20日 仕方ないと思うよ
「おっ、レイじゃん? どうしたお前、こんなとこで」
「暇人の相手したげててん」
「……俺は頼んでない」
「うぉもう一人居た!」
『オイ』
や、だって、アレやん。暇人の相手のためにお喋りしてたら会話終わらへんやん。……兄ちゃんが何か言う、何のこっちゃ分からん、馬鹿にされつつ解説、納得する、会話が進んでまた最初に戻る……のサイクルやったけれども。ずーっと足踏みしてたも同然やねんけど。
「ちょ、聞いてダイ爺! この兄ちゃんおかしいねん! 色んな事知ってすぎやろ! うちの知識の一万倍あるって! 絶対!」
「大げさだな」
「いや知らねぇけど⁉ 同意求められても答えらんねぇんだけど⁉」
「何でもえぇから質問してみ! 絶対答えて来よんねん‼」
「え、空は何で青」
「それはさっきうちが聞いた!」
定番やん! 聞いてへんわけ無いやろ! 光は白く見えるけどなんとかかんとか、虹がなんとかかんとかいうて解説してくれはったわ! ごめん、もう覚えてないけど。
「んだよ、あー……んーっとな」
何やねん、ネタくらい用意しとけよ。いや、無茶苦茶言うてんのは分かってるで。もうなんでもえぇから早う!
「えぇええ……あー、んじゃあ、バスケのボールって、何でできてる?」
「皮とか、ゴムだろうな」
「…………一瞬で会話終了したんだけど」
「知らんやん」
「えー、あー、じゃあここはあえて野球で聞くぞ」
うん、なんで『あえて』なんかさっぱりわからんけどな。結局スポーツから離れてへんからな。
「あのボールなんであんなに硬ぇんだ!」
ダイ爺、なんかあったん? どしたん、いきなり叫ぶからびっくりしたやん。
「ストレス等による破壊衝動を冷ますために適度な手ごたえが必要だからだ。物や人に当たることによる『やっちまった』感で一気に血の気が引くだろ。よく被害にあうのは窓ガラス」
「ふざけてるだろ‼」
「遅かったな、そのツッコミ」
「普通に真面目に聞いちまっただろうが! おいレイ、これ、知識か?」
「え、うちちょっと納得してた」
「………………お前本当に大丈夫か?」
めっちゃ真剣な顔して心配された。
「嘘やて。いや、でもよう割れるやん、窓ガラス」
ほんで雷落ちるよな。
「や、まあ、そうだけど……なぁ……」
「なんで硬いかって、中身がぎっちり詰まってるからだろ」
「え、何が入ってんの?」
「コルクかゴムの芯に、糸巻きつけたもの」
え、アレ中身糸なん? え? コルクってアレやろ、ワインとかの栓してあるやつ。アレに糸巻きつけてあの大きさにするん? ……ボール作る人、頑張るなぁ。 何か間違ってる気がせんでもないけど。あ、ひょっとしてあれか。機械がボール作るんか! ロボットが左手にコルク、右手に糸持ってくるくるくるー……あかんわ、自分でも自分アホやなって思ってもうた。
「……おーい、レーイ。おいおいおい。何かわかんねぇけど急に絶望しだしたぞコイツ。お前何吹き込んだんだ?」
「特に絶望するようなことは言ってないが」
「わかんねぇだろ。何言った?」
「マリー・アントワネットについて、空の色について、雲の形について、夕焼けと次の日の天気の関係について、朝焼けとその日の天気の関係、飛行機雲と天気、日本の宗教について、その他諸々」
「ほとんど空じゃねぇか……」
「それはそいつの趣味だな」
「意外と大人びた趣味だなオイ。……うん、意外だな、意外すぎるな」
「同感」
ちょお。全部聞こえてんねんけど。お前ら、うちのコト馬鹿にしすぎやろ‼




