25日 ガンバレいろいろ、これ何語
「なーテツ、お前わかった? 古典」
「おう、初めてちゃんとやってきたぜ!」
威張るとこ違う。
トーカも通う高校に来てみました。うん、相変わらず。
今はまだ授業と授業の間のお休みやから、皆は勝手におしゃべりとかしてはります。
テツってのはあの子やな、前に保険の授業で入ってきたときにチビ扱いされてた子。170㎝まであと6㎝の子。クラスの位置づけはお調子者と見た。いや、事実か。今更か。
「今までで初めてな、こう、電子辞書を机の横に置いてだな……」
「あ、俺席戻る」
チャイム鳴った。
……ってか、えぇなー電子辞書。ちょっと憧れやねんけど。なんかパソコンみたいやん。ってか、画面綺麗やん。一瞬で調べたいもん出てくるやん。軽いやん。
「授業始めますよー。席着いてないの誰ですかー」
「俺でーす」
「早く席着きなさい」
「へい」
古文の先生はなんか可愛かった。でもあんま若くもなかった。……うん、アレやな、小学生のお母さんって感じ? いや、むしろ小学校の先生。これやな、雰囲気は。
「宿題で現代語訳して来るように言いましたよね、確認からいきますよ」
「えっ、そんなんあったっけ?」
「俺やったぞ、初めて!」
「黙ってろテツー!」
「大丈夫だケン、俺もやってない」
「俺もー」
「俺もー!」
「えー、ちょっと、もー」
ガンバレ先生。そして何やの、この男子の連帯感。
「俺やったー」
「じゃあマチダくんから当てましょうか」
「え」
やってへんな。やっとらんな、マチダくん。
『中納言参り給ひて、御扇奉らせ給ふに、「隆家こそいみじき骨は得て侍れ……」』
その辺の人の教科書覗き込んだら、こんなことが書いてあった。えー、何語?
先生は黒板に『中納言参り給ひて』ってかいて、『参り』『給ひて』にそれぞれ違う色の線を引く。あ、まだ当てはらへんのやな。『参り』が謙譲語で、『給ひて』が尊敬語なんやて。えーと?
「えーっと、今日は25日? 25番は……ニシナガくん、謙譲語って何でしたか」
「マチダじゃねぇのかよ!」
「マチダくんは現代語訳する時に当てます」
ガンバレマチダくん。今からやって間に合うか?
「えー、謙譲語? えー……あれ、何か、自分下げてー、うん。なんか、そんなん」
先生が別の人に当てたら、『自分をへりくだっていう言葉』やって。へりくだるって何や。とりあえず、自分を低くして相手敬うヤツやんね?
「いいですかー。あ、この中納言っていう人が主語っていうのはわかるよね? で、これも分かってると思うけど、この中納言っていう人と、セリフの中の隆家って人は同じ人ですからね、間違えないように」
『え、嘘っ⁉』
「えぇー……」
マジかお前ら。
いや、うちも分かってなかったけどな!
「『参り』っていうのは、『行く』の謙譲語ですね。この隆家くんは、中宮様の弟です」
くん付けた……。
「隆家くんが、中宮様のところに「お姉ちゃんお姉ちゃん」って来るわけですね」
めっちゃほのぼのやな。
「えっ、中宮様、女⁉」
「えぇー……。中宮は、天皇の妻ですよ。男はなれません」
なってたらびっくりやな。ってか妻って言わんな。
「中宮定子様に仕えているのが、作者の清少納言です」
「それは聞いた」
うち初耳やねんけど。定子って誰。
「『参り』は謙譲語だから中宮様に敬意を表して、で、へりくだらせてしまった中納言の名誉を『給ひて』という尊敬語を使って挽回させるわけですね。これはどっちも作者から見た話ですよ」
先生ー、レイちゃんわかりませーん。
もううちは、なんで『給ひて』って書いてあるのに『たまいて』って呼んでるのかからわからんからな! なんでなん? え? アレ? うちがおかしいの?
「『給ひて』は尊敬の補助動詞ですよ? 『お与えになる』なんてボケた訳した人居ませんね?」
先生、何や言葉に棘出てきたくない? なんて? 『ボケ』って言うた?
「はい、ここまで来ましたよ。マチダくん、訳は?」
「えーと、中納言が、参り……給うて」
「訳になってませんよ」
中納言の後に『が』入れて『給ひて』を『給うて』にしただけやん! なんっも意味わかれへん!
「あっ、中納言が! 参り、なさって!」
「……そうですね。参上なさってーでもいいですよ」
よかったな、マチダくん。無事に済んだで。
「あ……そうそう、それからこの『御扇』と『いみじき骨』は別物ですからね」
『うっそぉ!』
あれ、なんか女子も混ざってきた。
「ま、まー俺ら理数系だし!」
「関係ありません。勉強はしなさいよ?」
先生、レイちゃんちょっと逃げてきます。
……これ、ダイ爺はわかるんやろか……
行ってみました。わからはりませんでした、まる




