5日 お酒は二十歳になってから……
「どもー」
「あら、えーっと……レイちゃん?」
「おん、レイちゃんやでー」
「久しぶりねー」
どもです、レイです。美味しそうな匂いがしたので来てみたら、案の定コウチ家の真ん前のアパートの一室で姉ちゃんがソーダバーを食べていました。
……嘘やで?
流石にソーダバーの臭いとか嗅ぎ分けられへんからな、うち。姉ちゃんは台所で何か作っている模様です。あ、ニンジン皮付きのまま切ってはる。
「何作ってんの?」
「お豆腐カレー。お兄ちゃんが気になるって言ってたの」
「ほえー。お兄ちゃん豆腐マニア?」
「……ないない」
間、あったで。
「あの子が持って来てくれたのよ。だから」
うぉお、豆腐小僧居った‼ 台所の真ん前の壁から生えたせいで全然気づかんかった‼
「あ、お兄ちゃんも居はるー……」
あれ、なんで豆腐小僧とお兄ちゃんの間に瓢箪? え、なんで、理科? 理科で育てた奴? にしちゃデカいけど。ほんで、何か茶色いけど。ってか、瓢箪の水筒⁉
「すっご! えっ、何コレ、どしたん。っていうか、ホンマにあるんや、瓢箪の水筒って‼」
「無いと思ってたのかー? あ、でも中身飲むなよ。酒だからな」
嬉しそうやな。好きなんか酒。
「飲まへん、っちゅーか飲めへんわ! えー、でもちょっとツルツルさせてぇな」
「ツルツルってなんだよ。犬猫のもふもふか? アレの瓢箪バージョン?」
「そうそう。ちょっとやらせてーな」
「壊すなよ」
「うちどんだけ馬鹿力やねん‼」
そーっと、そーっと。
つるっ、つるっ
「うわー、えぇなぁこれ。てか、めっちゃテカってるやん。どしたんコレ」
「父ちゃんが作ったんだ! うちにいっぱいあるんだよ。酒も水も全部こんなのに入ってんだ」
「へぇー。うちも欲しいなぁ」
「いつ使うんだよ」
「今で……」
「違うだろ‼ コレ今使うとか、酒はどうなるんだ!」
そっちかい!
「料理酒にー」
「もったいねぇことすんな! 貰いモンを‼」
「冗談よ」
いや、姉ちゃん軽く目がマジやったで。本気と書いて何とやらやったで。
「お兄ちゃん酒好きなん?」
「……レイ、今からお兄さんがこの酒のありがたみについてよーく語ってやるからそこに正座しろ」
「いや、遠慮しとくわぁ」
「あん? 遠慮すんなって。特別授業だ」
「お兄ちゃん教師にでもなるつもりなん?」
「いや、塾の講師のバイト」
「……あれ?」
前、朝帰りになってへんかったっけ。
「ああ……夜間のコンビニのバイトもしてたけどこないだ辞めた」
マジか。さくっと言ったな。
「眠い時は寝てぇじゃん。つーか人間は夜寝る生きモンだ。医者は除外する」
ただのマイペースか。ほんで、お医者さん除外されてまうんやな。人間ちゃうんやな。夜居らんかったら困ることもあるもんな。それでやんな。
「話を戻して‼ この酒はなぁ……」
「一言で言うと‼」
長々と特別授業とかされてたまるか!
「密造酒だ」
「マジかぁあああああ‼」
「な、ありがたみあるだろ」
「どんなありがたみやの⁉ 法に触れることしてくれてありがとうって⁉」
「大丈夫大丈夫、コイツは法に触れねぇよ。だって警察、オバケ捕まえらんねぇじゃん」
「いや関係無くない? お兄ちゃん持ってはったら捕まるくない?」
「馬鹿。捕まる前に飲むんだよ」
何そのアホな考え方。
「っつーかそうそうバレるモンでもねぇし」
「あらー、警察呼ぼうか?」
「テメ、自分飲んでねぇからって」
「未成年だもーん。飲めないだけだもーん」
「よし、飲ませてやるからサツには黙ってろ」
すんませーん、ここに法律破ってる人がいまーす。
「わーい」
「馬鹿、本当に飲ますわけねぇだろ」
「えー」
「タッくん、俺は? 俺は? 俺269歳だよ」
「よし、お前はおっけー」
「レイちゃん、あの人たち殴っていいのよ?」
何可愛い笑顔浮かべて怖い事さらっと言ってはるんですかお姉さん。
ほんで、自分の手を汚す気は皆無ですかお姉さん。




