27日 ちびっ子妖怪、ダブル
……綺麗やなぁ……
薄青、山吹、若葉色。小さな小さな光の粒が、曇った空に吸い込まれていく様子。小学校のてっぺんから眺めた、隣街の様子。煌々と明かりの灯った都市から昇って行く光の粒って、すごい不思議な感じやわぁ。
ルビー、ホワイト、……えー、あれは何色って言うんやろ。
「おにーちゃん、何してるの?」
「あー? あっちの方見てんねん。綺麗やなぁって」
「おにーちゃんもいつかなれるよ」
「いや、自分がなったら見れへんやんけ。……ってか、おにーちゃん違う!」
怒鳴ったらびっくりされた。いや、突然隣に立たれたうちも十分びっくりしたからな! 相子やろ、これは!
「あれ? ……自分、どっかで会うたこと無いか?」
「えっ? えっ? うわぁああん‼」
なんで泣くん!? なんで逃げるん!? ちょー待て、納得いかんって‼
逃げたちびっ子を追いかけて行って、あれ、ちょっと待って、こっちコウチ家の方やん? かと思ったり思わなかったりしてたら、ちびっ子はコウチ家の前のアパートに。……あ、幽霊の見える兄妹の部屋やん。名前まだ知らん。帰りにでも表札見て行こかな。
「ねぇねーッ‼ 怖い人が居るよぅ!」
「ねぇねは居ねぇよ。ジュジュか? 何、どうした。怖い人ってアレか?」
「アレってなんやねん!」
「にぃに、助けて‼」
パソコンで何かやってたお兄ちゃんが、ちびっ子の方を見ないまま頭を押さえて止めた。そこでやっとちびっ子……あ、ジュジュって名前なんかな? を見て、泣き顔にドン引きした。酷いなアンタ。
「必至だなおい。顔洗ってこい」
「う、ひっぐ……はぁぃ」
「で、ジュジュ怖がらせたのはお前か?」
「怖がらせてないって! どっかで会うたこと無い? って聞いただけやもん!」
「……ナンパ?」
「違うわっ!」
「って言った俺も、何かお前見た事ある気がする。ここ来たことある?」
「あるで、二回くらい」
「あ。水中じゃねぇ奴!」
「どんな覚え方!?」
姉ちゃん、やっぱお兄ちゃんボケやろ。
「ん、お帰りジュジュ」
しかもスルーか。……あれ?
「あっ! そや、思い出した! 前、お兄ちゃんの側で寝落ちとった子やん!」
「いや知らねぇよ。そんな奴色々居るって」
「マジでか」
「豆腐小僧とか、雨降り小僧とか、一つ目小僧とか、座敷童とか……」
「何なん、そのちびっ子シリーズ」
しょうみ言うていい? うらやましいわ! ちびっ子とか! うち妹とか弟とか従弟とかほしかってん! 年下が!
「にぃに、怖い人何とかして」
「大丈夫だって、怖くねぇよ」
……マリーちゃんしかりこの子しかり、なんで皆怖がんねん。おかしいやろ。
「タッくん、今日お味噌汁の予定あるかーい? 豆腐っ、豆腐っ! 使って豆腐!」
あ、豆腐小僧や。一発で分かるなコイツ。お盆で豆腐が揺れています。タッくんって、このお兄ちゃんの事か?
「あっ、……あのー……お兄ちゃん、豆腐好き?」
豆腐勧められた! 恐る恐るやけども。
「大好きやでー! 冷奴好きやってん!」
「おっさんか」
黙っとけお兄ちゃん。
「えぇやん! 美味いモンは美味いねん!」
「わかってるぅ! もう、なんならこのまま食べるかい?」
「ホンマに!? えぇのん!? うち幽霊やから、飲み込めへんよ? 栄養にならんよ?」
「味は?」
「分かるけど」
「だったら問題ねぇ! 潰れた豆腐で別の料理作りゃいいのさ、なぁタッくん?」
「あー、そうだな。何か美味そうな豆腐レシピ見つけた」
胡坐の中にジュジュ座らせてやって、パソコンで何やってんのやろ思ったらレシピ探してたんかい。
「ってわけで、召し上がれ!」
「おぉ、ありがとぉ!」
美味し。手作り? 美味いとしか言いようが無いです。豆腐ボキャブラリー少なくてごめんな。
「で、タッくん、うまそうな豆腐って!?」
「美味そうな豆腐レシピな。豆腐アイス」
季節ピッタリやな。作ったらちょうだーい、とか言うたりして。
「へーえ。作ったらおくれよ。ジュジュも食べたいよなぁ?」
「うんっ!」
「おう、今度な……あぁ、レイだっけ? 器要るか?」
「んむんむ(要る要る)」
「いや何言ってんのかわかんねぇよ。頷くなり首振るなり動け」
要ります。
「おら」
後ろ向いて、味わってた物をぐちゃ。美味しかったー。
「幽霊って不便だね」
「そうそう、それでもこうして生きてんだから怖がってやんなよ、ジュジュ」
「いや、死んでるけどな」
「幽霊として生きてる。だから生きてるって事になんの、俺の中では」
ふぅん。あれ、じゃあお兄ちゃんの中では死ぬってどういう状態なんやろ。
「にぃに、『まめちち』ってある?」
「豆乳か? 買わなきゃねぇなぁ。ねぇねに買って来てもらうか」
「ねぇねいつ帰ってくる?」
「さあ、わかんね。まあメールしときゃ気付くだろ」
「えーっ、早く作りたい‼」
「ヒーちゃんびっくりさせてやろうよ! なっ、タッくん! 買いに行こう!」
「俺もう風呂入ったんだよ! また出るとか嫌だぞ」
あ……小さい子、やっぱ無理かも……
「出来たらちょうだいな!」
と言って、レイちゃんはすったか去りました。ファイトタッくんお兄ちゃん。




