14日 案外多いっぽいです。
「……あ、さーせん」
…………なんで謝ってんねんうち。相手普通の人間やぁ言うねん。聞こえてへんねん。
んとな、ちょっとな、するっと壁すり抜けて入った所がお風呂にな、男の人浸かってはってんか。うん、濁った入浴剤使ってはったけど、な? なんか、気まずいやん。若かったし。
「あれー? 入浴剤変えた?」
「あたしが買ったやつー」
んぉ。お姉さん? 脱衣所の洗面台ん所で、ヘアバンドしたお姉さんが手ぇ洗ってはった。
「あら、いつの間に~?」
そこ台所か? やらかい女の人の声した。お母さんかいな。なんか、声が母さんっぽい。
「えへへ、寒くなってきたからねー。温まるのにした」
「ミツバはほんと、よく気が利くわね」
「いーい湯っだっなっ。みつ姉さんありがとね!」
……でかかった割に意外と可愛いな弟。ほんでお姉さんの名前、ミツバ? 可愛らしなぁ。なんか野菜にあったよな、こんな奴。あれ、野菜やったっけ?
「ぎゃぁあああああ‼」
うぉおっ⁉ どした、弟⁉
「どうしたの⁉」
「どしたの?」
「シャンプーが目に入った」
派手な叫びの割に地っ味ッ‼ そんで、声もめっちゃ冷静やったしな。何やねん。
「驚かせないでよぉ……大丈夫?」
うぉわっ、お母さん駆けつけて来てた! どんだけ慌てててん。息上がってるやん。
「うん、だいじょーぶ」
「良かったわぁ……」
そらな。たかがシャンプーやしな。
「帰ったぞー」
ん?
「お父さん、お帰りー」
「あら、おかえりなさーい」
「はい、ただいま。お土産帰ってきた、んや、買ってきたぞー」
へーっ、お土産買ってきてくれはるんやー……って、何て? 今最初なんか違うこと言わへんかった?
「何買って来たの?」
「わぁあい! おかえりー‼」
うぉまだ居た‼ みつ姉さんにひっついて台所兼食卓来たら、小学生も飛び込んで来た! でも絶対コレあれやんね。お父さんが帰ってきての『わーい』やのうて、お土産あるぞー聞いての『わぁあい!』やんね。
「父さん? お土産何ー?」
弟……お前なんで風呂から会話参加しとんねん。声でかいな加えて耳もえぇな自分。洗面脱衣所と台所直結してるからか?
「なにー?」
「たこ焼き」
『わーい!』
……体のサイズ偉い違うのに反応同じか! みつ姉さん苦笑しとるやん! あ、や、呆れ顔か。
「一人一パックずつあるから喧嘩するなよー」
おー、一人一パックか!
……え、一パック?
…………え、一人八個ちゃうそれ。
「すごい! おとーさん太っ腹!」
「誰がお腹ぽにょだ」
言うてへん言うてへん。
「どんだけ買ったの」
「たくさんあるわねぇ……」
みつ姉さんガチの苦笑。お母さんそのめっちゃにこにこの笑顔怖いて。やめてって。
「というわけで、母さん。……小遣いがなくなった」
爆弾投下! 絶対アホやろこのオトン‼
「あらあら、お父さんったら」
怖い怖い怖い怖い! お母さん怖いてその笑顔! 黒いて!
「か、母さん、それじゃ!」
「ちょっとお待ちなさい?」
「あ、お母さん。今月分のバイト代多目に入ったから入れとくねー。あたしは無駄遣いしないから」
みつ姉さんかっけぇ。みつ姐さんやん。……何か違うか。
「ミツバ…………」
おお、ほろりと来てるやん。お母さん嬉しそう。よかったな、お父さん。これでお父さん無事かもしれへんで。良かったな。
「小遣いUPの方……うわぁ母さんやめていやぁああああ‼」
「あ、先に食うなよ、リン」
もぐもぐもぐもぐ。リンちゃんそれ美味そうやなー。
「大丈夫大丈夫お父さん、死にはしないわ」
……あかんわ。ちょっと背後の光景が、ちょっと……えぐいわ。
「リン、見ちゃダメ」
「なんでー? おかーさんとおとーさん、たこ焼きいらないのー?」
「あら、覚める前に頂きましょうか」
「……わしのは、皆で分けて食べなさい」
『わーい!』
お父さんゾンビ化しとる。
……何やろな。また変な家開拓してもた気ぃするわ。




