29日 アンラッキーブルー
「おう、コトネ、どしたん?」
「……別に」
あれっ、あのドイツかどっかのお兄さんお姉さん居らんやん。最近ずっと一緒やったのに。……あ、落ち込んでる原因これか、ひょっとして。
「ヤンちゃんも居るやん。どしてんな」
「……会えない……」
「えーっと、誰に?」
「ば……ば……バグ? さん」
うん、ちょっと相手の名前忘れかけてたな。あるある。で、誰やったっけそれ。
「バグさん、だっけ……写真家の……ほら……小さいアパートに住んでる兄妹が、写真撮ってもらえるように頼んでた……というか、頼もうとしてた……人」
「あ、あの名前は壊れてる人」
「ちょっ、ちょっと、もしこのへんに居たら失礼だよ」
「そんな落ち込むまで探さしといて、近くに居ましたオチは無いやろ」
「と思わせてー近くに居たりしてぇ‼」
「誰やおっさん!」
「えぇえ⁉」
建物の陰から出てくんな! 怪しさ百点満点の万点越えて百二十点転、誰やねんおっさん!
「バグさん?」
「そうだって! 君、いい子だね」
『ヤンちゃんに触るなー!』って、言いたいねんけどな。言いたいねんけどな。ヤンちゃんがちょっと尊敬とか憧れとかそういう視線をおっさんに向けてるからやめとくわ。ヤンちゃんは泣かせたらあかん女第一威やから、うちん中で。
「……え、誰?」
……あ、コトネは知らんのな。えーっと……
「写真家さん。ほら、アパートにさ、何や美形の兄妹住んではる家あるやん。その人らの知り合いやって」
「へえ……。顔、広いね」
「ほんまそれな。もっとお前ら人見知りせぇってなるよな!」
「それはならないかな」
…………………なんか、こう、グサッと来たわ。
うん、まぁ、これは無いかなとは思てたって。思てたんよ。
「コトネは狭く深く派か」
「でも、二人の邪魔しちゃってたからなぁ……」
「え、どういうこと?」
「レイちゃんが、ドイツって呼んでる二人の外国人。なんだか、あたし足手まといみたいだったから付きまとうの辞めたんだ」
……え、足手まといって何。なんか足手まといができるような行動って、幽霊せぇへんくない?
「この間さ、兄様と姉様と一緒に居る時、突然襲われたんだけど」
「……ああ、はいはい」
かすかに覚えてるで。確かあの、青りんごみたいな色の服着てた子、ギルが襲ってきてたやんね。
「あたし、最初全然体動かなくて。ヤン姉に引っ張られてやっと逃げれたんだ。……だから」
「……幽霊なってまで何悩んでんねん。そんなん『らっきー』くらいに思うとけよ」
「やだよ! なんか……よく、わかんないけど」
……うーん、なんか、なぁ……どっちの方が幽霊歴長いんかしらんけど、ちょっと、うちコトネに比べて人間から離れてへん? とか思っちゃったわ。
え、でも『らっきー』くらいでえぇやん、な……?




