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21日 いん・しゅらいん

 パチン、パチン……ぬ?

「王手だ」

「うっ」

「レイ坊、弱いな」

「るっさいわ!」

 ちゃぶ台返ししてえぇかな? えぇよな!? だってイラッと来てんもん! がっしゃーんってやりたいもん!

「まあまあ落ち着け」

「うがぁああああ!」

 がっしゃーん! あれ? できひんかった。がっしゃーんて言うただけやん。口で。

「えいっ、やっ」

 あれぇ? ちゃぶ台持ちあがらへん。

「無駄だぞ。床に接着剤でしっかりとくっつけてある」

「アホちゃう⁉ ここ本殿やぞ!」

「ああ、私の家だ」

「あ、そっか……ってそれでも普通床とちゃぶ台くっつけるとかせんやろ! お賽銭何に使てんねん!」

「菓子と茶、生活雑貨に本に……」

「それ神に必要か⁉」

「あと、マリーの服か」

 お、おぉ……うん、それは、まぁ、えぇと思うけどやな。マリーちゃんかて女の子やし。

「そういやぁ、マリーちゃんは?」

「さぁて。勝ちに行くと言っておったが、誰と勝負するんだか」

「エイトか……何の勝負仕掛けに行ったん?」

「将棋」

「マジか」

「うむ。エイトというのはあの子か? あの、三姉弟の一番下……」

「そうそう。コウチ家の」

「初詣では毎回メロンが食べたいと祈って行く」

「いや、何祈ってんのかまでは知らんけど」

 ……ってか、この間メロン食べてたで。たまに朝ごはんの時出てるで、メロン。よっぽど好きなんやな。いや、単純に初詣の季節にメロンが無いだけか?

「ついでに、焼き芋が美味いと自慢して行く……くっ」

 いや、『くっ』ちゃうやろ。菓子買えるんやったら一緒に芋も買うて来いよ。

「車を店舗にしているから姿が見えないと売ってもらえない、あの美味いと名高い……」

「どんな欲しいねん! 焼き芋とかそんな変わらんやろ!」

「いや、芋の良し悪しを馬鹿にしちゃいけない」

「真剣な瞳でなんで芋の話やねん……」

 しかも神様やで。真っ白い長髪を後ろで束ねて、さらに初老の爺ちゃんやで? 黒い目ぇがキッと細まって、喋ってることが芋の話て。威厳も何もないな。

 あ、前からか。

「どこでも育つぞ。そう、例えこの床下であろうとも……たぶん」

「育ててんのかい! しかも『たぶん』か!」

「いや、床下では育てていない。拝殿の裏だ。ほら、そこ」

 ……芋の苗ー! 葉っぱー! 出てるー!

「いよいよアホちゃう⁉ 何が悲しくて神社で芋育てなあかんねん!」

「神主に言ったら植えてくれた」

「しかも自分で植えたんとちゃうんかい!」

「優しいだろう。若いのにいい子だ」

 神主さん……本読むときに目ぇ瞑る人な……

「そういや、あの人名前何て言うん?」

「姓はアケヤマ、名はトシユキです。こんにちは」

「あぁいっ! こんにちはぁ!」

 背後に立つな神主さん! 怖いわ!

「前からちょいちょいいらしてましたが、お名前は?」

「ハヤシ レイですー。初め、初め? まして」

「初めまして、ハヤシ君」

「女ですー……」

 ポク、ポク、ポク、チーン……

「幽霊見えはるんですねぇ」

「え、えぇ、代々……体質ですかね」

「レイ坊……お前、敬語使えたのか……」

「何衝撃受けとんねん! 使えるわ!」

 アケヤマさん、何笑てんのん?

「トシユキも来たことだし、菓子を持ってこようか。待ってなさい」

「爺ちゃん、奢るの好きやなぁ」

「昔からね……そして、毎回甘いものなんですよね」

「あ、思てた! その辺で買ってくるのに、いっつもめっちゃ甘いねん!」

「せんべいとかポテチとか、しょっぱいものは一度も見たことないですね」

「甘さ控えめ、っていうやつもないねん。実は徹底してはるよな」

「大抵、お茶とすごくバランスが良いんですよねー」

 なんで爺ちゃんのお菓子のチョイスでこんな盛り上がるんやろ。すごいなうちら。

 お、爺ちゃん戻って来……た……あの、お盆からなんか出てますけど。

「今回はサトウキビだ」

 なんか、凄いの来た。

「マリーさん、今、帰ったの」

「おぉ、お帰り」

「あ、レイ兄様こんにちはなの」

「ほいほい、こんにちはぁ」

「神様! トシユキさん! マリーさん、エートくんに勝ったの! こっぺぱんにしたの!」

 こてんぱん、な。コッペパンとか懐かしいなおい。給食か。

「よしよし。マリーの分も持ってくるから待っておいで」

 爺ちゃんと、神主さんと、マリーちゃんと、うちとで、サトウキビかじかじ。

 ……謎いわッ!

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