23日 影内にて
「きゃぁっ!」
叫び方も可愛いな自分。前まで歩けへんかった子、ヤンちゃんて言うんやって。何処かもう忘れてもたけど、アジアのどっかの国の子。日本育ちらしいけどな。生まれた国まで飛行機でどれくらいかの時間かかるかも教えてもろたけど、数字は忘れた。
「どしたん?」
「うっ、ううん! あ、ごご、ごめんなさい」
え? 何? うち何か謝られることした? ……違うな。ペコペコしてる相手がうちじゃない方向やったもんな。
「どしたんさ」
「あっ、あはは……。ちょっと、びっくりしただけよ」
「何に?」
えー、ヤンちゃんの視線から見て、あっちか? あっちは確か公園のハズやけど……。
あ。
うん。何か、わかるで。悲鳴あげちゃうの。
あの公園、遊具も何もない、ただのグラウンドやねんけどな。いや、今もパッと見そう見えるんやけどな。その隅っこの隅っこに、死体がゴロゴロ転がってるように見えるねんか。……いや、どっちかって言うと、固まってる。木の陰の中に詰まってる感じ。
あ、ホンマは違うで? ホンマは生きてるで? ちゃんと動いてるもん。『ごめんなさい』したら、『気にするなー』的な感じで手ぇ降ってくれたし。
「……あれ?」
あれ、シル? とぉ、鬼さん? と、後の赤いのと黄色、いや、黄緑? の、とは……キーヴァとギアやっけギルやっけ。ごめん、黄緑の方全然何も確定してへんな。まあ、遠いから、しゃあないってことで。
「どうしたの?」
「よしゃ、行ってみよ」
「え、えぇ⁉」
倉庫っぽい建物の上から、ぴょーん。飛んで来てみたらやっぱその人らやった。……え、ちょ、何、皆さんコレは雑魚寝ですかそれとも死体ごっこですかそれとも……えー、それとも……いや、倒れてるってのは無いか。うん、無いな。鬼やもんな。さすがにな。桃太郎に会うたわけじゃあるまいし。
「レイちゃん……早いよ……」
「んぉ? ああ、ごめん、来ぉへんのや思ててん」
ヤンちゃんも来た。よしよし。幽霊でも息は切れるんよねー。どういうことなの。
「シル、どしたん? これ」
「…………すー」
寝とる。
妖怪やから寝ても消えへんのやな……。とりあ寝顔だけ拝んどこか。可愛いし。なむなむ。……何か違うな。いや、いろいろ違うな。
「なぁ、キーヴァよ」
返事がない。ただのしかば……いやいや。お前チーニルと仲良かったよな、あの子どしたん。うち、あの子の肉球もみもみしたいねんけど。ちなみに寝顔は見えへんかった。
「んー……鬼さんには声かけんの怖いしな……」
「…………すー」
寝息も寝顔も地味に可愛いなオイ。まあシルの方が可愛ぇけど。
「なー……起きてへんのー?」
黄緑の子ゆすってみた。名前分からへんかったし。そういやこの子だけパーカーちゃうんやな。上着には袖の無いダウンジャケット着てる。何か異色やわ。
「すー」
あ、でも寝てるんやな。
「……う、りゃぁっ‼」
え。あれ、何か腕掴まれた足浮いた視界逆立ちした背中痛ッたぁああ⁉
「れ、レイちゃん⁉」
「あー、ヤンちゃん、なんかヤンちゃんが天使に見えるわぁ」
「え」
あ、元からやった。
『ぶはっ、ばっかだー、俺でも騙せるとか、ばっかだわー』
やった事言うてることの割にテンション低い‼ せめて盛大に笑え! そしたら怒ったるから!
『…………あれ、数、少ねぇなぁ。ジーンとか……ヒアちゃんとか……タラッドとか……は? 別んとこかな……』
「何やねん自分。人のこと投げといて無視か」
『あー、わりわり、今ちょっとそういう気分じゃねーんだわ』
どういう気分やねん! 人の事投げた時点でお前おかしいやん!
「だ、大丈夫……?」
……ヤンちゃん、うちには『大丈夫?』って言ってくれへんかったやん。なんやねん、ギルだかギアだか知らんけどさー。拗ねるぞ。
『さー。……ジャイズーン、シヴィール、キヴー、そら寝だろ?』
……オイ。今ぴくっと動いたん見えたぞ鬼さん。シルさん今ちょっと目ぇ会わへんかった? キヴ、寝返り撃つとか大胆か。
「皆、顔青いよ?」
日陰やからちゃう。……あ、その『皆』からうちは除かれてる感じ?




