2日 抜ける
「…………なぁ、おにーさん」
「……ん?」
「今日の夜は、暗いんすね」
「…………ああ。明日は新月だったな」
ハロウィンと、昨日と、今日と。ああ、もう今日も終わるんか。うち、まだ居る。……幽霊、うち以外、おにーさんしか見ぃひん。
「なぁ、おにーさん何してはんのですか?」
「……は?」
「なんでうちも連れて来てくれてはんの。隠れんの、一人の方が楽やないすか」
簡単に見つからへんしさ。
……シルとかさ、その兄弟とかさ、その仲間とかさ。めっちゃ目ぇ効くねんで。猫の頭と犬の体持ってる黒い生物とか、もう、眼光らせてのそのそ歩きまわってるからな。うちの近くに隠れ取った人が誰かやられとったからな。悲鳴聞こえた。悲鳴聞こえた。うん、悲鳴しか聞いてないけども。
「……ああ、後悔してる」
何やねん。後悔してんのかい! ほんならとっとと一人で逃げりゃえぇもんを。アホや。絶対アホやコイツ。
「やってることに矛盾が多過ぎるな。何やってんだ、俺」
「知らんがな」
あ、タメ語なってもた。えぇわ。もう。
山ん中で木も多いから、おにーさんの顔あんま見えへんのやけど……。うん、やっぱ見えへんわ。どんな表情してんのかも全然分かれへん。
「なぁ、おにーさん。あいつ等、何なんか知ってる?」
「……ああ、知ってる」
「おにーさん、あいつ等の仲間なん?」
「違う」
……ふーん。ホンマかいな。でも、違ったらあいつ等の事知ってるとか言わんよな。
「あいつ等何なん?」
「幽霊」
「嘘やん」
「元、幽霊」
「や、嘘やん?」
「……茶髪くせっ毛兄妹とその親類以外は、元幽霊」
「だいぶ限定されてきたな。えっと……? それ、誰の事?」
「ジャイズン、シヴィル、ヒルデガート、キーヴァ、……今居るのはコレ、だけか」
「……あの、猫と犬の合体生物みたいなやつも?」
「……リボルか。ああ、それも元幽霊。俺が言った奴以外、全部元々は幽霊」
「嘘やん!」
「わっ!」
「しっ」
っと。ごめん、ホンマごめん。そうやん、アイツら耳えぇねん。やばいやばいやばいやばい。今、なんか『わっ』て声が。
「……リオ、か」
「あれ? ……どうしたの、こんな所に座り込んで」
「いや、別に」
あ。いつかの、魔法の使い方が無駄な感じするおっちゃん、もといお兄さん。あれ? この人もっかい別な会い方せんかったっけ、何かもう、あかん、頭がおかしい。記憶ごちゃごちゃやし。あれや、絶対、怖さで頭壊れた。頭良うなる方に壊れてたらえぇなーとか思うけどきっと無理やな、うん。
「その子は?」
「幽霊。……何か、いつの間にか拾ってた」
『どういうこと⁉』
ちょ、見事なまでにおっちゃんとハモったやん! めっちゃ綺麗な音奏でてもうたやん! 拾ったって何⁉ うちはネコか! 犬か!
「……そか、うん、対応しようか? 本業だしね。……あれ、君なんでここ居るの?」
「……さあ。忘れた。帰るわ」
え、ちょ、おにーさん⁉ え、どうしたん急に⁉
「哀しいね、幽霊って。……えっと、ちょっと待ってねー。君、ハヤシレイちゃんだよね。うん、享年14? 出身……京都って、ああ、はいはいあの、ザ・和! な所? はいはい……」
どういうこと、え、どういうこと。ザ・和! って何。何か続けてペラペラ言うてるけどしょうみよう聞こえへん。
「未練とか、ある?」
「え、何の?」
「やり残したこととか、んー、やり残したこととか……」
やり残したことしかないやんけ。
「……さあ。忘れたかも」
なんか、やりたいことはあった。何か、前はやりたいことあったはずやねんけど。
「そう。よくあることだよ。こっちおいで。冥界に行かなきゃ、生まれ変われないから」
「……ん。冥界って、どこ」
「さあ……。俺も行ったこと無いからわかんないな」
ふーん。……で、うちは手ぇ引っ張られてるけど、これどこに向かって歩いてんの。




