23日 今日は厄日
『体育館行ってみんか?』
『七不思議探ししててん』
『なんか、勝手に跳ねるボールってあるやん。探しにいこ』
はい、居ませんでしたよ。
ひょっとしたら夜中にしか居はらへんのかなー、とか思って、夜中まで待ちましたよ。吹部さんの干渉とか、リノの小さな演奏会とかな、そんなんして待ってましたよ。あとついでに楽器とか教えてもらってたらな、余裕で十二時越えられましたよ。
そこから今日は始まります。
「やっぱ誰も居らんなぁ」
「そうみたい……あれ?」
「どした?」
「今、何か上から大きいのが落ちてきたような……気のせい?」
「…………いや、うちも視界の端に何か映った気ぃする」
何? でもボールとか別に跳ねてないで? 落っこちてきたモンも見当たらんで?
「ぎゃぁあああああああ‼」
「うぉわっ!」
地面から男の人飛び出て来た!
「はー、はー、あー、びっくりした……怖かったー」
「びっくりしたんはこっちや! 怖かったんもこっちや!」
「あん? 誰だオメ」
イケイケ系な男子。白いTシャツにバスケ部っぽい半ズボン。でも、昼間見たのとはちょっと違うな? そういや、リノの制服もここのちゃうし。
「私はリノ。こっちはレイくん」
「お前男なの?」
「女やで」
「だよな、びっくりした。なんで学ランとか着てんの?」
びっくりされた! 男って言ってびっくりされた! マジかこの人! 何か……逆にへこむなぁ。
「男役しててん。劇で」
「ふーん。照明か何か落っこちでもしたか? なんか漫画にあったよなー。えー、リノ? は?」
「私……? あんまり覚えてない」
「マジかよ。俺めちゃくちゃ覚えてるぞ。もう、もう、頭ん中で再現できるレベルだぞ。割れたガラスがさぁ……」
「ちょっ! グロいの無理やって!」
リノも引いてるぞこれ!
「でもまー、幽霊って悪いもんじゃねぇな。行動範囲狭いのは不便だけど」
体育館の二階に上がって、バスケットボールを落としてくる。……隠してたんか?
「いやー、あと、なんでもすり抜けられるってのも怖ぇよな。びっくりしたわ。天井で横になってたはずが? 気ぃ抜いたらマントルぶち抜いてるからな。あぁああアレはビビった。まだ心臓バクバク言ってんぞ」
「……いつから上に居たの?」
「あー? 今日の昼過ぎかなぁ。時間とか見てねぇわ」
そらな。時間とか別に関係ないもんな。
「レイ、リノ、お前らバスケとかする?」
「おん、普通レベルにならな。あ、いや、バスケ部の普通とちゃうからな?」
「わかるわ。リノは?」
「私は……バスケわからない」
「このダイ様が教えてやんよ。やろーぜ……引くなコラ」
いや、つい。自分に様とかつけてたから。
「ダイって言うんやね、名前」
「おう。ダイ先輩でいいぞ。俺ぁ高校生だからなっ!」
お、スリーポイント決まった。
「高校生かぁ……その割にゃガキっぽいなぁ」
リノに振ったら即、うなずかれた。
あ、でもこないだの、トーカの後輩Aと後輩Kも高校生やんね。ってことは、あ、別に普通なんか。
「レイ、リノ、取ってみな」
ダムダムとボールをつきながら駆けだしたダイ、先輩? おしゃ、ボール取ったらえぇんやな?
「うらぁ!」
くらえ! レイちゃんキック!
「痛ぁっ⁉ おまっ、蹴るのは無しだろ! バスケだぞ⁉」
「取ったりぃ!」
「取ったりぃ! じゃねぇだろぉ!」
なんやねん『取ってみな』とかめっちゃキメ顔で言ったくせに。
「リノー、こんな風にやんねんでー」
コートの外に居るリノに手を振ってみたら、口元に手を当ててお返事が。
「わかったー」
「わかるな! 反則だからなこれ!」
「……ダイ先輩、結構突っ込んでくんなぁ」
「お前バスケできるんじゃねぇのかよ……」
「あ、今のバスケやったん? 何や普通のボール遊びかと思った」
「っなわけねぇだろ、このタイミングで⁉」
うーん、せやなぁ。そうかも。
「まぁわざとやねんけど」
「殴るぞガキ」
「自分もガキやん。そんな変わらんやん」
ダイ先輩、カチンと来たようです。血管浮いてます。わー、不良の顔やー。
「あぁん? やんのかコノ」
「おぉ、やったろやんけ……痛だだだだだだ!」
頭グリグリとか! お前絶対馬鹿にしてるやろ! 痛い痛い痛だだだだ!
「レイくん、大丈夫?」
「死んだわー。無いわーこの人ー。いったー……」
「もうお前死んでるだろ」
あ、せやった。
「てか、殴ってへんやん」
「手加減してやってんだよ、ありがたく思え」
「へーへー、ありがとーございますー」
「感謝の念ゼロか」
「痛い思いしてなんで礼いわなあかんねん!」
「レイくん、行きましょ。かまうことないわ」
「おん」
あー、もー。
「お前友達できんくなっても知らんからな! 残念な人生送れ!」
「いや、俺も死んでるっつの」
あ。
……今日は厄日やな。




