16日 その一人として……
「……はー」
「……おじさん、どしたん。リストラでもされたか?」
「そんなおっそろしいこと言わないでよ……違うよ」
さーせん。
コトネと一緒に散歩して、河原で一休みしよう思って来てみたら先客居った。
んとな、黒くて長い上着着てて、長い金髪を後ろでくくった……うん、おじさん。お兄さんぽいおじさん。見た目は若者頭脳はおっさん的な。……んー、それにしちゃちょっと頭脳のおっさんが軽く見た目にも表れてるような、うーん。
「……えーっと、君前にも会ったよね? レー……なんとかちゃんでしょ」
ほとんど覚えてへんやんけ。最初の一文字しか覚えてへんやんけ。
「まーうちは会うたことすら覚えてないけどな!」
「何俺が哀しくなること威張ってんの⁉」
「あ、いや、見かけたことは覚えてんで。あれやろ、よー神社の裏側にレイチェルさんとかと一緒に居る……」
「レイツェルさんね」
「え? レイチェルさん違うん?」
「ちょっと発音が違う気がしたんだけど」
「どっちゃでもえぇやん!」
あえて言うなら、言いやすいやん、レイチェルさんの方が! なんで日本語話してて外国人に発音の指摘受けんならんねん! あ、レイチェルって外国人の名前か。
「……えっと、俺は、リオン・カラスね。リオでいいよ。って、前言ったけど覚えてないかな、レーちゃん」
『レ』の後思い出すの諦めよったなコイツ。まぁ大差ないしえぇけども。
「あれ、その子は?」
「お? ああ、最近友達んなってん。なー、コト……痛ッ!」
ちょ、背骨! 背骨クリーンヒットした! 小さい割に力強いな自分! 何? その小さい拳にどんなパワー秘められてんの? ……痛たたた、しばらくシャチホコのポーズしてよ。
「だ、大丈夫? ……じゃなさそうだね。どうしたの、君。いきなりレーちゃん殴って」
ほー、何か温かいモンが殴られたあたり包んでる……? あ、何か気持ち痛いのどっか行った感じが……?
「何してるの! ダメ!」
「うぉわっ⁉」
こんどは腕引っ張られた! ちょいちょい、抜けるて。こんどは冗談やけど。腕抜けるくらいの勢いで引っ張られた。
「え、え?」
「ダメでしょ! 魔法使いに名前教えたら、何かの呪いで利用されるんだよ⁉ レイちゃん、こんなのに呪い殺されたいの?」
「いや、今自分ガッツリうちの名前言うてもうたよな」
「あ」
「まー、どっちゃにしろ一回言うたことあるみたいやし。大丈夫やろ」
「…………でも」
疑わしそやな。そのままリオの方をジト目で見上げたら、頭の後ろで尻尾がぴょんぴょん跳ねるくらい首振ってた。
「ないない。俺平和主義者。呪い殺すとかそんな物騒な。殺す理由もないのに」
「その服着て平和主義者って言われても説得力無いの」
え? 何? どの服?
「これ?」
あ、はいはい黒い上着な。長ないかそれ。元から? あ、なんやベルトの穴もあるしな。ベルトもぶっ刺さってるしな。一応。ベルトの端っこの方は折り込んだか何かしてあるみたいやけど。
「そう」
「あーっと……何があったの?」
「お父さんとお母さんが……その服の……」
「……はいはい。大体わかったよ。ごめんね。僕らはこれが仕事なんだ。ごめんね…………」
……あれ、なんのこっちゃ分かってないの、うちだけ?




