13日 涙の少女
小学校の屋上からな、町をぐっと見渡してみたんよ。
えらい、幽霊多なったなぁ思て。
最近普通に道歩くことも多かったんやけど、高いところから町全体見たらやっぱ違うわ。浮いてたり屋根上ったりする人めっちゃいる。……でも、結構お爺ちゃんお婆ちゃんって感じの人は少ないねんな。おっさんは居るんやけど。他にももっと若い人とか。なんでやろ。
「ねえねえ……レイちゃん? レイ、ちゃん、でしょう? 女の子でしょう?」
「……おん。レイちゃんやで。えー、誰や」
「コトネ」
「コトネちゃん?」
「そう、コトネ。はじめまして」
「お、おぉ。初めまして」
何この子。めっちゃ暗い目、や、怯えた目? してるんやけど。屋上の出入り口の上に座ってたうちの事を見上げてくる。……その服、さぶない? 真っ白い、ノースリーブのワンピース。夏の服やん。でも可愛いなぁそれ。控えめに波打ってるスカートがえぇわ。めっちゃ夏っぽいわ。見てて寒い。あ、や、皮肉のつもりは無かってんで?
……どうしよ。この子、『初めまして』言うてから全然返事返って来んのやけど。
「レイちゃん」
「はい」
あ、敬語なってもた。だってなんかこの子怖いねんもん。何この、怖い先輩に今から怒られますよ的雰囲気。長いな。略して怖い的雰囲気。怖い雰囲気でえぇやん。
「レイちゃんは…………」
はい、うちは?
「アイツ等の、仲間、なの?」
…………………………うん?
「ドイツ等?」
「アイツ等よ! あのッ……あたしたち、殺しに来る、奴……ッ!」
「うーん?」
え、何それ、そんな物騒な人ん仲間になったっけうち? 『あたしたち』、『あたしたち』って、幽霊の事で合うてる? 違ったらその時点でもう分からへんねんけど。え、知り合いにヤクザだの金貸しだの黒服の集団だの居ったっけ? え?
「ごめん、どんな奴?」
「アンタよく喋ってるじゃない! あのっ、変な言葉喋る男の子とかっ! 金棒持った黒服とかっ! 話が長い女とかっ!」
…………ああ‼
「あのっ、あれやろ? えーっと、鬼さん一家?」
「鬼さん……?」
「あー、ごめん。ほら、金棒持ってはる人って、あの人やろ? 目ぇ緑っぽい、茶髪の、黒いパーカーの、金棒の」
あ、金棒二回言うた。
「あん人な、角もあんねんで」
「知ってる」
……なら『鬼さん』でわかれや。うちめっちゃ恥ずい奴やん。めっちゃドヤ顔してもうたやん。やらかした奴やん。
「その人の子供が、あたしのお父さんとお母さん殺したの。その人、笑って見てた」
「え」
……………………え?
「あん人がこの町守ってるんと違うの?」
「え? 何の事?」
え。
え、ちょ、待って。
「ごめん、鬼さんの子供って誰やったっけ」
「変な言葉の、細い角のある」
「あーはいはい。名前何やったかな」
ギル? ギア? 歯車? っていうか、あの子にも角あったっけ? でもあの子やろ? 翻訳機耳に付けてる。
「そいつが……っ」
「あ、ああああちょっ! ちょっ、え? 泣かんといて! もう何も言わんでえぇから、ほれ、お兄ちゃんが――」
だっこしたろー言おう思うたんやけど。あ、ちょっと無理? ぎゅーするだけでえぇか。よしよしよしよし。落ち着け。
……えーと? 鬼さんの? 子どもの? キーヴァや無い方が? コト……何ちゃんやったっけ? えー、この子の? お父さんお母さんを? 殺して? 鬼さんが? 笑って? 見てた? ……笑って?
「お、兄、ちゃん……は、仲間じゃ、無い?」
「違う。絶対、ちゃう!」
あ。ついさっき『お兄ちゃんが――』って自分のコト呼んだせいで変なあだ名が。ちゃうで、お姉ちゃんやで。
「よう、仲間かもしれん思いながらうちん所来れたな」
「…………ひくっ」
「ああ、よしよし。えぇで、泣いとき」
学ランびしょびしょ。ごめんなヤマモト。ああ、もう返せへんのか。ならえぇわ。
からんと落ちた果物ナイフ見て、ちょっと虚しい気分なった。




