん。
「いただきますー」
今日の茶菓子はお団子か。えぇなぁお団子。めっちゃ砂糖ついてるのは突っ込まんとこ。
「うまうま」
「それはよかった」
お茶にお団子、静かな庭(というか境内)
「眠なりそうな情景やな」
「寝るのか?」
「いやいやいやいやまだ寝ぇへんよ! まだ世界一周旅行してへんのに!」
「世界一周旅行?」
「うちの夢や!」
「でかいな。いい事だ」
そんな悲しそうな眼で言わんといてくれる⁉ ちょ、こっちが悲しなってくるわ! ほんで何より恥ずかしい!
レイちゃん、ちょっと穴ならぬ床下入って来ます。御機嫌よー。
「ああ、レイ坊、何故潜る。褒めただろう?」
恥ずいんですー。御機嫌よー。




