19日 その扱いはきっと暇つぶしの相手
あんな、地面に足付けれへんかった子ぉ一通り案内してんけどな。何でダイ爺あんな友達多いの。もう余裕でバスケできてもーとるやん。バスケチーム作れちゃってるやん。ほんであの子も参加しとるしな。もうちょっと、こんどからダイ爺の事『たらし』て呼んだろかな。
……とか、考えながら中学校の屋上来てみたらやな。あの、足の付け方教えてくれた兄ちゃんがごろーんしてはった。あ、起きた。胡坐かいて伸びしとる。
「んー……っ、くはぁ。……ああ、昨日のお前か」
うぉっ、気付かれた。いや別に隠れてへんかったけど。
「暇だな」
うん、うち全然暇することないからな。同意求められてもな。って、え? 暇、って、え?
「えぇえええええ⁉」
「五月蠅い。そんな驚くような事か?」
「やっ、だって、暇って、怖いやん!」
「アントワネットかお前は」
「…………はい?」
アントワネット? え? 何それ、網の種類? アントワって何? とりあ、うちの名前アミではないで。
「……マリー・アントワネット」
「あっ! ……ん?」
あれ、聞いたことあるような気ぃはしたけど、やっぱ無いかも。
「フランス王妃」
「え、何て? フランスコーヒー?」
「……あー……、ベルサイユ宮殿、赤字夫人、バスティーユ牢獄、ルイ16世、プチ・トリアノン」
「えっ、ちょっ、待って、何の話⁉ コーヒー関係ある⁉」
「……コーヒー?」
「え? フランスコーヒーの話違うん?」
「もしかしなくても馬鹿か」
「酷ッ⁉」
「いや、習っていないだけか? フランス革命は」
「そっ、それは分かるし! フランスの革命やろ!」
フランスの革命やから、フランス革命やろ!
「知ってるなら、せめてルイ16世には反応しろ」
「……えーっと」
16世、って、確か、人の名前にくっ付く奴やろ。大司教とか、侯爵とか、何かそんな偉そうな人。
「フランス国王」
おぉう、偉そうやなくて、ホンマに偉かった!
「マリー・アントワネットは、その奥さん」
「ふんふん」
「……王妃、っていうのは、国王のお妃のこと」
「あぁああ‼ コーヒーや無かったんか‼」
「……ただの聞き間違いという事にしといてやる」
「ありがとぉ」
「で、その人の言葉の一つに『私は退屈が怖いのです』っていうのがある。……えらく遠回りしたな。まあ、そう言う事だ」
うん、えーっと?
「なんでその人の話になったんやった?」
「……ったく、めんどくせぇな」
めんどくせぇ言われた。ごめんやん。最近忘れっぽいねん。せっかく解説してくれたけど明日には忘れてると思う。
「お前が、暇が怖ぇって言うからだろ」
「いや、だって怖いやん」
「ふぅん?」
「暇するやろ? そしたら眠なるやなんか。寝たら死ぬやんか。怖いやん‼」
「暇から眠いに直結するのか」
「え、普通するくない?」
「俺はしない」
「マジか‼」
え、するやろ。絶対こっちの方が多数派やし!
「ほんなら何するん」
「ぼーっとする」
「眠なるやん」
「いや、眠くはならん」
「嘘やん‼」
「ここで嘘ついてどうする」
「せやな」
あ、納得してもた。
「……勝った」
「ボソッと勝ったとか言うなし」
「つっても……阿呆のガキに勝ったところで嬉しくも何ともないな」
「何やねん。うっさいわオッサン」
「まぁ、二十一だからな」
あ、フツーに若かった。うん、まあ、心ん中では兄ちゃんて呼んでるで。安心しといて。




