24日 あだ名決め爺バスケ
「ダーイ……先輩?」
体育館の二階で、バスケットボール部だの卓球部だのを見ながら(多分見てるのはバスケ部だけ)、バスケットボールを指先で回す男の人が一人。
「あぁん? あんだよ、レイ?」
ボールが宙に浮いてクルクル回ってるように見える筈なんやけどなあ、下からは。
「いや、ダイ先輩って、呼びにくいなぁ」
「それ言うためにわざわざ来たワケ?」
いや、違うけども。
「やー、ちょっと昨日悪い事したかなぁ思て。いや、別にうちら悪くないとは思うねんけどな?」
「どっちだよ」
「いや……ちょーっとそこ通ったらな? なんや落ち込んでるみたいやったからー、あ、これはマズイなーって」
「落ち込んでる? 誰が? 俺が?」
「ちゃうのん?」
「はっ! っなわけねぇだろ? このダイ様がよう」
「あそ。カエー、頑張れ~!」
あ、ダイ先輩手すりから一回に落ちた。ずっこけ方派手すぎんで。
「何? ホントに通りがかっただけ? っつか、知り合い?」
戻って来るの早いな自分。
「あれ? カエの事知ってんの?」
「あの子だろ? 生徒組の小さい奴」
ちなみに、今女子バスケ部は先生チームと生徒チームでゲームをしています。カエは生徒組。まさにダイ先輩が指した通りの子。
「え、何、なんで知ってんの。幽霊の身体利用してストーカーですか、ストッパーですか、スタッカートですか」
「違うわっ! 名前で呼び合ってんだからわかるだろ!」
あれ、突っ込んでほしい所の突っ込みが来ない……
「あと、なんでどんどん離れていくんだ! 何だよ、スタッカートって」
「ほら、何か、音符の下とか上とかに付いてる点。歯切れよく演奏するってやつ」
「へぇー」
学ぶなし。うち別に音楽得意ちゃうねんぞ。意味違くて恥かいても知らんからな。
……なんか、スタッカートって、これやろ。タッ、タッ、タッ、タッ、って感じのヤツ。アカンな。説明にならんな。無理やわ。
お、先生がダンクしはった。かぁっけぇ!
また始めの位置に戻って、お、また先生チームがボール取った! 強いな先生チーム。体の大きな先生がボールを持って、ゴールのほうも見んと後ろへポイッ、すごっ! え、ホンマに入るんかいな。
「あ」
「リバンッ!」
入らんならやるなっ!
お、生徒チームも結構負けてへんでぇ……!
「ボール取ったりぃぉっとぉ!?」
隙をついてボールを取ろうとしたら、あっさり避けられた。うちも手すりに座ってたからうっかり落っこち……いや、飛べるやん、幽霊。落っこちかけて、戻って来た。
「昨日と同じに行くと思うなよ!」
「てぁっ」
「はいはい、キック駄目な」
「とぉ」
「パンチも駄目」
「どらぁ!」
「え、ちょっ、痛っ! 頭突きっておま……怖い奴ー」
でやぁ。勝ったで!
「うわっ! ボール降ってきた⁉」
「え? どこから……?」
……あらららら。
「ボール落としちゃったん?」
「取るんじゃなかったのかよ! ……あーあ、どうしよ。俺のマイボール……」
「あんなダイの兄ちゃん、マイってな、『俺の』って意味やねんで」
「るっせーわ! 知ってるから! つか、ダイの兄ちゃんって何だよ」
「いや、やっぱな、ダイ先輩って呼びにくいねん。せやから試行錯誤してんの」
「タメ語の時点でどうかと思うけどなっ」
あれ? ダイ兄ちゃん一階に下りてどうしはんのやろ。
「おーい、そのボール俺のなんだけどー。返してー」
……ダイくんってアホなん? 普通に話しかけてどうすんの?
「返せよー」
っと思ったら手からボール払った! てんってんっと転がっていくボールを追いかけて、超低空ドリブル。おぉおお! 実はすごいなダイちゃん!
「レイ! おらパス」
「おぉっふ」
すっげぇ、ピッタリうちの取りやすいところ来た! 実はダイ爺すごい人やったんちゃうん⁉ それともこれが普通なんか?
「あれー? どこ行ったんだろー」
「え、さっきのボール無いの? うっそー」
しかも人間に気付かれることなく⁉ これはすごいわ!
「ダイ介マジ尊敬やで! すごいな!」
「ちょっと待て、なんでダイスケに改名してくれちゃってんの?」
「せやから、呼びやすいように試行錯誤してんねん」
「どうやったらそんなところにたどり着くんだよ」
「えーっとな、ダイの兄ちゃん、ダイ兄ちゃん、ダイちゃん、ダイ爺で、ダイ介」
「わーぉいろいろ踏んでるんだな楽しんでるだけだろそれ、あん?」
「じゃあ、どれがいい? ダイダイは」
「そうだなぁ……俺兄貴しか居なかったから兄ちゃんとか憧れるけど……いや、ここはあえてダイ爺で!」
「マジか‼ え、うそぉん⁉」
「あ、ただし爺じゃなくて爺な」
どっちでもええやろが! ってか、うち何人おじいちゃん居んねん! 六、七人目やぞ!
「じゃー、部活終わったみたいだし、遊ぶかい、孫」
「誰が孫や!」
笑いながら頭ぽんぽんすんなっ!




