兄より、化物へ。
こんばんは、ジン。
愛称がジンだったことは覚えているが、本名は覚えていないからジンと呼ばせてもらう。
お前が俺を殺して何年経つ? 多分十五、六年くらいだな。……まあ、自覚して、本当に幽霊になったところから数えればほんの四、五年程度の事か。それにしても、お前みたいな奴に殺されたと思うと、それも、体乗っ取られて殺されたと思うと、どうしても自嘲の笑いしか出てこない。
俺がこの町に来たのはつい最近の事だ。ヒアの声に誘われて、気が付いたら来ていた。ヒアのあの歌は人魚の歌か? 便利だな。ああ、話が逸れた。
この町に来た時、お前が幽霊を成仏から守っている(いや、成仏を妨げる、の方が正しいか)のを見ておどろいたよ。お前が仕事にした趣味は幽霊を狩ることだろう? 最後に会ったのはずいぶん前だが、それでも驚くには十分すぎる光景だった。驚いた次に、何故か微笑ましくすらなったよ。成長したのかと思った。
馬鹿だな。ああ、我ながらなんてお目出度い思考回路なんだろう。すっかりお前のことを忘れ去ってたということだ。
お前がどこでどう間違えてどんな成長をしたとしても、幽霊の成仏を妨げるなんてこと、あるはずがなかったな。
そうだ。幽霊なんて、本来人間と共に居ていいモンじゃない。
とっとと今世の記憶を消して、来世へ向かうべきだ。
悔しいが、その職はお前に合ってるよ。幽霊を冥界へ還すその職。スリルがほしい、破壊衝動に身を任せたいお前にとって、幽霊を破壊することも方法の一つとなるこの職は、パズルのピースがはまるのと同じくらい、見事に合っている。なんせ、お前が幽霊を殺して満足している間は、お前によって死者の増えることは無いんだからな。
ハロウィンの夜、弾けたな。
突然隣に立って居た少女を送った時は、慣れない仕事のせいで気が狂ったのかと思った。
そうじゃなかったんだな。
幽霊集めるだけ集めて、最後にそれを潰すためだったのか。
はっきり言うぞ。
最低だ。
幽霊は基本、安心を望む。それをお前は偽物の安心を与えておきながら、裏切ったんだ。
ジン、お前の仕事は、ただ死から冥界へたどり着くまでの道の円滑油だろう? 余計なことはしないほうが賢明だ。
おとなしく、死神様とやらの真似をしておけよ。それが、一番、自然だ




