21日 穴と色と
「ふぃーっ、やれやれ、やっと休める……」
「おつー」
「おーう。って誰だ⁉」
「うぉ聞こえてたん⁉」
嘘やん! やば恥っず、どーせ聞こえへんやろ思って適当に返しただけやのに! ごめんおいちゃん。疲れてるところ無駄に叫ばせたな。
「……あー……おめ、アイツか。よくシルさんと話してる?」
「へ? あ、ああ、まあ、たまにやけど」
「あっ、その変わった喋り方! と、その軍服! やっぱあの幽霊だな!」
自分のほうがよっぽど変わった喋り方しとるわ。イントネーション不思議すぎるぞ。あと軍服ちゃうし。制服やし。学ランやし。あの幽霊ってどの幽霊やねん。あと、突っ込みどころ多すぎな。
「えーっと、どちらさん?」
「…………シルさんの同僚っちゅぅか、たまたま同じグループっちゅうか、えー、あー、協力? いや、違ぇなぁ……」
「要するに知り合いっすか」
「あー……もうちょっと近くに寄りてぇけど、まぁ、今はそれでいいや」
何やのん。ハッキリせんなぁ。
「まーえぇが。オイラァ、寝る」
「え? 何処で? ですか?」
アカン、最近敬語使ってなさすぎてちゃんと使えへん。最近年上にもみーんなタメ語で喋ってたしな。アカンアカン。
「穴ん中」
「へ」
「ここ、ここ」
「どこ」
「この穴……って」
どの穴? ってか、穴ん中で寝んの自分。野生か。
あ、この穴ってひょっとしてこれか。真っ黒の生き物がずっぽりハマッとるこの穴か。神社の裏の崖からちょっと進んだ所にちょっと開けたスペースがあって、そこの地面が一部真黒くなってる。
『リボルさぁーん? すいやせん、そこオイラの寝床ー‼』
え、獣にさん付け? 獣に敬語? そしてうち意味分かっちゃってるけどそれ何語?
『んぐぁあ? るっせぇなぁガキが……。寝るところなんざどこでも一緒だろうが……』
獣喋ったぁあああああ‼ えっ、ちょ、何事ッ⁉ うちも喋りたい! 大型動物と喋りたい! ……これ、何やろう。でっかい犬? みたいな形しとる。
ってか、そういやぁまだ昼やで。皆夜行性なんか?
『オイラの掘った穴は寝心地が違うんです!』
『つぅかよぉ、テメェ寝る必要別に無いだろう?』
『それ行ったらおめもでさぁ‼』
おいちゃん、言葉乱れてんで。ほんで、もしかしなくても自分日本人ちゃうやろ。結構東洋人ぽい顔やけど。
『生きてた頃の感覚がまだ残っててだなぁ』
『何十年前の話ですか‼ オイラの方がよっぽど残ってまさぁな!』
『中々最近の話だぞ。十五年程前だったか……」
なんっも最近違うから。うちが生きてる時間より長いから、十五年て。
『オイラは八年でさぁ! ほら! 倍くらいの差が……』
『ぎゃぁぎゃぁうるせぇ。年上に譲れ。公共のモンだろうが』
『作ったのオイラ‼』
いや、まあ、確かに地面は公共……てか、町のモン? やけども。おいちゃんも勝手に掘るなって言われそうやな。
『何だリボー、騒がしいな』
まだ居たぁあああ‼ 獣の足の間から人起き上がってきたぁあああ‼
『起きたか。この若造が、この穴は自分の物だと言って聞かなくてな』
『いや事実です! 作ったのオイラ! この半年、使ってたのもオイラ!』
おいちゃん、半年間ずっとこんな所で寝てたんか? 大変やなぁ、何の仕事か知らんけど。
『おや、それは悪かった』
『退くのか?』
『横取りはよくないだろう? ほら、別を探そう。赤い坊やにまたいい場所を教えてもらおうじゃないか』
え、赤い坊やって何。何かちょっと怖いな。赤い男の子? あ、いや、赤ん坊って考えたらだいぶ可愛なるな。……いや、赤ん坊にいい場所教えてもらうってわけわからんやろ。
『キヴ坊がここを?』
『馬鹿、ありゃ青林檎だ』
『ああ、ギアくんか……』
何なんこの人等。なんで通じるの。それとも何か、第三者は名前やのぉて色で呼ぶのが普通なんか⁉




